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ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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壬生川 力斗
e0017345_0223356.jpg◆伽子と八坂牛頭丸の息子・力斗(リキト

 身長160cm 体重64kg 剣士
 
 好きな食べ物 肉
 
 好きな言葉「男気」
 
 好きな口癖「――だぜ!」

↑英「できた、ボク流サラリーマンみたいな髪型アレンジ」力「何じゃこりゃーーーー!w」

・好きな家族 実直な弟・道明

・好きなタイプ 英「力斗くんはホモだから、そういう人居ないよn「ちげえええええ!」

・特技 鍛錬に次ぐ鍛錬

以下ネタバレ
by RuLushi | 2005-10-31 00:39 | 壬生川家・登場人物
1023年 6月後編

<狐美姫の間>
 
 提灯に照らされた広間、一匹の女……いや、鬼がいた
 半人半狐の女はこちらに背を向けたまま、長い九本の尻尾をゆったりと動かして、すすり泣きを続ける
女狐「……どうして、あたしの人生っていつもこうなんだろ?
 道明が追いついたそこには、大筒を構えた翠が鋭い目をして立っていた
翠「……流星参号が、全て弾き返されました」
伽「見てた見てた、凄いねあの尻尾、あたしも欲しい!」
道「一体何が……?」
 先頭に立って刀を正眼に持つ力斗にも、女狐の発する殺意が霧のようにまとわりつく
力「バケモンか、このアマ……」
 汗が滲み、滑り落ちそうになる刀を、両手ですがりつくように掴む
女狐「目立たぬように、恨まれぬように、あたしなりに一生懸命やってきたよ、なのに……やんなっちゃうよ!
 この世の全てを憎んだような目つきが、四人を縛った
女狐「亭主が嫌いだ! あの女が嫌いだ! 世ン中が嫌いだ! 人間が嫌いだ!
 九尾の狐が絶叫するたびに、部屋の提灯が爆発するように割れる
 熱を伴なった風が吹きすさび、出撃隊は吸い込まないように口を押さえた
 女狐の目が真っ赤に燃え上がり、九本の尻尾が大蛇のように膨れ上がる

九尾吊りお紺「コーン! コーーン! 弱虫のあたしがイッチ番嫌いだあああああ!
 
 お紺が発した火炎全体攻撃の最強術<赤地獄>が、壬生川一族を焼き尽くす!
 みぞれのように降り注ぐ火炎球を振り払いながら、力斗が駆けた
力「あっちいいいい、このアマァァァァ!」
 刀を抜いて立ち向かう力斗の身体が、あっという間に巨大な尻尾に叩き潰される
道「力斗お前、頼むからもうちっと落ち着けよ……」
 断続的に四方八方から襲い掛かる尾を、薙刀で舞うように弾きながら、道明は器用に<春菜>の印を唱える
翠「あー面倒臭いですわね!」
 手足のように自由自在に降ってくる尻尾を、一本一本国友銃で撃ち落としているが、とても間に合うものではなく、少しずつ身体に傷が増えてゆく
伽「ヤバイ……ヤバイよ! あたし絶好調!」
 それまで、珍しく後方で<春菜>を唱えていた伽子が槍を振り回しながら、前に躍り出た
伽「正義の狭門陣、いっくよー!」
 いちにっさんしっごー!と槍を大回転させ、迫り来る尾をまとめて薙ぎ払う
 翠は目を見張る、今の伽子の動きが見えなかったのだ
お紺「コーーーン!
 一瞬にして九本の尾を切り裂いた伽子が、お紺に突撃した
 伽子の槍をお紺は扇で受け止め、ふたりの力が激突し、周囲に稲妻が走る
伽「正義は勝つぅぅぅ!」
お紺「お前みたいな強い人間は嫌いだあああ!
 力負けしたお紺を、伽子が切り裂く
伽「こんなとこで泣いてないで、あの世にお帰り!」
お紺「いやだああああああ!
伽「人を羨むのはもうおしまい、あなたの居場所はもうこの世にはないのよ!」
 泣き叫び暴れるお紺を、伽子の槍が追い詰める!
翠「まったく、ひとりで戦っている気なのかしら……!」
 翠の唱える<お甲>(防人の上位術)が、伽子を守り、舞う扇の一撃も彼女を傷つけられなくなる
 今、三人を守りながら戦う伽子の背中が、翠にとってこれほど頼もしく見えたことはなかった
お紺「コーン、コーン、コーーーン!
 ノドが裂けるような絶叫と共に、お紺は<赤地獄>を吐き出す
 火山弾のように降り注ぐ火炎を前に、道明の術が完成した
道「……<七・天・爆>!
 壬生川家でいまだ誰ひとりとして扱うことが出来なかった火炎系最上級術が、赤地獄の雨をも押し返す!
 光が瞬いた
お紺「いやああああああああああああああああああああ!
 九尾吊りお紺の四肢が火の粉となり、霧散してゆく
伽「ゆっくりと……おやすみなさいね」
 切なげに顔を歪める伽子の前、お紺の悲鳴が部屋に響いた

九尾吊りお紺「誰かあたしを成仏させとくれよォォォォォォ!」

 壬生川家は4015の戦勝点を得て、見事、鳥居千万宮の主を下したのであった
 
 

 疲労困憊の体だった道明が、その先に続く鳥居を発見した
道「これは……?」
伽「あれ、まだ奥があるのかな」
 そう言って、伽子はさっさと鳥居をくぐって先に向かってしまう
翠「何か嫌な予感が致しますが……って、聞いてませんわね、伽子さん」
 しぶしぶと言った様子で、翠もその後を続く
力「ふん、たいしたことない狐だったよな!」
道「いや力斗、ずっと気絶してたから
 最後に男子ふたりが追いかける
 
 そこはとても鳥居の中とは思えないほど、広々とした空間が広がっていた
 京の町の最も大きな屋敷の庭よりも大きいと思われるドーム状の広間に、巨大な魔方陣が敷かれていた
 
○「前から聞きたかったんだけど……
道「お前は……」
伽「あんたはッ!」
 道明の声を遮って、伽子が叫んだ
 間違いない、やつは父をたぶらかし、白骨城に呼び寄せた鬼たちの頭領だ
伽「朱点童子!」
道「な……!?」
 名を呼ばれた朱点童子・黄川人は口の端を釣り上げて笑うと、構わずに続けた
朱点「神々はどんな理由を付けて、キミたちに力を貸すと言ったのかな?
 翠の放った国友銃を一瞥だけで受け止め、朱点童子は語る
朱点「あいつらのことだ、その類い稀なる血を絶やすのが惜しいとでも、恩着せがましくやったのかい?
 きょとんとする伽子を押しのけて、翠が前に出る
翠「そんなの、わたくしたちが選ばれし一族だからに、決まっているじゃありませんか」
朱点「ふぅん……そのおかげでどーだ!?
 高らかに笑う朱点童子
朱点「君たち一族は安らかに眠ることもかなわず、無限に続く悪夢の中を延々とさまよい続けている
翠「……人を、まるで鬼のように」
朱点「鬼、ふふ、それどころか、まるで神々がお作り下さった人間の歴史……あるいはご本人たちの歴史、そのままにね
 朱点童子がふっと宙に浮かび上がる
伽「逃がさないよ! ここで倒してゲーム終了!」
 槍を構えて飛び上がる伽子に、朱点童子が指を鳴らす
 その瞬間、魔方陣から赤い光と共に巨大な大蛇が高波のように出現し、伽子の小さな身体に喰らいつく!
伽「ええええ!」
翠「な……!」
 小さな神社なら丸ごと呑み込んでしまいそうな蛇の化け物は、伽子の身体を弾き飛ばし、その後に緑眼で壬生川一族をねめつけた
朱点「そうそう、ボクの作った庭に入るカギは、この髪の毛! ちゃーんっと7本集めないと、ボクとは戦えないからネ! じゃッ、後はよろしく、三ツ髪
 朱点童子は凄惨な笑みを浮かべ、指を鳴らし、その姿が陽炎のように薄れてゆく
道「黄川人……お前は……」
 道明がその残光を見つめているのも束の間、三ツ髪という忌み名のオロチが壬生川一族に牙を剥いた
 力斗の<お雫>により、少しばかり体力を回復させた伽子が、豪槍構えて塔のような大きさの大蛇に挑みかかる
伽「デカけりゃ良いってモンじゃないんだからねこのバカー!」
 決して怯まない伽子の槍が巨大な鱗を引き裂き、青い血を撒き散らす
道「僕もご助力します……双・光・蘭・斬!」
 道明が大蛇に十字の傷跡を刻み込む
 皆にありったけの力士水を振りまき、援護する力斗の横で、翠が裂帛の国友銃を乱射し、全員が全員、満身の力を込めて三ツ髪に立ち向かってゆく
 
 しかし大蛇はそれでもびくともせず、その圧倒的な巨体で、一同を押し潰す

 一撃で体力の八割を奪われ、再び伽子が膝をつく
伽「そんな……この……正義は必ず、勝つのに!」
 気力で槍を構えるが、足元がふらつき、視界が霞む
 狐次郎、お紺に続く三連戦により、もう翠や力斗の技力は尽き始めている
道「……当主さまを、援護しないと……!」
 そうつぶやいて<春菜>を唱えようとする道明の動きが止まった、神気が手のひらに集まらず、霧散してしまう
 ついに術力が尽きたのだ
伽「……ハァ、ハァ……あたし、あたし、負けたくない!」
 一族の運命は、伽子に託された
 
伽「七本の髪を集めれば、朱点童子と戦えるなら、集めてやる! これがその一本目よ!」
 大蛇の腹に槍を深く突き刺し、伽子は吼える
伽「壬生川一族は、絶対、鬼なんかには負けないよ! 諦めたりしない!」
 巨大な身体を震わせて、伽子を槍ごと振り落とし、三ツ髪はそのまま伽子に頭部を叩きつけた
伽「がっ……ま、円子……!」
 他の三人が伽子を庇おうと前に立ちふさがるが、それも大蛇の尾の一薙ぎによって砂岩のごとく吹き飛ばされる
 三ツ髪は緑色に光る眼を細めて、壁を背に槍を構える伽子の前に這い寄った
伽「……あたしが死んでも……いつか、お前は、あたしたちの子らが討つ! 必ず討つんだからね!」
 毅然と叫ぶ伽子の右半身に、大蛇が貪りついた





 当主を失い、哀れ壬生川一族は京に敗走する
 
 鳥居千万宮での死闘から翌日、
 壬生川の屋敷は日ごろの騒ぎがウソのように、静まり返っていた
 

 
<壬生川家>
 
 翠は半ば放心状態で、伽子の部屋に座っていた
 目の前には、伽子が穏やかな顔で目を閉じて、布団に寝そべっていた
翠「……」
 耳を澄ませても、寝息は聞こえてこない、呼吸回数が極端に少ないのだ
 大蛇の口から吐き出されて、地面に酷く叩きつけられた時から、伽子の意識不明の重傷は続いていた
 伽子の意識はもう戻らないかもしれない、とイツ花が言っていた
翠「勝ち逃げですわよ……伽子さん……」
 結局、翠は一度も伽子を越える事はできなかった、膝の上で固めた拳が震える
英「ただいま」
 京の都から戻ってきたばかりの英雄が、翠の横に腰掛ける
 力斗と道明は、術力の使いすぎによる疲労で、泥のように眠っていた
 太陽の消えた壬生川家は、まるで月明かりが届かない森のように、静かだった
翠「ひとつだけ伽子さんに、謝らなきゃいけないことがあるのよ」
英「……ん」
翠「わたくし、一度……他の家の誰かが、養子にしてくださらないかしら、と言ったことがあるの、伽子さんの目の前で」
 そういえばそんなこともあったかな、と英雄は思い出す
翠「……冗談でも、言うべきではなかったわよね、そんなことは……わたくしも、バカだったのよ、結局……何でこんなときに、思い出すのかしら……こんなこと」
 翠が仏に罪を告白するように、つぶやいた
 英雄が穏やかに翠の頭を撫でる
英「……笑って許してくれるよ、きっと、伽ちゃんなら」
翠「わたくし、きっと嫌われていましたわ……でも、ずっと、そんなの気にしてないはずだったのに……わたくし……」
 伽子は目を覚まさない
 自責の念に満ちた翠の声を聞いて、英雄はそっとつぶやいた
英「去年の七月から、伽ちゃんが毎月欠かさずに、遺書を書いていたことは、知っていたかい」
翠「……今、初めて、聞きましたわ」
英「だよね、先月も真名姫討伐の際に、書いてない、って言い張ってたし……ま、これが今月の、鳥居千万宮に出陣する前に書かれたものさ」
 英雄は懐から一通の手紙を出すと、翠に手渡した
 戸惑いながら翠は受け取る
英「まったく……毎月毎月ボクに預けてくるんだもの、こっちは良い迷惑だったよw」
翠「読んでも……よろしいの?」
英「キミ宛てでもあるからね」
 英雄に促されて、翠はゆっくりと遺書を開く
 そこには、意外に達筆な字で、伽子の想いが綴られていた
 



『 遺書 1023年 6月版

 この手紙をみんなが読む頃には、あたしはもう生きてないでしょう
 ……毎月同じ始まり方だと、やっぱりワンパターンかな、まぁ良いやw
 
 今日はご飯が美味しかったです、おなかいっぱいで今すごく幸せです
 最近暑くなってきて、稽古のあとの水浴びが気持ち良いよね、生まれ変わるみたい!

 こんなにもあたしは壬生川家で生きています、あ、いや、生きていました!
 だからこの手紙を読んでいる頃、あたしがいなくても、
 いや、たぶん泣いたりしないだろうけれど……でも悲しまないでください
 あたしは、精一杯、最期まで後悔のないように、過ごしてしましたから……きっと!


 ひーくんへ
 いつも傍にいてくれてありがとう、次は屋敷のみんなをよろしくね!
 あんまり女の子女の子言わないよーにね、バカみたいだから!
 あと、あたしの下着が一枚なくなったの、ホントーにひーくんじゃなかったのぉ?


 ミドりんへ
 一緒になって遊んでくれてありがとう、天才さん!
 その頭の良さで、これからも屋敷のみんなを助けてあげてください
 そうそう、実は一度で良いから大筒撃ってみたかったですw
 

 リキへ
 元気に育ってくれてありがとう、早く母ちゃん抜かすくらい強くなってね!
 でもミドりんとか、これから生まれる女の子を、イジメちゃダメだからねー
 ケンカもほどほどに、ちゃーんと寿命を全うしてね、お願いよ


 その他の人へ
 えーっと色々ありがとう、ゴメン手抜きw
 だーってそろそろ出陣の時間なんだもーん!
 
 
 とにかく、
 あたしは毎日、いつ死んでも良いくらい楽しかったです
 ホントにみんな、こんなバカ当主に着いてきてくれて、心から、ありがとうございました!


 だから大丈夫! 化けて出たり しやしないってば……たぶんね!



                            壬生川伽子 享年1才6ヶ月でした!


 

 翠は手紙を閉じ、俯いた
翠「最期まで、バカなお人……」
 そう一言、つぶやく
 英雄がその時々しゃくり上がる肩を抱くと、翠は嗚咽を漏らすように言う
翠「……大筒が撃ちたかったなら……そう、言えばよろしかったのに……ほ、本当に、バカ、よ……」
 かすれ声を上げながら涙をこぼす翠の肩を、英雄は優しく抱き続けた






 伽子が目を覚ます事は、なかった
















 葬式が終わって、英雄は京の町にも遊びに行かず、無口な日々を過ごしていた
 そんな折、英雄が伽子の部屋の後片付けをしていると、偶然に発見した
英「……おや?」
 以蔵の遺影の裏に貼り付けてあった
英「何だろう……手紙、伽ちゃんの……?」
 そこには、次期当主に関する遺言が記されていた


『次期当主に関して 1023年 5月版
 
 うふふ、みんながあたしを忘れたくても忘れないように、
 ひとつおーっきなイタズラをしておきます、七代目当主は……

 サイコロを振って、1が出たらひーくん、2が出たらミドりん、
 3が出たらリキで、4が出たらドーメイくん、5が出たら貞光ちゃんで、よろしく!
 
 ああ、6が出たらやり直し、あるいはあたしが化けて出ちゃうかもよぉ? あっはっはー』



 その手紙を読んで、
 英雄は額に手を当てて、思わず笑みを漏らした
英「やられたよ……伽ちゃん、さすがだよ、キミは……w」
 おかしくっておかしくって、英雄は口元を押さえて笑い出す
 次期当主をサイコロで決める子なんて、もう二度と現れるはずがない
英「忘れたくても、確かに忘れられないよ……くっくっく、もうダメ、面白いな……あはは!w」
 
 壬生川家には、突き抜けたような明るい笑い声が、久方ぶりに響く
 太陽は、夏の到来を知らせるように、さんさんと輝いていた
by RuLushi | 2005-10-29 07:57
 1022年 9月からの武録

 大人はいないし、誰がこの家を守る!? こうなったらあたしがやるしか!
 テーマはコメディ、新当主・伽子の活躍が読めるのはルル師のRPプレイ日記だけ!
 
1022年
 9月 交神の儀・伽子×八坂牛頭丸                     =一家を見守る=

 10月 出陣・紅蓮の祠(伽子・英雄・翠)                   =一家を見守る=
 
 11月 出陣・鳥居千万宮(伽子・英雄・翠) 初見・力斗→剣士    =前編= =後編=

 12月 元服→英雄 交神の儀・英雄×木曽ノ春菜 訓練・伽子→力斗=一家を見守る=

1023年
 1月 出陣・相翼院(伽子・英雄・翠・力斗)                  =一家を見守る=

 2月 出陣・親王鎮魂墓(伽子・英雄・翠・力斗) 初見・道明→薙刀士=前編= =後編=

 3月 元服→翠 交神の儀・翠×火車丸 訓練・英雄→道明       =一家を見守る=

 4月 出陣・紅蓮の祠(伽子・英雄・翠・力斗)                =一家を見守る=

 5月 出陣・忘我流水道(伽子・英雄・翠・道明)
     初見・貞光→大筒士 訓練・力斗→貞光             =前編= =後編=

 6月 出陣・鳥居千万宮(伽子・翠・力斗・道明) 訓練・英雄→貞光 討死・伽子
                                   =前編= =中編= =後編=
by RuLushi | 2005-10-29 04:38
1023年 6月中編

<出陣> 
 
英「それじゃーみんな、いってらっしゃーい」
 ニッコリと手を振る英雄に、翠が突っ込む
翠「また懲りもせず京の都の復興、ですか」
英「ボクがいないと寂しいだろうけど、ゴメンね翠ちゃん」
 さりげなく、英雄が翠の肩に手を回す
 翠は英雄の手を叩いて、懐から台帳を取り出し、すらすらと読み出した
翠「投資の内訳、ですが、まず商業部門の5万3400両」
英「各地から良い職人を引き抜き、あちこちから資材を調達して、街道を整備し、流通ルートも確保、それに良い道具も揃えなきゃいけないし、今ボク、13の大工衆と契約しているんだよね」
 伽子が力斗の袖を引っ張る
伽「(何言っているか分かる?
力「(俺が分かるわけねぇw
 脳が筋肉で出来ていそうな親子が、ぼそぼそと囁きあう
 台帳を英雄に突き返して、翠が腰に手を当てる
翠「ちなみにこの、交際費800両って何かしら」
英「いやー最近ボクも世渡りというのを覚えてさ、良いお酒、良い女性がいると、職人さんも良いお仕事してくれるんだよねー、摩訶不思議ってやつ?」
 爽やかに笑う英雄が、翠の頭を撫でる
英「でも翠ちゃんも、最近屋敷のことに熱心で、ボクは嬉しいなーw」
翠「……我が家でマトモな頭脳を持っているのが、わたくしとまだ幼い道明さんだけですから、仕方が無いというものですわ」
道「(何で僕」
 買いかぶられていると思う
 ため息をついて、英雄の腕を捻りながら翠が告げる
翠「それはともかく、貞光のことお願いしますわよ」
英「痛い痛いw……もう、じゃあ一緒に京に連れていっちゃおうかなー」
 へらへらと笑うダメ人間に、翠がグッと握り拳を固める
翠「……この人は、昔はこんな風じゃなかったのに!」
道「……いや先生、僕はこんな父上しか見たことないんですけど」
 翠のため息が道明にも伝染してしまう
 それはそうと、伽子が先頭に立って、槍を高く掲げる
伽「さ、正義の壬生川一族、今月も張り切って突撃ー!」
力「おー!」
翠「はぁ」
道「……行きますか」
 笑顔で英雄が見送る中、四人は鳥居千万宮へと進撃していった


<鳥居千万宮>

力「うおらあああ!
 鋭い太刀筋で鬼をぶった斬っていく力斗の後ろで、伽子が周囲をきょろきょろと見回す
伽「えーと、今は何か最近暑いし、大体夏ってことでぇ……」
翠「暦は春よ」
伽「えー、じゃあ緑、は、ミドりんの翠ね! おもしろーいあっはっは」
 緑色の鳥居を探しに走っていく伽子に、大筒をぶち当てようかと考える翠
翠「まったく……英雄さんがいないと、<春菜>の使い手がわたくしと伽子さんのふたりになってしまいますわね」
 今月はあんまり大筒を放つ機会がないかもしれない、と暗い顔をする
 あー、と道明が思いついたように声を上げた
道「<春菜>なら、先月に僕も」
翠「え……覚えたのかしら?」
道「覚えたというか、父上に叩き込まれたというか……お前が覚えないとボクが遊びにいけないんだからね?、っていうか」
 生後4ヶ月で<春菜>を覚えた少年を、翠が少し複雑そうに見つめる
翠「(やはりこの人は、素晴らしい才能を秘めていますわね……」
道「な、何ですか?」
 ジロジロと眺められて、道明は蛇に睨まれたカエルのように硬直してしまう
 遠くから呼び声が響いた
伽「緑色の鳥居あったよー! 早くおーいでー!」
 ブンブンと手を振る伽子にせかされ、一同は鳥居を辿って先へと進んでいく
 

 迫り来る低妖を粉砕し、バランスの良い四人組はあっという間に狐次郎の棲む暗黒大鳥居までやってきた
翠「他には、どんな術を覚えたのかしら?」
道「いやあの、翠先生……他には、ええと、」
 道中、ずっと翠に問い詰められ、居心地の悪さを感じながらも道明が答える
力「母ちゃん、これ槌の指南書だってよ」
伽「槌の指南書……何コレ何コレ、どこにあったの?」
力「知らねぇよ、鬼が持ってたんだ」
 ぶっきらぼうに喋る力斗から指南書をひったくって、ぱらぱらと眺める伽子
伽「見えない筋肉の付け方……重いものを簡単に持ち上げる丹田法……超食事法……な、何これw」
力「……見なかったことにすっか!」
 ふたりは布袋に指南書を押し込む
 
 それから稲荷ノ狐次郎を相手に、歴戦の兵、伽子と翠は例外としても、力斗も道明もその成長を見せ、四人は中ボスを難なく打ち倒した
 
力「道明お前、二戦目だってのに落ち着いてやがるな!」
 力斗にバシバシ背中を叩かれて、道明は返す
道「……真名姫って鬼を見た後だったからな」
 あの狂気の人魚姫を目撃した後では、何も怖いなどない、という気にさせられる
 
 一同は拝殿の中に立ち入り、六つの提灯を吹き消して、最深部へと到達した
伽「よーし、今月はついに鳥居千万宮を制覇ね!」
 神社の境内のような風景はなくなり、まるでアリの巣のような三本の洞穴が伸びていた
 ところどころに、柱のようなものが並び立つが、明らかに人間の建築したものとは思えず、禍々しい気配が立ち込めている
翠「……洞窟の制圧も、伽子さんの頭の中みたいに、単純に済めばよろしいわね」
伽「きょうのあたしならイケる! あたしは世界一つよーい!
 騒ぎながら女性ふたりが先に進み、その後を不本意そうに力斗が着いていく
 三人から少し離れて、道明は人影を見つけた
道「……ん?」
 こんな洞窟の下層に、人間の少年が見えた
黄「やッ」
道「驚いたな……旅芸人は、こんなところまで来るのか」
 暗い大玉殿(立派な御殿)の中、柱に寄りかかって微笑む黄川人に、道明は目を丸くした
 黄川人は薄く笑うと、道明に語る
黄「約束通り来てくれたね、この前の話の続き……ここで不思議な赤子を拾って、3000両当てた女房の顛末を詠おう!」
道「いやしかし今は」
 三人は黄川人に気づかないのか、先に行ってしまう
 そんな道明の焦りも気にせず、黄川人は続ける
黄「女房ってくらいだから、もちろん亭主がひとりいた、こいつがどうしようもない男、借金残して金だけ持って、若い女とトンズラと、トントン拍子の三拍子!」
 仕方あるまいと、道明は黄川人の話に聞き入る
 悪羅大将の動きを<くらら>で止め、<速瀬>で追いつけば良い
道「ふむ……」
 黄川人はニタリと笑り、不気味な調子で詠う
黄「まッ、世間にゃ五万とある話、思い余った女房は……ほれ、そこの大鳥居……縄をかけて、首吊ったんだと」
道「……なるほど、転げ落ちた地獄坂、か」
 薄暗い御殿の中に、黄川人の笑い声が響く
黄「そゆこと……フフ、それ以来出るらしいよ、キツネみたいな女の鬼がね……」
道「また、鬼か……」
 真名姫の怨嗟の声を思い出し、道明の表情が曇る
黄「ちなみに、件の赤ン坊……こっちのほうは、誰に聞いても行方や知れず……まッ、これも世間にゃ5万とある話、信じるも信じぬもあんたの勝手の、コーンコーンチキ……ってわけサ」
 その時、道明の耳に女の悲鳴が聞こえた
 コーン、コーンとまるで狐の鳴き声のような泣き声が
道「……狐、いや、女?」
 声に気を取られた道明が振り返ると、もう黄川人の姿はなかった
道「……まことに、怪し……ぬ!」
 続いて聞こえてきたのは大筒の咆哮で、道明は弾かれたように駆け出した

 最奥の扉が開いていて、道明は迷わず飛び込む
 “狐美姫の間”と、そこには記されていた
by RuLushi | 2005-10-28 05:46
1023年 6月前編

<道場にて>

 道場に打ち込みの音が響いていた
力「……ッ」
 力斗が木刀を持って、母親に挑みかかる
伽「てぃ」
 しかし近づこうとしたところで、伽子の素槍が力斗の足を払った
力「いてぇ! この……!」
伽「ちょいや!」
 伽子が一歩下がって槍を振るい、前に出た力斗の小手を叩く
 近づく力斗と離れる伽子、その距離は縮まらずに、打たれ続ける力斗の手足が腫れてゆく
力「こんのアマ……疾風剣!
 一足飛びに伽子の懐に潜り込んだ力斗の視界いっぱいに、白い素足が映った
力「ぬあ!?」
 槍を軸にした伽子の飛び蹴りが、力斗の顔面にめり込み、手加減の無いその一撃によって力斗は道場の端まで吹っ飛んでいった
 
力「くっそ……いてて、なんてバカ力だ……」
 広間の真ん中で腰に手を当てて、伽子は笑っていた
伽「ハッハッハ、見たかねリキくんよ、カッカッカ」
 来月に元服を控えた力斗ですら、1才6ヶ月の槍使いの母親の力には、遠く及ばなかった
力「天狗かよ……てめぇ」
伽「リキもずいぶん強くなったけど、まーだまだだね、ほほ」
 そう言って口元に手を当てて笑う伽子に、力斗は再び立ち上がる
力「……戦う男が、女に負けてたまっかよ、クソッ!」
伽「口と根性は良いんだから!w」
 にやりと笑う伽子に、再び力斗が木刀を持って挑みかかった

 快音の響く道場に、翠と英雄がやってくる
翠「……これは、また一段とやっていますね」
英「楽しそうだね、伽ちゃん相変わらずw」
 身体を動かしているときが一番嬉しそうな伽子を見て、英雄も顔をほころばせる
 しばらく並んで稽古を見学していたふたりの間に、力斗が勢いよく飛ばされてきた
 避けずに、その頭を肘打ちで打ち落とす翠
翠「ハァッ!
英「何で!w」
 その一撃によって道場の床にめり込んだ力斗が、ぴくぴくと身体を痙攣させる
伽「あれれ、ミドりんにひーくん、来てたんだw」
翠「……ずいぶんと、調子がよろしいようで」
伽「うん! 今のあたしは、きっと日本一強いわよ!
 太陽のように笑う伽子が、翠に槍を向けた
伽「そういえばミドりん、前にあたしじゃふたりに勝てない、って言ってたよね」
翠「……ええ」
 翠が静かにうなずく
伽「もしかしたら、今なら勝てるかもしれないの、試してみて良い!?」
英「ええっ、ボクもかい……w」
 好物を目の前にした幼児のようにはしゃぐ伽子に、翠は腕組みしたまま答えた
翠「……良いですわ」
伽「やったー! じゃあほらほら、早く稽古着に着替えてきてよっw」
翠「道場を壊すといけないので、庭に参りましょうか」
伽「超おっけー、先行っているね!」
 テンションの高い伽子が、一足先に素槍を持って走っていく
英「参ったなぁ、ボクもかぁ……でも翠ちゃんのご命令だしなぁ」
 道場の壁にかかっている木製の薙刀を見定めながら、英雄がため息をついた
 そんな英雄に、翠がつぶやく
翠「……今回ばかりは、本気で行かないと、負けるかもしれませんね」
英「え?」
翠「……流星参号では、あの人にはもう通用しないかもしれません」
 翠の自信無さそうな声に、英雄は思わず息を呑んだ

 
<壬生川家前>
 
○「こんにちわッ、と」
道「……うちの軒先には、まこと、変なのが集まるんだな
 習慣となった、屋敷周辺のランニングから帰ってきた道明は、家の前でフラフラしているカラフルな着物をまとった少年を見て、そうつぶやいた
○「ねぇねぇ、キミってば壬生川家の子?」
道「……そうスけど、
○「アハ、やっぱり! ボクの名前は黄川人、よろしくネ」
道「はぁ」
 やたら馴れ馴れしい少年に握手を求められ、道明は何だかよく分からないまま応じる
黄「いやぁボクが見えるなんて嬉しいな、キミは臥蛇丸くんの子なんだね、うんうん」
道「……何かアンタ、やたら詳しくないスか」
黄「そりゃー詳しいさ、キミたちのこと大好きだし」
 黄川人はニッコリと笑う
黄「ねぇねぇ、キミたち今月、あの鳥居千万宮に出陣するんだって?」
道「そうなんスかね、僕は分からないんだけど」
黄「鳥居千万宮で面白い話があるんだけど、聞くよね? モチロンだよね! やったー、奉納点も上げなくて良い! 大好き!
 ひとりで勝手に盛り上がる黄川人に、道明がふと閃く
道「……アンタもしかして、旅芸人の琵琶語りかなんかか?」
黄「ああ、比較的好意的な解釈! キミとは良い友達になれそうだ! さあお立会い!
 ひらりと舞って、黄川人は詠い出す
黄「今日は“お稲荷御殿”と呼ばれているあのお山の、古い社にまつわる話をしよう!」
 突然始まった芝居に、石に腰掛けたまま拍手する道明
黄「今じゃ 見る影もないけど、かつてあの神社は民の信望も厚く、境内は参拝客であふれていた」
道「あの、妖怪たちの薄暗い住処になっている神社が、か」
黄「うんそう……あの忌まわしい事件が、起きるまではね……」
 ヒヒヒ、としのび笑いながら黄川人が続ける
黄「子供の出来ない女房がお稲荷さんに願かけて、100と1日、1神社の前で赤ん坊を拾った……それからというもの、女房は、ウソのように! ツキに付く!
 良い神社じゃないか、と道明が思う
黄「お礼参りでたまたま買った富クジで、1等1000両当てたのさー! なんとそれが続くこと、3回! ドッヒャー!(゚д゚)
 最高潮の盛り上がりらしい場所で、黄川人が飛び上がって、そこでコホンと真顔に戻り、静かに続けた
黄「でもそれがケチの付き始め、あとは一気に転がる地獄坂……」
道「ふむ」
黄「ってことで、この続きはまた今度ね!
道「……ぬ?」
 黄川人はそう言うと、突如として道明に背を向け、走り出した
道「おい、どう転がったんだ! 何が地獄坂だ!」
 続きが気になる道明に、黄川人が叫ぶ
黄「ハハハ、この続きはお稲荷御殿でね! ボクは先に行って、ボスを配置しておかないといけないのサー! アハハ!」
道「うお」
 そう言って、ふわりと飛び上がって姿を消す黄川人、その残光が霧となって散る
道「……最近の旅芸人は、不思議な術を使うもんだな」
 道明は感心したように、そう漏らした


<庭にて>

 貞光が仕上げた大筒に塗った漆を乾かせようと、庭にやってきた
貞「クク……美しい、この大筒……鬼の背骨も草の茎のように折れそうですね……
 何か狂気染みた笑みを浮かべる貞光の横を、人影が過ぎた
貞「む」
 ビクッと貞光が振り向いた先には、額から血を流したまま、えへらぁと笑う伽子がいた
貞「当主さま……何だか、怪我をしているよう見受けられますが……クク」
伽「うふ」
 含み笑いながら、伽子が槍を持って、よろよろとお部屋の中に入っていく
貞「むむ……当主さま、いかがしたのかな……」
 草の中からガサッと物音がして、再び貞光は固まる
貞「ふ、不審者……?」
翠「……」
 翠が不機嫌のオーラを身にまとい、そこに立っていた
貞「お母様ではありませぬか……どうですか、この大筒……クク、美しいでしょう?」
 前に立ちふさがる貞光の頭を叩き落し、翠はそのまま屋敷へと去っていった

 庭の片隅で、藤の木の根元にもたれかかっていた英雄が、誰にも聞こえないようにぽつりとつぶやく
英「やれやれ……トンでもないコが、ボクらの当主になっちゃったもんだ……」
 そのままこてり、と横に倒れる
 成熟した壬生川六代目当主はついに、英雄と翠のふたりをも破るほどとなったのであった
 
by RuLushi | 2005-10-27 07:41
1023年 5月後編

<出陣>
 
 壬生川御三方の前に、すらっとした若い薙刀士が登場する
伽「おー、なかなかカッチョイイじゃーん」
英「まぁボクの初陣の時ほどではないけど、良いね」
翠「……さすがわたくしの後継者」
 好き勝手言われている道明が、頬をかく
道「初めての戦なもので、至らない点もあると思いますが、よろしくお願いします」
 そんな少年の前で、伽子が考え込む
伽「道明くん、道明くん……ミッチーとアッキー?」
翠「増えてるからそれ」
 英雄が道明にささやく
英「……ああ見えてもね、ふたりは恐ろしいよ、戦場だとね」
道「……これ以上、ですか」
 なぜか自分のあだ名について話し合っている伽子と翠に、畏怖の念を持ってしまう
伽「よし、決定しました! ドーメイくんでーす!」
道「……えー」
 相当嫌そうに顔をしかめるが、伽子はあまり聞いてくれない
翠「さ、力士水もたっぷり持ちまして、大筒の防水準備は大丈夫です、万全です、絶好調ですわ」
 腰に布袋を提げて、背中に二本の大筒を背負った巫女服の翠が、ふたりに尋ねる
翠「おふたりは、遺書、ご用意いたしましたか」
伽「えへ……実は書いてない、死ぬ気もないし」
英「ボクは一通じゃ足りないから、京都の子に宛てたラブメールをイツ花さんに頼んでおいたよ、ハハ」
 その会話を道明が聞きとがめる
道「え、何スか、遺書って
英「よし、それなら行こうか、勝てなくても良いけど……ボクは死にたくないなw」
道「父上、遺書て何ですか、今からどこ行くんですか」
 壬生川家の三人が先に進んでいくのを、道明が不安な顔で追いかける
道「ちょっと、僕の初陣に何と戦わせるつもりですか!? 父上! 当主! 翠先生ー!?


<忘我流水道>
 
 防水処理を施した翠の大筒は、上水道の中でも問題なくその力を発揮していた
 伽子と翠が鬼を散らし、残党を英雄が引き裂く
道「……さすが、強い」
 息の合った三人の連携に、道明は遅れまいと必死に着いていく
 途中、一休みしながら、翠が伽子に尋ねた
翠「そういえば伽子さん、こんな時に聞くことじゃないかもしれませんけれど」
伽「ん、なーにー?」
翠「お次の当主って、決まっているのかしら」
伽「ううん、全然w」
 てへへと笑う伽子
翠「……力斗さんや、道明さん、あるいは貞光さんになるのかしら」
英「貞光くんはないでしょ、いくらなんでもちっちゃすぎだよw」
 横から英雄が口を出す
伽「リキはね、最近下が出来たからかもしれないけど、面倒見がよくなったねあのコ」
道「……そうですね、僕もよく、稽古をつけてもらっています」
 伽子に話を振られて、疲労困憊の体で俯いていた道明が顔を上げる
翠「そうですわね、貞光さんの訓練をお願いしても、特に嫌な顔はしませんでしたわ」
伽「生まれながらの、アニキ気質なのかも、女の子に冷たいのはちょっとアレだけどw」
翠「では、次の当主は、やはり力斗さんに?」
伽「……ふっふっふ、それはどうでしょう」
 にたりと微笑む伽子に、何だか嫌な予感を感じる
翠「もしかして、」
 翠の目が、自然と少年に向く
 釣られて、伽子と英雄も、若い薙刀士を見つめた
道「……ぬ?」
 視線が集まっているのを感じて、道明が三人を眺める
道「え、ちょっと、あの……嫌ですよ僕、当主なんて!」
 立ち上がって、思わず両手を振る
翠「……そうね、道明さんなら安心ね」
道「いやいやいやいや、何が安心なんですか先生、それに僕まだ3ヶ月ですよ?」
英「そういえば、伽ちゃんのご先祖の幸四郎って人は、生後1ヶ月で当主になったらしいよね」
道「時代が違うでしょう、時代が……」
 肩を落とす道明に、伽子が笑いかける
伽「大丈夫大丈夫、まだドーメイくんって決まったわけじゃないから、この中の誰もが当主になる可能性があるんだよw」
英「ボクは辞退したいけどねぇ」
 気軽に京に遊びにいけなくなるし、と頭の後ろで手を組む父に道明がつぶやく
道「……自分が嫌だからって、息子に押し付けるんですか」
翠「わたくしが、当主になるかもしれないのですね……何だか、面倒ですわね」
伽「ていうか、何でみんな嫌がるのさ!w
 1才4ヶ月の現当主が叫ぶ
英「みんな伽ちゃんの頑張っている姿を見ているから、自分にはそれが重荷だと感じてしまうんだよ」
 微笑みかけてくる英雄に、伽子が口を尖らせる
伽「良いもの良いもの、最期にアッと驚く当主を任命してやるんだから、覚えてなさい!
翠「イツ花さんが当主とかにされたら、どうしましょう」
英「結構ノリノリでやるかも」
 そんな三人を道明は眺めながら、やっぱり仲良いよな、と思っていたのであった


<真名姫戦>

 1ヵ月の終わり、一同は人魚の瀑布へと足を踏み入れた
伽「ひろーいっ」
翠「……皆さん、あれを」
 長い緑の髪を伸ばした浅黒い肌の美しい女性が、滝に打たれているのが見える
 記録にあった通り、あの後姿こそが敦賀ノ真名姫だろう
英「おやぁ、なーんだ、可愛いじゃない」
 ニコニコしながら、英雄が滝のふもとに近づく
英「やぁ、ボクの名前は英雄、貴方の英雄さ、キミは――」
 振り向いた真名姫の身体が、全身白骨の化け物へと変貌した
 道明が口を半開きにしたまま、真名姫を見つめる
真「生きたまま、肉を食いちぎられたことなんてないでしょ?
英「う、うん、無いね」
 ツカミの会話として物凄く重い話題を髑髏に振られて、英雄が乾いた笑みを浮かべながら後退する
真「メッチャクチャ痛いのよ、でも人魚ってそれくらいのことじゃ死なないのね、これでも神だしね……だからここへ来るまで、毎日が地獄
 カタカタと顎が揺れ、どうやら笑っているのだと翠は思った 
真「ウフフ……せっかくだからどれくらい痛いか、あなたにも教えてあげるわ!
 勢い良く滝つぼに潜る真名姫
伽「ひーくん残念、可愛い子ちゃんじゃなかったね!」
 真名姫の狂気にも動じない伽子が、バンバンと英雄の背中を叩く
英「……女性の胸のサイズも、騙されたままでいたい人なんだけどなボク」
 ため息をつき、英雄は前を見据えて、薙刀を構えた
 伽子と英雄が前、翠と道明が後衛
 そして、銛を持った真名姫が浮上してくる

真「人間なんて、みんな死んじゃええええええええええええええええ!!
 
 伽子が先頭に躍り出た
 突き出された真名姫の銛を、伽子がL字型の鎌槍で受け止める
伽「あなたには同情もするけれど、こんなところで鬼の手下になってどうなると言うの!」
真「黙れ、人間め!
 鬼の豪腕から繰り出される槍を、伽子は真っ向から相手し、二人の間に火花が散る
伽「あなたにも天界で大事な人がいるなら、怨みなんて捨てて家にお帰りなさいよ!」
真「うるさい、うるさい、うるさい!
 白骨鬼のような真名姫に、一瞬だけ口元をきつく結んだ綺麗な人魚の顔が浮かび上がる
伽「バカじゃないの! 怨みで人を殺めたからって、残るのはあんなにも苦いだけの想いなのに……!」
 伽子の胸の中に、鬼へと変わってゆく以蔵の姿がふっと浮かんだ
 何千という鬼を殺してもなお、以蔵はいつも苦しそうにしていた
 今の真名姫は、あの時の以蔵と同じなのだ、伽子は槍を握りながら奥歯を噛んだ
真「黙れ<水祭り>ィィィ!
 真名姫が宙に浮いて、術を唱えた
英「……周囲の水が」
翠「……真名姫の周りに、集まっていきますわね」
 力士水を皆に降りかけていた英雄と翠が、目を剥いた
 膨大な量の水が巻き上げられ、竜巻のように真名姫の周囲に吹き上げられている
英「これはちょっとシャレにならないな……無理矢理連れてきて申し訳ないんだけど、道明は後ろで防御しててね」
道「……っ」
 真名姫は<水祭り>を二回連続で詠唱する
 圧倒的な力を持つ化け物を見て怯える道明を後ろに下げ、英雄は<春菜>の術を唱える
英「良いかい、ボクが気を失ったら、すぐに逃げるんだよ」
翠「……見逃してもらえるとは、思いませんが」
 洞窟に浮かぶ鬼を見上げながら、翠がつぶやく
伽「……でも、大丈夫、ひーくんならきっと、あたしたちを守ってくれる」
英「……ヤな信頼だね、それ」
 ため息をついて、英雄は目を細めた
英「そんなこと、女の子に言われたら……格好悪いとこ、見せられないじゃない
 そして、真名姫が叫んだ
真「<真名姫>ェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
 烈震のように四方八方から押し寄せてくる水流が、壬生川出撃隊を押し潰す!
 英雄はその場に薙刀を刺し、流れに逆らって大地を踏みしめながら、<春菜>を唱え続けた
英「想像以上だよ……コレ、<春菜>!」
 全身を淡い光で包まれながら、伽子が濁流の中から跳躍する
伽「正義の一番槍、力士水バージョーン!」
真「ギャアアアアアアアアアア!
 その槍が真名姫の右腕を吹き飛ばし、続いて、端まで流された翠がその洞窟の石壁を支えにして、渾身の国友銃を放つ
翠「砲火!」
 うなりを上げて発射された鉄球が、真名姫のわき腹を貫通した
真「ア、ガ、ガガ、ガガガガガ
 真名姫の赤い瞳の光が、徐々に弱まっていく
道「何だ、この人たち……」
 津波を浴びて、全身を打撲しながら、それでも戦い続ける三人に、道明が恐れを抱く
真「<真名姫>エェェェェェェェェ!
 再び、水流が一族を飲み込む
 しかし、水が去った洞窟の中央にて、英雄は立ち続けていた
英「……ボクたちに力を、<春菜>……!」
真「バカ、ナ……ソンナ
 くぐもった呻き声を上げる真名姫に、飛び上がった伽子が槍を縦一文字に振り下ろした
伽「成・仏、しなさいバカー!」
 真名姫の身体が、左右に分断された
真「ソンナ……人間、ガ……!
 その真名姫の骨を、翠が散弾で粉々に打ち砕く
翠「……わたくしたち一族は、鬼などには、負けませんわ……」
 血塗れで笑う翠の口の端が、わずかに釣り上がった
 真名姫の身体を黒い光が包み込み、その場にこの世のものとは思えないほど恐ろしい絶叫が響き渡る
英「……これで、ご先祖さまの仇は、討てたかな……」
 ただの一度も意識を途切れさせることなく、術の印を結び続けた本日の影の功労者が、そう言って微笑んだ

真名姫「人間なんて、みんなあの子たちに殺されちゃえばいいのよ!
 滝の流れ落ちる音に紛れて、真名姫の悲痛な声が聞こえてきた気がした
 伽子は槍を片手に、真名姫の消滅した方を眺めていた
伽「……本当は、あの人も人間を怨みたくて怨んでいるわけじゃないんだよね……きっと」
英「……そうだね」
伽「……あたし、この世に強い怨念を残して、お父さんや真名姫さんみたいに苦しんでいる人がいるのなら……ひとりでも多く、成仏させてあげたいよ」
 英雄が伽子の肩に手を回して、笑いかけた
英「大丈夫……伽ちゃんは頑張ってるよ、ボクが見てるから」
翠「……さすがのわたくしも、今月は疲れましたわね……そろそろ、戻りましょう」
 ふらつく翠の肩を、道明が支える
道「……翠先生、僕……」
 役に立たなかった、と道明は己の恥を思い知らされる
 2ヶ月みっちり訓練を積んできたのに、三人はあまりにも遠かった
翠「……初陣にこれほどの相手と向き合えば、怖いことなどもう何もないわ、その悔しさを忘れないようにね」
道「……はい、先生」
 
 こうして一族はついに蘭に果たせなかった真名姫討伐を完遂し、
 重傷者をひとりも出さず、たくさんの奉納点を入手して、帰路に着いたのであった
 
by RuLushi | 2005-10-26 04:18
自己紹介

・ハンドルネーム 
 ルル師です、師です、A型です

・誕生日
 12月16日生まれです、クリスマスと誕生日プレゼントは一緒くたでした
 
・好きな猫
 ソマリとアメリカンショートヘアです

・性格
 たぶん軽いです
 普段からテンションが高いです

 若輩者ですが、これからもこんなルル師をよろしくお願いします
 応援やファンレターはこちらへどうぞ、ちゃっかり =メッセージフォーム=
by RuLushi | 2005-10-26 03:42 | ルル師の紹介
1023年 5月前編

<壬生川家前>
 
道「おや……お前は」
 屋敷の周りを走って身体を動かしてきた道明が、正門の前で自分と同じくらいの少女を見つけた
ゆ「あぁ、あんたぁは?」
 野菜籠を置いて、こちらをぼけーっと眺めてくる
道「前に、ここで出会った、」
ゆ「……あーあーあー、あの芋くれた子の兄さんかー?」
道「……そういう事にしても良い」
 顔の汗を拭って、道明がゆねの横に腰を下ろす
道「お前は、毎月我が家に来ているのか」
ゆ「毎月っちゅぅか、十日にいっぺんは来とるよぉ」
道「そんなに食ってたのか、僕たちは……」
 確かに壬生川家の皆は大食漢が多く、特に伽子と翠は痩せの大食いとして、壬生川家でも人一倍よく食べる
ゆ「ねぇ、ウチはゆね、あんたは何て言うの? 見た感じウチと同い年くらいやよなぁ」
道「僕は道明だ、恐らくこの家で……一番まともだと、思う」
ゆ「でもそういうん、自分で言うんはどうかと思うよー
 そうだな……、と道明が反省する
ゆ「でもねでもね、ウチ思ったんよ、ここの家の人怖い人もおるんやろうけど、もしかしたら、京で暮らすウチらのこと守ってくれとるんやないかな、って」
道「……どうしてそう思う?」
ゆ「芋、くれたから
 あっけらかんと笑うゆねに、道明が思わずうなる
ゆ「ほら、こんなちっぽけなウチのことも気にかけてくれるなんてぇ、優しい人やんか、なぁなぁ」
道「はぁ」
 道明はその後も、しばらくゆねの声に耳を傾け、久々に平和な時間を過ごしていた


<翠の子供>
  
 儀式の間で待つ翠の前に、ひとりの少年がイツ花に連れられてやってきた
翠「その子が、わたくしの……」
イ「はい、火車丸さまの元より新しいご家族をお連れいたしました!」
 一時期は女性のみの家系となった壬生川家で、ついに三人連続で男子が生まれたことになる
 髪は栗色だが、その目は翠と同じく、気が強そうに尖っていた
 というか早い話、かなり目つきが悪かった
○「初めましてお母様……ククク
翠「何かしらその笑い」
○「癖なんですよ……クク」
 こめかみを押さえて、翠が頭痛を抑えるようにつぶやく
翠「今すぐやめなさい……」
 
 幸家に生まれた少年の名前は「貞光(サダミツ」と名づけられた

イ「なるほどォ、碓井さまですね!」
翠「いや壬生川ですからうちは」
 貞光がふと翠の腰に下げている流星参号に目を向ける
貞「お母様、それは何ですかね……?」
翠「これはわたくしの作った、散弾式二寸口径対鬼用機銃火、三期改良型“流星参号”よ」
 舌を噛みそうな名前に、貞光が眉を上げる
貞「ほほう……たくさんの鬼を、楽に、仕留められそうですね」
翠「……それだけの知識と頭脳があれば、だけれどね」
 くすくすと笑う貞光は、翠に頭を下げる
貞「それでは、どうか私に……大筒士の業を教えてください……クク」
翠「……良いでしょう」
 何だかこっちまで暗くなってくるようだ
 楽に鬼を仕留められる、という言葉が気になったが、こうして貞光は翠の後を継ぎ、大筒士の道を歩むこととなった
 

<作戦会議>

 貞光を力斗に押し付けて任せて、年長者三人は家族会議に移っていた
翠「今月は、忘我流水道に出陣しましょう」
 かつての初代当主玄輝の部屋で、久々に三人が集結する
伽「あたしはどこでもいいよー、強い相手なら望むところ!」
英「でも中ボス……敦賀ノ真名姫、だったよね……ボクのお婆ちゃんが倒された相手、気が進まないなぁ」
 暗い顔で英雄がつぶやく
英「ぴちぴちの人魚ちゃんかと思ったら、全身骨だらけの化け物だったなんて……!」
 ぐっと拳を握り固める英雄を無視して、翠が話を続ける
翠「『実録壬生川戦史』を見ると、真名姫の放つ<真名姫>は全員が400弱のダメージを受ける、恐ろしい術です」
伽「どうしても、あたしたち三人で<春菜>連打になっちゃうよねぇ」
 現在<春菜>を唱えられるのはこの三人でいて、<円子>はその中でも伽子と英雄しか使いこなすことが出来ない
翠「更に我が家は、春菜を入手したからと言って、補助術は武人に防人、あとは祭り系、葬系、それに速瀬くらいしか無いのが、現状ですわ」
 そこで、と翠が高らかにあるものを掲げた
翠「こちらの品です、京の都に新たに出回った秘薬、“力士水”!」
 ぴっかーんと輝く翠の勢いに、わけも分からず拍手してしまう伽子と英雄
翠「何と、味方全員に攻撃力上昇・大の加護!」
伽「すごっw」
翠「ふふ……というわけで、金庫のお金を持ち出して、買い溜めしておきましたわ」
 得意げに言う翠に、英雄が尋ねる
英「どれくらい買ったんだい」
翠「99個
伽「バカがいる!w」
 翠が伽子に大筒を向けるのを、まぁまぁ、と英雄が押しとどめる
英「じゃ、じゃあその秘薬を持って、打倒真名姫を目指すんだね、今回は」
翠「……そういうことですわね、というわけで」
 ふたりを見て、翠はすっくと立ち上がって、告げた
翠「その気は無くても、遺書は用意しておくのですわよ、おふたり」
伽「嫌だなぁ……w」
英「気が重いね……」
 思わず苦笑がこぼれてしまう
 物語はそして、後編に続く
by RuLushi | 2005-10-25 01:06
1023年 4月

<屋敷の増築>

 力斗が朝目覚めると、屋敷が豪華になっていた
力「……はあああ?」
 呆気に取られた力斗が居間に行くと、柱が何本か増えて、いつものちゃぶ台も木のテーブルへと変わり、庭すら広々と改築されていた
力「何じゃこりゃああああ!?
道「見ての通りだと思うが……」
力「む、道明」
 目の下にクマを作った道明が、よろよろと居間の座椅子に座り込む
力「何かお前、元気ねーな、メシ食ってないのか?」
道「……先月ずっと、なぜか翠先生の大筒作りを手伝わせられて、そういえばあまり食べる暇もなかったかもしれない」
力「道明、お前、あんな女なんかの言いなりに……つか先生て
 道明の肩をぽんぽんと叩く力斗
力「男なんだから、もっとしゃんとしろよ、しゃんっと、ほらガハハって笑え!」
道「力斗さんじゃないんだから……」
力「何だよ水臭ぇな、俺のことは力斗、で良いからよ」
 そう言って、力斗がガハハと笑う
道「そうか、力斗、分かった」
力「おう、それよそれ、ガハハ
 力斗と道明が話しているところに、ひょっこり英雄が帰ってきた
英「やあただいま、ちゃんと出来上がってるじゃない」
 白木の丸柱を満足そうに叩く
道「あ、父上、京からお戻りになられたのですね」
英「うんホント、あっちこっちに引っ張りだこでさ、疲れたよハハ」
 そう言って妖しく笑う英雄だが、力斗と道明はその笑みの意味するところが分からない
英「うん、やっぱり熊五郎さんは、お酒さえ飲まなければ良い腕だね……」
 そう言って、英雄が頷いた
英「部屋も増やしたから、新しく四人住めるようになったからね道明、誰かを連れ込んだときはそっちでするのだよ
道「はぁ」
 曖昧に相槌を打つ
翠「出来ました……」
力「ひっ!」
 まるで幽鬼のようにぬっと現れた翠に、声も上げられず驚く力斗
翠「出雲産の砂鉄で筒身を作り上げ……良い、粘り気のある鉄としなりのある木材を使った、威力向上型の新作……」
 ぬふふ、と翠は地震のように笑う
翠「その名も、国友銃……そして、流星参号!、一号と二号は安らかに!」
 散弾式大筒の改良型を抱えて、周囲を見回り、眉をひそめる
翠「……伽子さんがいらっしゃいませんね」
英「いても打たないでよ、お願いだから……w」
 大筒を下ろす翠を、英雄が諭す
英「居間の柱なんて、もう少しで倒壊するところだったんだからね……翠ちゃんの散弾で」
翠「この天才は、そんな些細なこと気にしていませんのよ」
 なぜか誇らしげに言う翠に、少しは気にしてよ……、と英雄が呆れる
翠「ああ早く、この大筒の力を試したいですわ……」
 うずうずしている翠が、大筒をついつい英雄に向ける
英「えーっと伽ちゃんどこいったのかなぁ、ボク探してこようかな!」
 さっさと逃げる英雄に、翠がちぇっと舌打ちする
翠「……仕方ない」
 大筒をそうして、力斗に狙いを定める
道「翠先生、それもはや人間相手にする威力じゃありませんから」
 製作を手伝った道明が、翠を控えめにたしなめる
翠「そうですか……やっぱり、人間外の伽子さん相手にしなければならないですわね」
力「ったく、銃口向けんなブス!w」
翠「……着火」
 道明が目を閉じて耳を塞いだ瞬間、新型大筒の咆哮と力斗の悲鳴が屋敷に轟いた
 
 
 英雄が伽子の部屋の前を通りがかる
英「仔猫ちゃんは、ここかなー……?」
 なぜだか自然と足音を消していた英雄が、がらりと障子を開けた
英「伽ちゃーん?」
 部屋の中にいた伽子が、とっさに何かを隠したように見えた
伽「あ、ひ、ひーくんごきげんよう!」
英「はいはい、ただいま」
伽「きょ、きょうは良い天気よね! 春って最高だね、だって春だもの!
 そうだね、と頷きながら、英雄は伽子に近づく
英「なぁに隠したの?」
伽「な、なななんのこと!」
 おたおたと慌てる伽子のわき腹に手を当てる英雄
英「出さないとこうだよ?」
伽「ちょ、この何するのスケベ、いやらしぃセクハラ魔ぁぁ、あ、あはは、はひゃははあはははあはははははは!」
 英雄のくすぐり攻撃の前に、笑い上戸の壬生川家当主はなす術もなく降参してしまう
英「さって、何を持っていたのかなー、コケシかなー、おっきな張り型かなー」
 実に嬉しそうに、笑い転げる伽子の懐を漁る英雄
 その手が包み紙を掴んだ
 おや、と首を傾げる英雄が取り出したものは、粉末状の漢方薬だった
伽「あ、それほら、最近なんか疲れ気味でさ、徹夜でアレコレするミドりんはやっぱり若いよね、あっはっは」
 英雄が伽子の着物を剥く
伽「ちょ、おおい!w
 下腹部、先々月に大怪我を負った箇所に、真新しい包帯が巻きつけてあった
 英雄は眉をひそめて、傷口を撫でる
英「ふぅん……まだ痛む?」
伽「いやそりゃ押されりゃ! 痛い痛い痛いw」
 伽子の着物をぽんぽんと整えて、英雄がつぶやく
英「……じゃあ、伽ちゃん、今月は一ヶ月おやすみかな、道明も戦えるようになったし」
伽「えーーー!!
 サイレンのように叫ぶ伽子
伽「ちょっと、あたし絶対出陣するからね! 何のためにこんなとこでコソコソ美味しくないお薬飲んでたと思ってるのひーくん!」
 早口で怒鳴る伽子の頬を、英雄がぴしゃりと叩いた
 少しだけ、部屋が静まった
英「何でボクに黙ってたのさ健康度のこと、伽ちゃん」
 伽子は英雄の真顔を、初めて見たかもしれない
伽「……だってあたし当主だし、みんなに心配かけないで、いつも大きな樹みたいにしているのが当主の役目かな、て……」
 父親に叱られた子供のように、伽子が言い訳を口にする
英「バカだなもう……あのね、何で考えるの苦手なくせにひとりでそう勝手に、結論しちゃうわけ?」
伽「いやだって、ひーくんもミドりんも、何か、その、鬼退治マジメに考えてないんじゃないかなー、とか思っちゃって……」
 伽子の逆側の頬を、英雄がまた叩く
英「うん、ボクは実はあんまりマジメに考えてない、京の復興だって半分の目的はお姉ちゃんたちと遊ぶことだし、今が楽しければハッピー」
伽「じゃあ今何で叩いたの!w」
英「でも、伽ちゃん(や他の女の子)のことを、真剣に考えなかった日はないよ、ボクを甘く見ないでほしいな」
 誇らしげに微笑む英雄の頬を叩き返す伽子
伽「いいよいいよあたしが悪かったよ、でも出陣はするからね、あたしが戦わないで誰が戦うの!」
 笑顔で英雄が、先ほどより少し強めに伽子に仕返しする
英「ひとりで思いつめたら、また師匠みたいなことになるんだからね、約束してよ、もう隠し事はしないって」
 三度も平手されて、伽子がついにグーで英雄のこめかみを殴る
伽「あたしはお父さんみたいにはならないもの!」 
英「いやちょっと、今のかなり本気で痛かった……」
 続いて、伽子の拳が英雄の顎に決まった
伽「悪かったよ、思いつめるなって言いたいんでしょう! バカで悪かったね! あたしだってもうすぐ死ぬんだから出陣するよ! モンチーやリンリンもいなくなって、取り残されるのは嫌! 嫌なの!」
 叫びながら、テンションの上がってきた伽子が、次々と英雄に鉄拳を叩き込む
英「い、いや、ボクがその、悪かったから、もう、殴らない、で……」
 その怒声を聞いて何事かと駆けつけた翠は、
 英雄を延々と殴りつける伽子を見て「そろそろ出陣なので、早く支度してください」とだけ告げたという
 
 
<出陣・紅蓮の祠>
 
 伽子、英雄、翠、力斗の四人は今月、紅蓮の祠に攻め入った
翠「……ふふ、はは、素晴らしい……良いですわ、良いですわ、溶岩が立ち込めるこの洞窟でも、わたくしの作った流星参号は、火薬が暴発することなく運用できていますわ!」
 あはははははと高らかに翠は笑いながら、大筒を辺り構わずブチ込む
力「何が三号なんだ、何が」
 その散弾の流れる様は、確かに流星と呼んでも過言ではないほどの美しさであった
 だがそんな翠の新装備の服装が、力斗には違和感だった
力「(何で巫女服……」
 大筒を乱射する巫女服を着た翠が、何だかいつも以上に恐ろしい者に見えたのは、先ほど砲撃を身体に食らったからだろうか
 女性専用胴体軽装備・巫女の衣を着た翠を嬉しそうに、英雄が眺める
英「やっぱりうん、ギャップが良いね……おっと、伽ちゃん、今月は大怪我しないようにね」
伽「言われなくても分かってるってばー」
 頭に包帯を巻いた英雄が、伽子に念を押す
 翠が笑いながら大筒を噴かせ、一同は奥へ奥へと進んでいく
 

 炎舞廊での鳴神小太郎戦は、<春菜>を入手していなければ勝てなかっただろう
 小太郎の<雷電>と<双火竜>によって、まず力斗が戦闘不能に陥る
 そこで壬生川家は英雄が門となり、先頭に立って相手の攻撃を避けながら、<春菜>を唱え続けた
 時には<円子>で英雄を援護しながらも、伽子と翠が徐々に小太郎を追い詰めていく
 英雄が倒れるよりも早く小太郎を討ち取る、戦いはまさに時間との勝負となり、最後には伽子の槍が見事に小太郎の腹を貫いた
伽「正義、完・了!」
 伽子が華麗に小次郎の背後へと着地する 
小太郎「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

翠「相変わらず、お強いですわね……」
 手柄を奪われた翠が、面白くなさそうにそっぽを向いた
 
 決して楽な相手ではなかったが、それでも壬生川一族はかつての以蔵率いる討伐隊より、着実な進歩を実感した戦いであった
 その後は取り置きしておいた養老水(微量の健康度を回復する)を力斗に使い、死地を脱した彼と共に13ノ宴まで進軍し、たくさんの戦利品を持って凱旋したのであった
 
by RuLushi | 2005-10-24 05:01
1023年 3月

<壬生川家・居間>
 
 元服が済んで、堅苦しい着物を脱いだ翠の前に、一着の贈り物があった
翠「……何かしら」
 壬生川家でこんなキザな真似をするのは、ひとりしかいない
 翠がその衣を広げると、中からぱらりと一枚の手紙が落ちた
翠「直接口で言えば良いものを……」
 思いながら手紙を読む
“ボクがコツコツやってきた投資結果が身を結び、市場には新たな品が並びだした
 キミが欲しがっていた、より純正な火薬や木材も部屋に送っておいたからね 貴女の英雄
翠「……へぇ」
 その続きに、これは最も防御力の高い、加護のある着物だと書いてあった
 大筒を担いで戦うため、どうしても重い鎧をつけることが出来ず、普段は薄衣二枚だけを身にまとっている翠にとっては、嬉しい配慮だった
翠「……今月ボクは忙しくて屋敷には帰れないから、道明をよろしくね、って、英雄さん……」
 一緒に連れて行けばよかったのに、と思いながらも、部屋に届いているという資材のおかげでそれほど怒りが沸いてこない
道「どうも、お世話になります」
翠「あら、道明さん」
 居間に翠の姿を見つけて、少年がやってきた
道「何か父上が、今月は京女を堪能するのが忙しいそうで」
翠「……どうせそんなことだろうと思ってたけれど、道明さんは、何とも思わないのかしら」
 翠の問いに、道明は短く考えて、
道「まぁ……父は僕ではありませんしね」
翠「何だか、達観しているのね」
道「まだ未熟な僕に、父上の行動を咎めることは出来ません」
 1ヶ月才とは思えないほど常軌をわきまえた言葉に、少しだけ翠の頬が上がる
翠「……道明さん、あなたは、良いですね」
道「……何がですか」
翠「ところであなたは、伽子さんのことをどう思うかしら」
 企み顔で微笑む翠に、道明は返す
道「はぁ……もう少し、落ち着いてくれたらと思いますが、」
 あれはあれで魅力があるのではないでしょうか、と続ける道明を遮って、翠が叫んだ
翠「良いですね、あなたは、わたしの後継者に成り得る存在です!」
道「……え?」
翠「わたくし、あなたを気に入ったわ」
 翠の言葉に、道明は思わず妙な表情になる
道「……いやあの、話が見えないんスけど」
翠「あなたが将来この家を引っ張っていくのよ、道明さんには、わたくしの全ての知識を教えて差し上げます」
道「いや翠さん、まだ元服したばっかりじゃないスか」
 強引に翠に手を引かれながら、道明は思った
道「(この家ホントに、変な人ばっかりだな……」
翠「さあ、まずは基礎教養として、火薬の取り扱い方法から教えて差し上げましょう」
 道明もまた、臥家の宿命には逆らえないようだ
 

<伽子の部屋>

 布団に寝転がる伽子と、その傍らに息子の力斗が座っていた
力「まったく……母ちゃん、女のくせに無茶しすぎだっての」
伽「良いじゃないの、あたしが戦うの好きなんだからっ」
 べーっと舌を出して、伽子が力斗に笑いかける
伽「まだあたしに勝てないくせに、偉そうなことを言うんじゃないよ、ほほ」
力「てめぇええええ……w」
 先月の雪辱から、日々血の滲むような思いで訓練している力斗を、伽子が軽くあしらう
伽「大体ね、男とか女とか関係ナシに、あたしは背負ってるものがリキとは違うのよ」
力「背負ってるもんなら、俺だって、壬生川家の血を、」
伽「甘いね、チョー甘いね」
 大怪我していながら偉そうに語る
伽「あたしは鬼を殺す、でも鬼を憎んだりはしないよ、絶対に」
力「何だぁそれ? 矛盾してるんじゃねーか!?」
伽「ふふーん、あたしたちみたいに短い人生で、鬼を憎んでるヒマなんてありゃしないのよ」
 伽子の視界に、父の最期がフラッシュバックする
 忘れっぽくて、物覚えが悪い自分でも、これまでただの一度も忘れたことはなかった
伽「だから、あたしは……お父さんみたいにはならない、他の人にこんな想いを残したりはしないよ」
 そっぽを向いて、力斗はつぶやく
力「……でも俺ぁ、やっぱり女が戦う姿を見ているのは嫌だ、もっともっと強くなって、母ちゃんや翠姉ちゃんが戦わなくても良いようにする!」
伽「……ふふふ、あたしが生きている間は無理でしょーけどね」
 伽子は珍しく母らしい笑みを浮かべて、拗ねる力斗の頭をよしよしと撫でた


<交神の儀>

 元服した順から交神すると言った手前、避けること叶わず、翠がイツ花の待つ儀礼の間に訪れる
翠「……もう少し、道明さんとお話していたかったのに」
イ「あらァ、お嫌なんですか翠さま」
 道明に術の学問を言いつけて、一応外面を整えてきた翠が、イツ花の前に座り込んだ
翠「わたくしの分、英雄さんがもう一度交神なさればいいのに」
イ「大喜びしそうですね英雄さま……w」
 翠はため息をついて、続ける
翠「家系なんて、わたくしには無縁のものですわ」
イ「でもォ、一応それは先代先々代の方々が守ってきたものですしィ……」
翠「……だから、誰もやらないとは、言ってないじゃありませんか」
 憂鬱そうに、翠がつぶやく
翠「愚痴くらい言わせてくださいよ、これから望まぬ営みをするのですから……」
イ「なるほど……翠さまも、緊張されているんですネェ」
翠「緊張というか……何事も経験とは申しますけれど、こういうことはもっと、星の巡り合わせとか、運命にお任せしたいですわね……」
 何だか乙女のようなことを言う翠に、イツ花が笑いかける
イ「翠さまも女の子ってことですネェ、もしよろしければ、わたしがお相手を決定しましょうか?」
 しかしそんなイツ花の気遣いを耳から耳へ通して、翠は鋭い目つきで神様一覧表をめくる
イ「あ、あの、翠さま……?」
 態度の変わった様子に、恐る恐る声をかける
翠「……わたくしの遺伝子で足りない部分を補って、さらに奉納点が間に合う神様で、誰が一番かしらね……」
 どうやら翠は、女の子であることよりも先に、壬生川家の一員らしい
翠「それじゃあ……この方でお願いしますわ」
 少しの時間がたって計算を終えた翠が、名前を書いた紙をそっとイツ花に渡す
イ「はい、えーッと、火車丸さまですね、ただいまお呼びいたします」
 
 少しだけ緊張して待つ翠に、神の声が響く
 
火車丸「俺かよ……しょうがねェなァ……
 
翠「(……そう言われても、わたくしだって嫌なんですから」
 翠は相手に身体を委ねながら、この時だけ何も考えてない伽子や邪な英雄が羨ましかったという
by RuLushi | 2005-10-23 03:35