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ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1019年 12月前編

 その日は、奇しくも初雪が壬生川家に見参していた
幸「雪だぁ……そういえば、僕が壬生川家に来たときも、雪が積もっていたなぁ」
 縁側に立って庭を眺める
幸「何だかこれが最期のうちの景色だとしても、納得できそうだなぁw」
 名残の雪を見て育ち、初雪が終雪となる、何となくみやびじゃないだろうか
 縁起でもないことを考えて、カラカラと笑う
 
 本日は、大江山へ出陣する日だ
 
<倉庫の蔵出し品出し>
 
 その日の壬生川家は、朝一番から騒がしかった
の「ちょっと佐和、ちゃんと自分の弓手入れしたのぉー?」
佐「わーもう、今やっているからお母さんー!」
の「戦場で弦が切れたら、大変なことになるんだから、よく油を塗っておくんだよぉ」
佐「はーぃはいはいはいはい、もうそれ耳タコだってばぁ!
の「何を言うの、佐和ってば初めてのいくさなんだから、念には念だからねっ!」
佐「(まったくもぅ、お母さんってば臥蛇丸オジサンみたい
の「何か言ったぁ?」
佐「何でもないからナイカラ!」
 居間では、親子が弓の整備をしている真っ最中だった
幸「(どうして居間で
 幸四郎は思ったが、恐らくコレが最期になるかもしれないと感じているから、一番馴染みの深かった場所で支度をしたいのだろう
 とはいえ、油まみれの居間を見渡して、うぅーんとうなる
 一家で蕎麦をすすった居間、いつも幸四郎は食べるのが遅くて、姉妹にからかわれていた
 夏海には囲碁の相手もしてもらった、まったく歯が立たなかったけれど
 お腹が空いて仕方なかった稽古後、夕餉の前にイツ花に握り飯を作ってもらったこともあった
 臥蛇丸とはよく壬生川家の事を話し合っていた、町の発展がいかに鬼退治の助けとなるのか、幸四郎は教えてもらった
 あの頃父親の背は、見上げるほど高かった
 いつか届きたいと思っていた、幸四郎の背は今では晩年の玄輝を越えていた
の「あれ、こうちゃんどうしたの、ボーっとしてぇ」
幸「え、ああいや、居間を見てたんだ」
 正直に答える幸四郎
の「そっかw」
 1才3ヶ月となったのの香は特に追求しない、何となく感じているのだろう幸四郎の感慨を
幸「僕、もう準備が終わったから、お兄ちゃんと巻絵ちゃんの様子を見てくるね」
の「はーぃ、こっちはもう少しかかるかもぉ」
幸「ん、分かった」
 幸四郎は居間に背を向ける
 後ろからのの香の「佐和、それが終わったら次は戦衣装にお着替えだからねぇー」と「ハーィ!」という元気の良い声が聞こえてきた


臥「すまん巻絵、この槍はそっちに立てかけておいてくれ」
巻「ふぁーぃ」
臥「まったく、こんなに時間がかかるとは思わなかったな……」
巻「もう出発の時間が迫ってましゅぅぅ(´・ω・`)」
 臥蛇丸親子は、なにやら倉庫でドタバタとしていた
幸「お兄ちゃん、大丈夫?」
 庭にまで埃が噴き出している、幸四郎は中を覗き込んで、少しむせた
臥「おお幸四郎、すまんな準備が遅れて」
幸「それは大丈夫だけど、何をしているの?」
 倉庫の中では、顔に手ぬぐいを巻いて割烹着を着た臥蛇丸と巻絵が、荷物を整理しているようだった
臥「なぁに、倉庫の中がごちゃごちゃしていたもので、今イツ花さんに頼んで町へ売却してもらってきているのだ」
幸「倉庫の整理……全然思いつかなかった」
臥「古い弓や、もう錆びた刀なども、砥ぎ屋に頼んでから仕出しをな」
 夜通し掃除をしていたのか、臥蛇丸は全身煤だらけのようだ
臥「まぁこれで支度金も出来たし、ついでにいくらか上等な鎧も買えるだろう、ハハ」
幸「お兄ちゃん……ありがとう」
臥「なぁに、俺に出来るのはこんなことくらいだ、ほら巻絵、もうおまえは出陣の準備をするんだ」
巻「はーぁい」
臥「ありがとうな、手伝ってくれて」
 臥蛇丸は黒ずんだ手を割烹着で拭いて、巻絵の頬を撫でた
臥「行って、幸四郎を守ってやるんだぞ」
巻「あぃ(`・ω・´)」
 僕は守られるのか、と苦笑する幸四郎
 とたたたと走っていく巻絵の後姿を、臥蛇丸は目を細めて眺める
臥「そうだ、俺に出来るもうひとつの事があったっけな」
幸「ええ、どうかお願いします」
 幸四郎は頭を下げる
臥「ああ任せておけ、おまえの留守中、子供は俺が守る」
幸「僕が帰らなかった時は、そのコを当主に……よろしくお願いします」
臥「……名前はもう、決めているのか?」
幸「そうですね、帰ってきたら決めることにします」
 幸四郎はにっこりと微笑んだ
臥「ハハハ、そうだな、それが良い、それが一番だ!」
幸「それじゃあ、行ってきますね、お兄ちゃん」 
臥「ああ、奮って来い!」


幸「さって、みんな集まったかな」
の「お~」
佐「おー!」
巻「はい、わたし頑張りますでしゅ(`・ω・´)」
 四人は外に、ひとりは玄関に
臥「どんな結末になっても、俺は待っているからな」
 死地へと赴く、四人を眺める臥蛇丸
幸「それでは、壬生川家、出陣!!
 刀を抜いて、叫ぶ
幸「目的地は大江山山頂、朱点童子の首ひとつ!!


 見送られる側と、見送る側
臥「さ、イツ花、居間に戻って片付けでもするか」
イ「……そうですネ」
臥「あの油まみれの部屋じゃ、皆が帰ってきた時に、くつろぎにくいだろうからな」
イ「はい、臥蛇丸さまw」 
 すっかり掃除夫と化している臥蛇丸であった
by RuLushi | 2005-07-31 02:21
1019年 11月

<槍使いの指南書>

臥「ふぅむ……」
 臥蛇丸は部屋でひとり、首をかしげていた
臥「どうやら、先人によって書かれた武芸書のようだが……難解だ」
 指南書から目を上げ、眉の間を指で揉みほぐす
 先月相翼院から入手した槍の指南書を、何時間もかけて読み解いていたところだった
臥「夏海が生きていれば、もっと詳しいことが分かったかもしれんが……」
 臥蛇丸ものの香も、さらには幸四郎も京の武術に精通しているとは言いがたい
巻「お父しゃん、お茶をお持ちしました~」
 襖を開けて入ってくる娘、巻絵
臥「ん、すまないな」
 熱くて渋いお茶が、胸の中に染み渡る
臥「そうだ巻絵、おまえならこれ分かるか?」
 巻物を差し出す
巻「うーん、こういうのはちょっと……光源氏とか、耽美なお話なら大好きでしゅけど」
臥「そ、そうか」
 少し引く臥蛇丸
臥「まぁ仕方ない、のの香と佐和に見せて、あとは蔵にしまっておくか」
 それがダメなら、自分たちの代では復活させられない、ということだろう
臥「ま、こういうのを次の世代に託す、というのは何だか無責任な感じがするものだな」
 相変わらずの気難しそうな表情で、ため息をつく臥蛇丸であった

<交神の儀>

 一方その頃、
イ「幸四郎さまも、本当に立派になられましたネ!」
 交神の部屋に、正装した幸四郎が参上する
 その晴れ姿に、思わず目をうるうるとするイツ花だった
幸「うん、おかげでこうして子供を遺すことも出来るよ、みんなイツ花のおかげだね」
イ「そんな、イツ花は何もして無いですよw壬生川家の皆様の尽力があったからこそ!です」
幸「そうだなぁ、特にのの香お姉ちゃんの術には、ずいぶん助けられたっけw」
 幸四郎は恥じらい、頭をかく
 そんな幸四郎も9ヶ月、そろそろ子供の頃のヤンチャは鳴りを潜め、大人の色香と貫禄が備わってきた頃であった
イ「でもホント、幸四郎さまは格好良くなられましたネ!」
幸「そっちの方は分からないけど……でも、武芸は昔とは比べ物にならないくらい、成長したと思う」
 昔から夏海のの香姉妹の玩具であったため、身なりに気を使うのは性分になってしまったらしい
幸「僕は末の子だったから、早く早く強くなりたいって、ずっと思っていたんだ」
 そう言って、はにかんだ笑みを見せる
 歴代当主好感度の中でも、上位に居続けるであろう微笑みだった、姉妹の教育の成果はこんなところにも現れているらしい
イ「さ、さって、それじゃ始めますかッ」
幸「うん、そうだね」
 目録の中から、お目当ての神様を選び出す幸四郎
幸「現在の奉納点から、ええっと、木曽ノ春菜さまか、陽炎ノ由良さまが丁度良いのかな」
 木曽ノ春菜は土の神であり、奉納点は1918点
 対する陽炎ノ由良は火を司る神様で、奉納点は2030点だ
イ「そうですねェ、幸四郎さまのお子様は次期当主なんですから、慎重に決めませんとネェ」
幸「でもやっぱり、当主たるもの積極的で勇猛果敢な方が良いよねー」
 カラカラと笑う幸四郎
 母親が水神(みどろ御前)だというのに竹を割ったような性格の幸四郎を見ると、大事なのは遺伝より育った環境という気がするイツ花だった
イ「それじゃあ、陽炎ノ由良さまでよろしいですネ?」
幸「うん、よろしく!」
 
 陽炎ノ由良「あーら、良い男ネェ
 
 
 後に陽炎ノ由良二つ扇ノ前に語ったところによると、
 なぜだか壬生川家二代目当主は女性の扱いが妙に手馴れていて、
 壬生川家遊び人説が流れることになるのだが……それはまた別のお話
by RuLushi | 2005-07-29 01:11
1019年 10月

の「なっちゃん、そんなそんな!」
巻「夏海おばしゃんは、巻絵をかばって……」
臥「く、どうして、どうして目を覚まさないんだよ夏海!」
佐「夏海お母さん……? どうしたの、ねえ……」



 ……幸四郎はゆっくりと目を覚ました
 紺色の着物に着替えて、冷たくなってきた井戸水で顔を洗い、居間を訪れる
 西方より伝来した兵法書をいつも広げていた夏海の姿は、そこには無い
 囲碁に興じる夏海の姿も、もう無い
 つい先日まで響いていた姉の声も、もう聞こえる事は無い
 幸四郎の元服の晴れ姿を、夏海は見ることは出来なかったのだ

幸「大江山への出陣は、12月にしようと思います!
 玄輝の間もとい、会議室に集まる壬生川御三方、幸四郎、臥蛇丸、のの香だ
臥「再来月か、でも一体どうして」
幸「今月出陣して奉納点を稼ぎ、そうして来月僕が交神の儀を行います」
 現在の奉納点は1600、このままでは中途半端な位の神様としか交えない、幸四郎はそう判断したのだ
臥「ふむ……なるほど、それもひとつの手かもしれない」
幸「もし僕たち大江山討伐隊が帰らなかったら、その時はそのコを次期当主にします」
 皆の前でさらっと次期当主を宣言する幸四郎
の「分かった、さーちゃんにも、そう言っておくね」
 夏海が亡くなって、のの香の語尾から幼さが失われた
幸「そして、大江山討伐隊の参加者は……僕、巻絵、佐和ちゃん、それにのの香お姉ちゃん、お願いします」
の「うん、覚悟は出来ているよ」
 しっかりと頷く
 一族の仇を、夏海の仇を討つために
臥「俺は……置いてけぼり、なのか」
 臥蛇丸は思わずつぶやいた
 生まれた頃から続いていた役割、のような気もした
幸「お兄ちゃんは、もし僕が戻らなかった場合……どうか、僕の子供を、よろしくお願いします」
臥「酷いなw」
 たまらず苦笑する
臥「自分の娘と兄弟たちを死地へ行かせて、その上で俺は屋敷で赤子を抱いていろというのか」
幸「ごめんなさい……!」
臥「佐和ちゃんじゃなくて、俺じゃダメなのか? あるいは、巻絵の代わりに俺とか……」
 臥蛇丸は食い下がる
幸「あの二人は、来年の大江山があるかもしれないんです、そのために、見てもらうのも悪くないと思うんです」
臥「来年の、大江山……のの香の代わりに俺でも、いや、それはダメか、術でも武芸でものの香にはもう俺は勝てないか……」
 かぶりを振る
の「お兄ちゃん……」
臥「もしかしたら今月が、俺にとって最後の出陣になるかもしれないんだな」
 臥蛇丸はそうして、外を眺めた
臥「巻絵に遺してやらなきゃいけないな、死ぬ前に」
 臥蛇丸の父、玄輝は幸四郎と共に戦場を駆け巡ることはできなかった
 夏海もまた佐和に何も遺すことができなかった、それが彼女にとって心残りだっただろう
臥「同じ想いでも、悔いを遺すわけには、いかないものな」
 
<出陣>
 
の「それじゃ行ってらっしゃーい」
 土間で手を振るのの香
巻「のの香おばしゃん、一緒に行かないの?」
の「うん、わたしは佐和の指導をしなきゃいけないの」
 今月出陣できない佐和は、来月は交神の儀で潰れてしまうことから、大江山が初陣ということになる
の「初陣の際に、泉源氏くらいは覚えておかないとね」
 そう言って、佐和の髪を指で梳く
 ニャフ、と奇声を発する幼い佐和
臥「3人での出陣か」
 そのうちのひとりは、まだ幼く、前回もほとんど戦えていない巻絵だ
 雰囲気を察して、当主が声を張り上げる
幸「じゃあ、僕が二人分頑張りますって!
臥「不安だが、もうお前も元服したわけだしな……w」
 口ではそういったものの、何だか幸四郎の背中が頼もしくなったように思える
幸「よーしそれじゃー」
 いつもは夏海がしていた儀式を、幸四郎もまた繰り返す
幸「とつげきぃぃぃ!

<再び相翼院>

臥「のの香がいたら、絶対に来たがらなかっただろうなぁ」
 今月は相翼院の討伐が奨励されている期間だ
 たくさんの妖怪を狩れば、それに応じた銭金が支払われる
 京の都に資財を投げ打っている壬生川家は、いつだってお金がないのだ、強い武具を購入するために、チャンスは活かさねば
 川から奇襲してくる物の怪を斬り捨て、臥蛇丸が先導する
 その後ろを、おっかなびっくり着いていく巻絵だ
巻「お父しゃん……(´・ω・`)」
臥「戦場は怖いか?」
巻「うん、すごく、怖いでしゅ(´・ω・`)」
 父の玄輝も夏海も、二代目当主の幸四郎も、戦場所を怖いと言ったことはなかった
 妖怪と戦うのも、定めと受け入れていたのだった
臥「でも、一家にひとりくらい、そんな役目の奴が居るべきだよな……w」
 幼い頃から、無茶な父や妹に囲まれて暮らしていた臥蛇丸の役目だったのだ
臥「おまえは、幸四郎や佐和が無理をしたら、止めるんだよ」
巻「は、はぃ……」
臥「それはおまえにしか出来ない、立派なお務めだからね」
巻「戦場は怖いでしゅけど、それなら、出来るかも、しましぇん……(`・ω・´)」
 巻絵は優しい子だ、大事に育てたかいがあった
臥「俺がしたように、巻絵は治癒の術を大切にするんだよ」
巻「はぃ(`・ω・´)」
 巻絵の頭を撫でる臥蛇丸
臥「みんなにおっかなビックリ着いていって、暴れる子をなだめて、張り切る子に癒やしの術を唱えて……みんなを頼んだよ、巻絵」
巻「お父しゃん……」
 遠くで幸四郎が叫んでいた
幸「鬼が何だか変な書物を落としたよーーー!」
 臥蛇丸は巻絵の手を引かずに、幸四郎に駆け寄っていった
 巻絵はその後ろから、ひょこひょこと、くっ付いていくのであった
by RuLushi | 2005-07-28 00:31
1019年 9月

 まだ先月の傷も癒えないまま幸四郎は、庭で木刀を振るっていた
幸「……」
 井の中の蛙と思い知らされるには、十分過ぎた敗北だった
 幸四郎は今や7ヶ月、来月の元服を傷ついたまま迎えることになる
幸「(……僕は、壬生川家、二代目当主なんだから!」
 前回の選考試合が終わって、幸四郎は夏海とのの香に猛烈に怒られた
 負けて傷を負うということは、それだけで人生の数割を棒に振ることになるのだ
 当主が一ヶ月戦場に出られない事の意味は、酷く重かった
幸「僕は、うん、もう負けない……父さん!」
 大江山の門が開くまで、あと二ヶ月
 幸四郎は決戦に備え、その決意を固めていくのだった

<二人目の第三世代>
 
イ「お喜びください、根来ノ双角さまより、お子様を預かってきましたァー!」
 最近めっきり陰が薄くなったイツ花が、喜び勇んで登場する
の「わーぃ」
 のの香手を叩いて喜ぶ
イ「神秘的な瞳の、女のお子様です!」
 壬生川家はもしかして、女性が産まれやすい家系なのかもしれない

 のの香は、やってきた女の子に「佐和(サワ」と名づけて、弓使いの道を歩ませた
 
佐「はーぃ、佐和デスー!」
の「はーぃ、ママですよ~」
 ニコニコと佐和を抱くのの香
夏「……えー、ママ二号でーす」
 ぎこちない笑みを佐和に向けるのは、いつの間にか隣にいた夏海だ
佐「え、え、え、お母さんがふたり?
の「そうなの~」
 目を白黒させる佐和の髪は、のの香と同じ水色だが、その強気な瞳は、確かに夏海と同じ金色のモノだった
佐「何かトクした気分! でもまぎらわシイ!」
の「そっかぁ」
 顎に指を当てて、うーんと考える
の「じゃあ、パパ
夏「指差すなっw」
 のの香の頭にチョップする夏海
佐「ハーィ、お父さんー」
夏「呼ぶな佐和っw」
 こうして、一家は過去最高の六人家族となったのだった

<動けるのは、3人>

巻「今月から実戦部隊に入りました、よろしゅーお願いしますー(`・ω・´)」
 ほっほっほと笑う巻絵
夏「あらぁ、兄上に比べて、ずいぶん素直そうねぇ」
の「箱入り娘みたいねw」
 ふたりして、よしよしと巻絵の頭を撫でる
臥「く、どうしても、行くのか……!」
 その和やかな3人に近づく、全身傷だらけの男
夏「あらあら、前回の試合で大怪我をした兄上じゃありませんか」
 手を口元に当てて、いやらしく笑う
の「せっかく、なっちゃんに食べられないように、大切に育てたのにねぇ~」
 巻絵の頭を撫でながら、残念そうに言うのの香
臥「この……鬼、め……」
 行くなら俺を倒してから行け、と言わんばかりの臥蛇丸
 夏海はさすがに、この扱いは一体、と悩む
巻「でもお父しゃん、いっつも「あの人みたいに強くなれ」とか、言ってるじゃないですかぁー(´・ω・`)」
夏「へー」
の「ほー」
臥「いやそれは違う! 断じて違うぞ!」
 声をがなり上げて、むせる
 そこまで否定しなくても、と思う姉妹
夏「まぁでも、実際出陣できるのは、私とのの香と巻絵ちゃんの3人だけなんだから、兄上と幸四郎はお留守番ー」
の「さーちゃんのご教育、お願いしま~すw」
 佐和を一流訓練師の臥蛇丸に託す
臥「く……わ、わかった……」
 傍から見て心配になるくらい青ざめた表情の臥蛇丸
夏「そこまで心配なのね……w」
臥「着いていってやりたい……」
 このまま話していたら、何だか泣き出しそうだったので、さっさと出かける事にする
の「そういえば、こうちゃんは?」
 まだ戦えない年でも必ずお見送りにきていた、あの戦い大好きッコの姿が見えず、思わず気になる
臥「幸四郎なら、庭で一心不乱に稽古をしていたな」
夏「そう、まぁ悔しかったんでしょうね」
臥「最近顔つきが精悍になってきて、やっと当主に相応しい姿になってきたよ」
 臥蛇丸は、そこでやっと、本日初の笑みを見せた
夏「それじゃ、行って来るわね」
の「さーちゃんのこと、よろしくぅ~」
巻「お父しゃん、いってきます~(`・ω・´)」
臥「生きて帰ってこいよぉぉぉおぉぉぉ
 風車のように見境なく手を振る臥蛇丸に、やれやれとため息をつく姉妹であった

<相翼院>

巻「初めての戦場なんで、どきどきします~……(´・ω・`)」
 薙刀を持って、初々しい反応をする巻絵
夏「誰だって、最初の戦場はそんなもんよw」
の「(なっちゃんは最初から堂々としていた気がするけど」
 人知れず思った
巻「でも~、夏海おばしゃんは、昔っから強かったってお父しゃんが(`・ω・´)」
夏「お、おばさん……」
 夏海は急にガクッと膝をついた
巻「え、ど、どうしたんでしゅかっ(´・ω・`)」
夏「い、いえ、何でもないのよ……そうよね、もう1才だものね……」 
の「あはは~w」
 どことなく年を取って見える夏海の隣で、壬生川家に来てから一貫して性格が変わらないのの香が笑う
夏「もぅ、良いからさっさと行くわよ!w」
 そうして、奥まで進み、天女の小宮に足を踏み入れる
の「もうこんなとこまでやるんだぁ」
夏「だって、尻子玉大将じゃ、相手にならないんだもの」
 大将の夏海が、燃え髪大将に斬りかかる
 巻絵も何とか奮起して、そんな夏海のあとを着いて回る
夏「うくっ、」
 燃え髪大将の放った渾身の花乱火の術が、夏海の体力の五割を奪う
の「なっちゃん!」
 白波の術の併せを結んでいるのの香は、泉源氏で援護することができない
 巻絵はそもそも泉源氏を覚えていない
夏「ま、大丈夫よコレくらい、体力が黄色になっても、もう一発来なけりゃ――」
 夏海が見たのは、再び術の詠唱に入っている燃え髪大将の、凄惨な表情だった
 











イ「当主さま、出撃隊が帰還されました…」
幸「あれ、まだ9月の中頃じゃない?」
イ「それが、あの、夏海さまが…」
幸「え、夏海お姉ちゃんが!?」

 のの香が血相を変え、巻絵が泣きじゃくっていた
 臥蛇丸とイツ花が、全身の大火傷を治療したが、

 その命のともし火を復活させることは、ついに叶わなかった
 


 壬生川 夏海 1才0ヶ月
    「みんな、何を集まっているの…? 出陣の準備は、できたの…? ホラ、早く……!」

 のの香が夏海の手を握って、首を振った

 1才0ヶ月の生涯、8度の戦場に赴いた夏海の、最期だった
 
by RuLushi | 2005-07-27 01:41
1019年 8月

<初めての交神の儀を終えて>

夏「お疲れさん、のの香」
の「あ、うん、ありがとうなっちゃん」
 布団に横になっていたのの香の元に、見舞いに現れる夏海
夏「やーねぇもう、幸四郎と稽古してたらさ、3本に1本は取られるようになっちゃった、私も年かしらねぇ」
 大げさに首を回す夏海の様子に、のの香はくすくすと微笑む
夏「それで、交神の儀は巧くいったの?」
の「うん、あ、いや、あんまり巧くなかったかなぁ……でもうん、巧くいったよぉ~」
夏「前半のが気になるけれど、まぁいいとして、あれ、孕んでいないの?」
の「あ、うん、不思議だよねぇ」
夏「……深く考えない子なのね」
の「えへ」
夏「全然褒めてないから
 ため息をつく
の「あはは、でも、生まれてくる子は、のの香となっちゃんの子だからね」
 のの香は柔和に微笑む
夏「お母さんがふたり、か……臥蛇丸じゃないけど、大変そうねぇw」
 その臥蛇丸は、予想通り親バカエンジンフル稼働中
 箸の上げ下げまで注意して、残命中に、全ての知識と経験を叩き込みかねない勢いであった
の「うん、でもパパみたいに、のの香たちはたくさん子供を遺すのがお仕事じゃないもんね、それだけひとりひとりに構ってあげられるよw」
夏「そうね、父上は何かとお忙しい人だったから……」
 幼少の頃、と言っても数ヶ月前だが、父と遊んでもらった記憶は夏海には、囲碁を打ってもらったことくらいしかなかった
夏「でもまぁ何にせよ、元気そうだね」
の「うん、もう疲れも取れたし、パワフルだよ~」
夏「それなら良かった、都で面白い催しがあるんだけど――」


<御前試合>

幸「えっ、都で選考試合が!?
夏「うん、あるらしいの、だから幸四郎も腕を磨く良い機会かな、って――」
幸「いくいくいくいく、絶対行くっ!
夏「ちょ、そんなイヌみたいに引っ付いてこないのっw」
 夏海の腕にかぶりつく当主
幸「いやぁわくわくするなぁ、僕の刀がどこまで通用するかな!」
 ところ構わず刀を振り回す幸四郎に、うーんとこめかみを押さえる夏海
夏「力、有り余っているわね……w」
臥「まぁ正確に言うと、大江山に討伐に向かう隊を選考する、そんな試合らしいけどね」
 あら兄上、と夏海がつぶやく
幸「そうかぁ、僕らみたいなのがたくさん出てくるんだね!」
臥「幸四郎には楽しいかもしれないし、俺たちにも良い機会だろう」
夏「ええ、八月しか開催されていないっていうし、討伐よりも価値があるかもね」
幸「燃えてきたあああああ、僕、一足先に行っているね!
臥「ちょ、待ちなさい幸四郎っw」
夏「ホント、元気ねぇ……w」
臥「いや元気ねぇ、じゃなくて、おーーいっ
 夏海は幸四郎を追って駆け出した臥蛇丸に、いってらっしゃーいと手を振る
 それから遅れてやってきたのの香と一緒に、巻絵をイツ花に任せて、のんびりと後を追いかけるのであった

<出場>

 「正々堂々の悔いなき戦いを出場者全員に希望するぞよ」
 都には、京の町の全土どころか地方からも出張してきたと思われる、さまざまな格好をした武士たちが勢ぞろいしていた
幸「うわー、すっごいすっごい!
 会場に到着して、目を輝かせてはしゃぐ幸四郎
臥「……でも、思ったよりは人数が少ないな?」
夏「出場者を選抜しているとか? さすがにごろつきみたいなのは出れないでしょうし」
臥「それにしても、俺たちを合わせて16組とは……存命している猛き者は、もしかしたら相当少ないかもしれん」
夏「そうかもねぇ、あ、勝ち進んだら賞金と奉納点がもらえるんだ」
臥「なるほど、討伐よりも割が良いかもしれんな、毎年8月は予定を空けるように、幸四郎に言っておこうか」
 その幸四郎はと、首をきょろきょろ振るが、近くにはいない
臥「幸四郎……?」
 夏海が頭を抱えながら指差す、その方向には、
幸「何その木槌、すっごいすっごい!
 他の出場者の持っている武具に見とれて、大興奮している壬生川家二代目当主の姿があった
夏「何ていうか……」
臥「無邪気、だな……w」
 田舎者とは言わないよう、思いとどまる
の「ふたりとも~、みんなの分買ってきたよ~」
 ニコニコとやってくるのの香
夏「のの香、あんたはどこに、それは?」
の「お土産屋で売ってた、選考試合団子ぉ」
 手提げに下げて、そのうちの一本を食べながら微笑む
の「うわ美味しいっ、そうだイツ花さんにもお土産買ってきてあげなきゃっ」
 ぱたぱたと、再びお土産屋さんに戻るのの香
 先行きが非常に不安な夏海と臥蛇丸であった


 「ではこれより夏の朱点童子公式討伐隊選考試合第五回を開催する!」
 組み合わせが発表され、すぐに壬生川家の試合が開始された
 「三十三間会の試合を執り行う! 両者参られい!」

 初戦の相手は三十三間会、弓使いが3人の徒党だ

幸「よーし、僕頑張る!
 刀を構えたその姿に、何か、炎のような気迫が見え隠れする
 相手は武人や防人で、大将をひたすらに強化する作戦のようであったが、
 壬生川家剣士ふたりの鋭い剣技の前では、その自慢の援護の術も、形無しのようで
 前半を押し切った壬生川一家が、判定勝ちという結果となった

 調子に乗って、続く二回戦
 その相手は本願院選抜、一撃の威力が極端に高く、防御も侮れない壊し屋3人の僧兵団だ
夏「ああいう連中には術が一番よ、防人後、併せから入って六手で詰むわよー」
 大将である幸四郎に、防御力上昇の術をかける夏海
 それでも皆の体力は削り取られる、短期決戦はこの場合最上の手だろう
臥「併せって、一体何の術を……」
の「それじゃのの香いきま~す」
 4人の中でもっとも術を得意とするのの香が、土台となって術を紡ぐ
の「二つ扇!」
 思わず臥蛇丸が、崩れかける
幸「はい、二つ扇!」
 2人併せで、威力三倍
夏「乗っかるわよー、二つ扇!」
 3人併せで、威力五倍
臥「ふ、二つ、扇!」
 頭の中に何かの光景が思い浮かぶが、4人併せで威力は七倍
の「ちょいや~」
 火炎の術を完成させたのの香が、そのまま本願院選抜衆を焼き尽くす
本A「ギャー」
本B「く、苦しいー」
本C「もうだめだー、ひー」
 台本通りのようなやられ役のセリフを発しながら、ばたりばたりと倒れる僧兵たち
 こうして壬生川一家は、二回戦も突破したわけだったが

 三回戦の京阪傭兵組合という徒党に、
 そりゃもうボッコボコに、グウの音も出ないほどにやられる

 戦闘不能に追い込まれたのは、臥蛇丸と幸四郎
 ふたりは回復力を信じられながら、翌月を迎えるのであった……
by RuLushi | 2005-07-26 00:29
1019年 7月

<第三世代>

イ「臥蛇丸さまー、二つ扇ノ前の下より新しいご家族が――きゃっ」
 風よりも早く駆け抜けてきた臥蛇丸が、イツ花の前に滑り込む
臥「そ、それで、子供は!? 手はあるか、耳は、目はちゃんとついているか!?」
イ「は、はい、元気な女の子ですよw」
臥「そ、そうか……なっ、女の子、女の子か!?
 安心したのもつかの間、みるみるうちに顔色が青ざめる
イ「ど、どうなさいましたか……?」
 女の子、夏海とのの香に似てしまうようなら、大変なことになる……!
 しかし、いやいやと思い直す
 あのふたりも今や10ヶ月、昔の辛らつな性格もだいぶ丸くなってきた頃だ、たぶん
 それにもしもの場合は、反面教師だと言いくるめれば良い
臥「よ、よし……それにして、お子は?」
イ「はい、いらっしゃってますよ」
 
 名前を考えるのに臥蛇丸が数時間かかったというのは、置いといて……
 委任で決まった名前は「巻絵(マキエ」

巻「初めましてー、お父しゃんー(`・ω・´)」
 まん丸の顔に、にっこりと笑ったおめめ
 父に似た緑色の髪を、両耳の上でお団子にしている
臥「お、おお……巻絵、か」
 何とも縁起の良さそうな顔をしている
巻「はい、これからお世話になりますー(`・ω・´)」
臥「うむ、うむ……宜しく頼むよ、巻絵……」
 その小さな身体をぎゅっと抱きしめる臥蛇丸
 ふたりを微笑ましく見てから、イツ花は次の用事に取り掛かることにした
 
 玄輝の息子・臥蛇丸の薙刀術を受け継ぐ第三世代、その登場であった
 
 
イ「さて、と」
 巫女姿に着替えたイツ花が、その娘の前に現れる
イ「それでは、交神の儀を始めましょうネ」

の「はい、よろしくお願いしますぅ~」
 ぺこりと頭を下げるのは、白無垢に着替えたのの香だった
イ「あれ、先ほどまで夏海さまがいらっしゃいましたよね?」
の「あ、ええ、でもなっちゃん、悪態つきながら出てっちゃいましたw」
イ「あ、悪態ですか……」
の「ひとりヤるのもふたりヤるのも一緒でしょーが神様よぉ、とか何とか」
 声真似をしつつ再現するのの香
イ「あ、あはは、そういうわけにもいかないみたいですネェ」
 何て罰当たりな、と冷や汗を流すイツ花
イ「まッ、それじゃ始めちゃいましょっか、お相手は選びましたか?」
の「はい、このぉ、根来ノ双角って神様でお願いします~」
 何だか強そう、との理由で決めたのの香だった
イ「はーぃ、それでは参りますッ」

 根来ノ双角「拙者、未熟者ゆえ、不手際をご容赦あれ……!
 
 もしこの場に夏海がいたら、未熟者と不手際の部分をしつこく問い詰めていたに違いない、とのの香はこっそり思った
 
 
by RuLushi | 2005-07-24 00:16
1019年 6月

 あれほど栄華に咲き誇っていた藤の花も散り、
 すっかり青々とした葉が茂る庭

 夏海とのの香は、縁側に座って、空を眺めていた
夏「ねぇ、のの香ぁ」
の「はーぃー?」
 そのいつもの間延びした声に、夏海は心地よさそうに目を閉じる
夏「藤の花、散っちゃったね」
の「うん、ゆっくり見る暇も、なかったね」
夏「もう、見れないよね」
の「そうだね、もう、見れないね」
夏「二度と、見れないんだよね……」
 のの香は膝元で寝転がる夏海の頭を、優しく撫でる
の「なっちゃんは、藤の花、可哀想だと思う?」
夏「え?」
の「藤の花、誰にも見られなくて、のの香たちの寿命よりもっと短い時で枯れちゃったけれど、可哀想かなぁ?」
夏「……どう、かな、藤の花の気持ちなんて考えたことないや」
の「のの香はなっちゃんと違って、お家のこととか、難しいこと良く分からないけれど……っていうか、分からないからそんなことばっかり考えているんだけどぅw」
夏「……うん」
 夏海は縁側で猫のように横になりながら、のの香の言葉の続きを待つ
の「藤の花は、たぶん、自分の事を誇りに思っていたよ」
夏「誇り、に?」
の「うん、艶やかに咲き誇って、受け継がれる役割を満足に果たした自分を、前年の花とか前々年の花のやってきたことを、変わらず守り抜いて……」
夏「誇りに、ねぇ……」
の「だからのの香は、藤の花を可哀想だなんて全然思わないんだ、むしろ逆に羨ましいくらいw」
 立派な樹木を笑顔で見つめるのの香
の「だから、うん、なっちゃん」
夏「んー」
の「なっちゃんのこと、のの香尊敬しているし、大好きだし、羨ましいんだ」
夏「私が何かしたかしらねぇ……w」
 照れ隠しに、のの香のわき腹やらそこらを突っつきまわす夏海
の「ちょ、やぁ、やめてっw」
夏「お花とお話出来たらよかったのにね、のの香!」
の「あ~それいいなぁ、イツ花さんだったら出来たかなぁ~」
夏「羨ましいんですのの香、藤の花さんのこと、って言ったら「じゃあテメェが花になってみっかゴルァ?」って言われたり」
の「藤の花さん黒いよ!w」
夏「血の花咲かすカァ?とか」
の「何でチンピラみたいになってるの!?w」
夏「私に聞かれても」
 夏海はよいしょと立ち上がって、伸びをする
夏「さ、そろそろ出陣の準備しましょうかー」
の「ん、一花咲かせますかぁ~」
 のの香も立ち上がって、それから夏海の手を取って握手する
夏「何よ?」
の「なっちゃんの血はのの香の血、のの香の血はなっちゃんの血、だよぉ?」
夏「はいはい、分かってますってw」
 
 遠くで臥蛇丸の声が響いた
夏「さ、ホラ、出陣行きましょー」
の「は~い」
 顔も性格もまったく似てない双子は、それぞれの支度へと急いで駆けていった



<出陣>

臥「さ、行くぞー皆ー」
夏「おーおー、さすがパパさん、気合入っているねぇ」
の「子供が出来ると違うんだねぇ~」
夏「いやいやきっとアレは、**を卒業したからよ」
の「は、オトナへの階段なんだっw」
臥「そこの妹うるさい!w
 顔を真っ赤にして怒る臥蛇丸
幸「オトナへの階段?」
臥「幸四郎も、そういうのをピンポイントで尋ねるんじゃないよw」
夏「オトナへの階段ってのはね……ごにょごにょ……」
臥「まだ教えなくて良いからーーーー!w
 怒鳴った後に、からかわれるネタがこれで一個増えた、とどっと疲れが増すのを感じる臥蛇丸であった
 
<白骨城>

 夏の三ヶ月間だけ姿を現すと言われる城
 大江山で朱点童子に敗れ、成仏できないお侍さんの魂が行き場もなく集まっているとか……

夏「しかも、その日屋敷には誰もいなかったハズなのに……」
の「ごくっ…」
幸「((;゚Д゚)ガクガクブルブル 」
夏「聞こえてきた音は、死んだはずのお婆さんが包丁を研ぐ、しゃーしゃー……って音だったの、そうして、こちらに気づいたお婆さんは……」
の「ひっ」
幸「あぅぅぅ」
夏「ひとりじゃ寂しくて、戻ってきたんだよお前のもみ上げをよこせェェェ!!」
の「いやあああああああああ」
幸「ひいいいいいいいいいい」

臥「うるせぇっ!w
 すぱこーんと夏海の後頭部を叩く臥蛇丸
臥「それ白骨城の伝説と、全然関係ないし!」
夏「……は、兄上に叩かれた」
の「……なっちゃんの初体験」
 頬を赤らめるのの香
臥「無理矢理そっちに話を進めるんじゃないw」
幸「何だか臥蛇お兄ちゃん、ちょっぴり力強くなったね!」
臥「そう、かな?」
幸「うん、何だか女の人に対して免疫がついてる感じがする!」
 無邪気で的確な批評に、思わず黙り込む臥蛇丸
の「よ~し、それじゃ突撃ぃ~にゃ~」
 というわけで、ショックを受けている夏海に代わって、のの香が人差し指を元気良く空に向かって突き出すのであった

 中に入ってみると、意外にもというわけではないが、
 前半は低級な妖怪が辺りをうろついていた
 
臥「何だ、白骨城の妖気に集まってきた物の怪どもか」
幸「へへーん、一網打尽ー」
 実際に幸四郎の腕はすでに3人に肉薄しており、油断さえしなければもう誰の助けも要らないだろう
 そんな折、のの香が目ざとく妖怪の落とした術を拾う
の「あ~術ぅ~」
夏「お、でかしたのの香、えっとこれは……二つ扇の術?」
 ボッと臥蛇丸の顔が赤くなる
 ちなみに術法については、開発者の名前がつけられるそうで、当然この術を開発したのは二つ扇ノ前
臥「な、なななんだって?」
幸「炎の術だよねー?」
夏「妖怪だけじゃなくて、誰かの顔色も赤くすることが出来る術ねーw」
 にやにやと笑う夏海
臥「な、ななななんで夏海が僕の――」
の「お兄ちゃん、口調が僕に戻ってるぅ~w」
臥「こ、この……w」
夏「二つ扇ねぇ、よぅし、帰ったらこの術何が何でも覚えようっと」
臥「な、なんだって?」
夏「そうして戦闘になったら、二つ扇ーっ、って何度も叫んでやろうっと」
 発想が小学生レベルの夏海
臥「ちょ、ちょ、それは、夏海っw」
 それに見事におちょくられる臥蛇丸
の「わー面白そう~w」
夏「イッけぇー、二つ扇ーっ!」
臥「おいっ!w」
 先ほど叩かれた仕返しか、妖しく繰り返す夏海
幸「二つ扇ー!」
の「二つ扇~」
臥「みんな……w」
夏「二つ扇ー、好きだー!」
臥「おいいいいいいいいいい!w」
夏「二つ扇、僕は、キミじゃなきゃダメなんだ……!
臥「いい加減にしないか夏海!」
の「え、でも、臥蛇丸さま、そんな……私たちは身分違いの恋……
夏「良いんだ、人間と神の差だなんて、僕は死ぬまでキミを愛し抜く……!
臥「お前らああああああああああああああ!
 
 そうこうしているうちに、一同は何と白骨城を登りきってしまった
 白骨城の上部である六階に近づくと、途端に禍々しい気配に襲われる
 
幸「みんな、これって!」
 さっきまで騒いでいたはずの3人も、真顔で頷く
の「似た感じを、九重楼で味わったよね」
臥「ああ、間違いない……これは、鬼だ」
夏「どうするの、引き返すなら今のうちだけど、って」
 言うよりも早く、臥蛇丸は薙刀を構えていた
臥「俺たちは、足踏みしている時間はない、んだよね?」
夏「……勿論!」
幸「鬼、成敗する!」
の「無事帰って、二つ扇習得なきゃ!」

 壬生川家一同は、白骨城内部へと突撃する
 その途端、巨大な鬼――恨み足が襲い掛かってきた!

 力をためる恨み足
 対して武人で当主幸四郎の力を高める一同
 力をためた恨み足の一撃が、幸四郎の体力を六割削り取る!
幸「ひええ」
 一瞬にして体力が黄色になる幸四郎
の「泉源氏~!」
臥「泉源氏!」
 臥蛇丸とのの香が、剣士ふたりを援護するという形が続く
 しぶとく抗戦を続ける恨み足だったが、ついには年長者3人の赤玉の併せ術により、崩れ去る!
 奉納点を700も獲得し、一同は喜びに手を合わせた
夏「何よ、たいしたことないじゃないっ」
幸「僕たち強いよね!」
臥「いや顔色が悪いから、幸四郎……」
 健康度が減っている幸四郎を気遣う兄
の「うんでも、傷は深くないみたいだね~」
 その場の応急手当で、何とか動き回れるようにはなったようだ

 一家はそのまま白骨城の探索を続けて、たくさんの宝と二つ扇の術書を持って、凱旋したのであった
by RuLushi | 2005-07-23 01:04
1019年 5月

 屋敷の庭で、幸四郎がたったひとりで素振りをしていた
イ「あれれ、当主さまおひとりですか? 他のみなさんは?」
 イツ花が歩み寄ると、幸四郎は素振りをやめて額の汗を手でぬぐう
幸「分かんない! みんな難しい話があるから、僕はひとりで訓練でもしてなさい、って夏海お姉ちゃんがー」
 ないがしろにされて、ちょこっとぷくぅと拗ねる
 幼い当主を微笑ましく見守るイツ花
イ「あれぇ、当主さま、その訓練刀は前当主さまの?」
幸「あ、うん、僕のもうちっちゃくなっちゃったからw」
 手に持っている刀は大きくて、幸四郎の手には不釣合いの代物だったが、幸四郎はそれを、ブンブンと振り回してみせる
 大きな手のひらだ、それは基礎を固めた訓練により培ったものだった
イ「これはこれは、将来有望な剣士さんですねェw」
 その元気な様子に、目を細めるイツ花
イ「それにしても残念ですねェ……せっかくみなさんで、夏海さまとのの香さま元服のお祝いに、お花見でもしようと思ってたのに」
 お庭の木々を見上げて口を尖らす
 そこには雨のように、満開の藤の花が咲き誇っていた
 

 一方その三人は、空き部屋となった元玄輝の私室で、難しそうに顔を見合わせていた
夏「それじゃ、第一回壬生川家、家族会議を始めます!」
 外の「元当主の間」と書かれた板は、上から筆で「会議の間」と乱暴に殴り書きされていた
臥「当主抜きで開催するなんて、なんて大胆な……」
夏「そっちのほうが、話が早いからです
の「(どうしてなっちゃん、ですます口調なんだろう」
夏「じゃあ本日の議題だけど……何か、のの香はともかく、兄上は気づいてなさそうね」
臥「? 一体何が?」
 すっかり傷も癒えた臥蛇丸が、オウム返しに尋ねる
夏「ようやく、三人とも交神の儀が出来る年になったわけだから、奉納点の使い道よ」
臥「あー、そうか、俺たちも子供を作らなきゃいけない代になったのか」
 早いもんだと思うが当たり前だ、まだ臥蛇丸は生後9ヶ月なのだから
の「今、2000とちょっとだよねあるの」
 ぺらぺらと台帳をめくるのの香
夏「ええ、ちなみに幸四郎の母上のみどろ御前さまは、692点よ」
臥「じゃあすごい、幸四郎並の子供を、三人も産めるのか!」
 幸四郎の剣術は、3ヶ月にして、亡くなった父様に迫るか、それと同等の実力をつけていた
 もう数ヶ月すれば、夏海とて、追い抜かされるだろう
夏「ええ、そしてこれは決まりごとなのだけど、朱点童子が住む大江山の門は、11月と12月しか開かれない」
 現在5月だから、最低でもあと6ヶ月後という計算になる
臥「子供が戦場に出られるようになるまで2ヶ月、つまり、この4ヶ月の間に、3人の子を為さなければならない、と」
夏「そういうことね」
 でも、とのの香が声を上げる
の「奉納点を集めた子をふたり産んで、わたしたちの誰かが大江山に行くというのはどぅ?」
 6ヶ月後なら、臥蛇丸でも1才3ヶ月、戦えない年ではない
夏「それが最上策なのは分かるけれど、」
 夏海は思わず声を上げた
夏「えー、でもそれだと……うー」
の「……ひとりが、子孫を残せない?」
 のの香がうつむく夏海の顔を覗き込んで、尋ねる
 小さくうなずく夏海
 6ヶ月も経てば、幸四郎が成人する
 道義からも効率からおいても、その時点で3人の誰かが交神するのは無駄なのだ
臥「そっかぁ夏海……3人交神するより、2人に良い血を集中させた方が、朱点童子を倒すのは早くなるんだね」
 臥蛇丸も、のの香の意見に同意する
夏「嫌ッ!」
 思わず刀を抜こうとする夏海を、押しとどめるのの香
の「な、なっちゃん、どうどう……w」
夏「嫌なの、私は、子を遺したい! 当主になれなかった以上、それだけは叶えたいもん……」
 幸四郎と同じ「剣士」という職業の以上、大江山の戦いに夏海が選ばれることはないだろう
臥「よし……分かった」
 臥蛇丸が重々しくうなずく
臥「誰が外れるか、くじ引きで決めよう」
の「くじ引き!?w
 思わず叫んだのの香だったが、
夏「……良いわよ」
の「良いんだ!w
 左右へと突っ込む
臥「俺たちの悲願は、朱点童子を仕留める事だ。そのために、私情を挟むわけにはいかない。そうだろう?」
夏「……そうよ、その通りよ、当たり前じゃないの!」
 弱みを見せてしまった悔しさか、子を遺せないかもしれない恐怖か、目を赤くしてもしっかりと頷く夏海
 先ほどの気弱な表情はもうそこにはなく、瞳には確かな決意が宿っていた
夏「のの香も、それでいいのね?」
の「うん、わたしは……天命を、信じているから」
 のの香もまた、全てを受け入れた天女のような表情で、穏やかに微笑む
臥「じゃ、くじ引きを今から作るから、当たった人は今月に交神の儀をして、1ヶ月の出陣後、再び交神の儀だ」
夏「ええ、良いわ」
の「誰が外れても、恨みっこなしだからねぇ~w」
夏「のの香こそ、当たったけど奉納点ギリギリの神様がハニワしかいなくて、やり直しぃ~とか叫ばないでよw」
の「ひっど~ぃw」
 玄輝の部屋には、再び藤の花のような涼やかな風が吹いていた

  くじ引きが終わり……

 

イ「それでは、交神の儀を始めてよろしいですかァ?」

臥「あ、ああ、よろしく頼む」
 多少緊張した面持ちの臥蛇丸が、儀式の間に正座していた
イ「やだァ、臥蛇丸さま、リラックスリラックスですよッ!」
臥「そ、そうは言っても……なにぶん、こういうのは……w」
 儀式の間の隣の部屋から、ちらりと敷かれた布団が見える
 臥蛇丸の思考はパニック寸前だ
臥「お、お相手の人は、どんな方かな、ハ、ハハ」
イ「……臥蛇丸さま、笑い声が乾いてますw」
 臥蛇丸は神様一覧の巻物も見ず、全てイツ花に「お任せコース」
イ「はぁ、それではですネェ、二つ扇ノ前さまなんていかがでしょ?」
臥「ど、どどどんな方だ!?」
 ウマのように襲い掛かって、イツ花の手から巻物を奪い取る臥蛇丸
イ「きゃっ、も、もう臥蛇丸さまッw」
臥「ふ、ふむ……俺の母様の水母ノくららさまとはまた違った、なんていうか、こう……夏海みたいな顔の神様だな」
イ「火の神様ですからネェ」
臥「ふ、ふむ……い、いいだろう、この方を、頼む……」
イ「何だか生まれたての子鹿みたいな声になってますけど、大丈夫ですかァ?」
臥「だ、だいじょうぶ、だ……少し、緊張しているだけだ」
 本当に少しかな、と思いながらもイツ花は言われた通りに神様を呼び出すことにした
イ「それじゃ、いきますヨォ」
臥「あ、ああ……」

 二つ扇ノ前「まッ、気軽にいきましょ……♪

 こうして、臥蛇丸初めてのドキドキ交神の儀は、無事終了したのだった
by RuLushi | 2005-07-22 00:49
1019年 4月
庭の桜も咲き誇る4月
 臥蛇丸の元服の儀が、厳かに行われた

イ「これで臥蛇丸さまも、立派に成人なされましたネ!」
臥「はは、ありがとうございます」
 まだ全身に負った火傷や打ち身は癒えていないため、包帯だらけの儀式だ
 そういえば、と思い出す
臥「(父上が初めて鬼退治をなさった時と、俺は同い年になったんだな」
 その初めての戦場で、父上はご子女を亡くされたのだ
臥「(もし俺に子供がいて、そのコが自分の無鉄砲さにより失われたら……」
 きっと自分は立ち直れないだろう、と思う
 父様は強かった
 ともすれば滅入ってしまうようなこの境遇で、最期まで明るさを絶やさなかった
イ「これでやっと、臥蛇丸さまもお子を残せられますネ!
 不意をつかれて、思わず臥蛇丸はお神酒を噴き出した
臥「え!?w
 0才8ヵ月、それは交神の儀が可能になる年でもあった
 身近にあんな妹がふたりもいる臥蛇丸は、ウブだった

夏「おー」
の「お~」
 夏海とのの香は実戦部隊に入った幸四郎の、晴れ姿を見に、庭にやってきていた
幸「えへ」
夏「うん、なかなか様になっているじゃない、ねぇのの香?」
の「うんうん、こうちゃんカッコイイねぇ~w」
 幸四郎の頭をなでなでするのの香、されるがままの幸四郎ぬいぐるみ
 年の離れた弟ということで、目に入れても痛くないような可愛がりようだ
 さらに現当主で美少年、京の都で人気投票があったら、壬生川家では一位間違いないだろう
夏「そしたら、二代目当主の初陣と行きますかー(゚ー゚*)」
の「お~」
幸「うん! お姉ちゃんたちは、僕が守ってあげるからね!」
夏「うっわ、生意気w」
 幸四郎の伸びた金髪を引っ張りまわす
幸「いた、いたいたいいいいい
 本気で嫌がる幸四郎と慌てて止めに入るのの香、そこを臥蛇丸が通りがかる
臥「(当主をイジめる姉……」
 壬生川家はやっぱりダメかもしれない、と思う

<出陣>

夏「それじゃ、行くわよー!」
の「お~!」
幸「おー!」
 出かける三人と見送る一人
臥「どうか気をつけるんだよ、幸四郎」
夏「あれ、兄上は来ないの?」
臥「ああ、先月に受けた傷がまだ癒えていなくて、満足に薙刀も振れないんだ」
 包帯で巻かれた左腕は痛々しく、確かに動かせそうもない
 夏海はぼそっとつぶやく
夏「情けないこと……」
臥「思いっきり聞こえているから」
 さすがにばつが悪いのか、咳払いをして、
臥「それまで、しばらく町の復興作業に協力しようと思ってね」
の「あ~、それナイスだね~」
臥「ああ、商業部門を中心に、図面を引いてお手伝いしてこようと思っている」
夏「いつの間にそんな勉強を」
臥「俺たちには足踏みしている時間はないんだもの、だからね」
 恥ずかしいセリフをさらっと言う
夏「はいはい、そーですねー」
 夏海は手をぴらぴらと振りながらも、臥蛇丸が無事立ち直ったことに、まんざらではなさそうな表情をしていた

<鳥居千万宮>

夏「それじゃ、幸四郎のためにも、あんまり無茶はしないでおきましょうか」
の「うわ、なっちゃんがマトモだぁ」
夏「うわってなによ、うわって!w」
 のの香の耳を弄り倒す夏海
の「ちょ、や、悪かったからやめてっw」
 そんな二人のやり取りに緊張をほぐされたのか、幸四郎もほっと息をつく
幸「お姉ちゃんたちは凄いなぁ、やっぱり戦場慣れているんだね!」
 顔を見合わせる、夏海とのの香
夏「でもそういえば、この屋敷に来てから、すっごいペースで戦っている気がする」
の「そういえば今月で、臥蛇お兄ちゃんの討伐回数を上回っちゃったにゃ」
 指折り数えるのの香
幸「すごいやお姉ちゃん! 僕も頑張らなきゃ!」
夏「あんまり頑張りすぎて、今頃屋敷にいる誰かさんみたいにならないようにねw」
 夏海とのの香はそんな若き剣士を、苦笑しながら見守っていた

 三人はそれから順調に鬼を狩り続け、意気揚々と凱旋したのであった
by RuLushi | 2005-07-21 01:21
1019年 3月

 皆の前で幸四郎は、第二代目当主を襲名した
「まだまだ未熟ですけど、僕、お父さんを越える立派な当主になります!」

 玄輝が亡くなって、数日ほど泣きじゃくって過ごした幸四郎も、
 その日にはもう屋敷に来た時のような、明るい笑顔を取り戻していた

臥「はぁ……」
 一方、
臥「お父様が亡くなって……いつの間にか最年長が僕か」
 もう自分のことを僕だなんて言わない方が良いのかもしれないな、とも思った
臥「そして、予定通り二代目当主は幸四郎……」
 雪も溶けてきたというのに、心は大雪山だ、遭難が相次ぎそうだ
夏「何ウジウジしているのよ!」
 襖を蹴り倒して入ってきたのは、玄輝が亡くなって以来人一倍凶暴になった妹だ
 倒れた襖が、臥蛇丸の頭を突き破って、何だか襖から生えた竹の子のようになる
臥「ちょ、何するんだいきなり夏海!」
夏「てぃ!
 鞘で臥蛇丸の頭を強打する
臥「――おぁぁあぁぁ
 転げまわる臥蛇丸の前で、夏海は偉そうに腕組みをする
夏「あのね、お父上が亡くなったから何よ、私たちには足踏みしている時間はないんだからね!?」
臥「うっく……そ、それは分かってるけれど、現当主があれじゃ、まだ何も出来ないじゃないか!」
 まだ幸四郎は生後1ヶ月、戦場に出れる年ではない
夏「じゃあ、私たち三人で戦いに出れば良いじゃない」
臥「三人で、か……」
 確かに夏海は玄輝の筋を継いで、良い剣士になった
 自分たちを今引っ張っていくのは、夏海のような積極さかもしれない
夏「ていうか、今すぐ行くわよ!?」
 積極的すぎ
臥「ちょ、ちょっと待ってくれよ、まだ、支度が……!」
 夏海は猫を捕まえるように、臥蛇丸の襟首を持ってずるずる引っ張る
夏「いい?」
 臥蛇丸の顔にぐいっと顔を近づける夏海
臥「な、なんだい……?」
夏「私はお父上の遺書で、皆の面倒を見るように頼まれているの」
臥「め、めんどうって……w」
 僕は1ヶ月年上なのに……、と思う
夏「のの香もめそめそして、アンタは腑抜けになって……、もう、父上が亡くなったくらいで何よ!」
 ぎっと歯を食いしばった顔に、うっすらと涙が見えた
臥「夏海……」
夏「さぁ、早く準備して、鬼退治に行くわよ!」
臥「あ、ああ、分かった」
 どうしてだか、素直に頷く臥蛇丸
 肩をいからせながら廊下を歩いていく夏海を、そのまま見送る
臥「そうだよな……」
 顔を叩く
臥「僕は……、俺は、皆の兄なんだからな」
 夏海の気持ちを無駄にしないためにも、臥蛇丸は出陣の支度を急ぐことにした

<出陣>

の「支度できましたぁ~」
夏「お、のの香、もう良いの?」
の「あ、うん、色々と……もう大丈夫w」
 力なく微笑む
夏「そっか、弓を乱して私に当てたりしないでよ」
 べし、とのの香の頭にチョップする
 うぅと額を押さえて後退するのの香
の「じゃあなるべくお兄ちゃんの方を向いて撃つことにするぅ」
夏「それならおっけ」
 何がおっけなんだ!、臥蛇丸は心で叫ぶ
 それよりも、ひとつだけ納得出来なかった
臥「あの、夏海」
夏「うんー?」
臥「どうして部隊の隊長が、夏海なんだ……?」
夏「え?w」
 素で聞き返す夏海
臥「いや、そんな意外そうな顔されても、だってここは普通は俺が……」
夏「お父上の遺言よ、遺言!
臥「そ、そうなのか……?」
夏「ええ、夏海が一番可愛かったから、夏海のしたいことをさせよ、って」
臥「(絶対ありえない」
 とは思うものの、あの父親だからもしかしたら、とも頭をよぎってしまう臥蛇丸だった
の「やっぱり、パパはなっちゃんを一番可愛いと思ってたのかぁ~w」
 すっごい素直に信じ込む
夏「フフン(゚ー゚*)」
臥「(何だか俺は、一生この妹には勝てない気がする……」
 臥蛇丸が遠い目をして、もたもたしていると、
 もう遠くにいって、こちらに手を振ってくる夏海
夏「はーやーくー(゚ー゚*)」
臥「……はいはいw」
 
夏「やっぱり、これ言わないと雰囲気出ないわよね」
臥「これ……?」
 息を吸って、駆け出す夏海
夏「壬生川家、突撃ぃぃぃぃぃぃぃいぃ(゚ー゚*)!
の「そんなところまで似せなくてもっw」
 父がつけていた壬生川家最凶ののぼりは、父親の亡骸と一緒に火葬して良かった、と臥蛇丸は思った
 
<相翼院>

 ひたすらに走り続けて、一気に院まで駆け抜ける三人
 天女の小宮に入るまで、合計で200近い体力を消費していた

夏「ぜぇ、ぜぇ……着いたわね……w」
臥「お父様のような無茶だな!w」
の「つ、疲れたぁ~……w」
 泉源氏の術で、とりあえず全員全回復する
夏「さ、本番はこっからよ!」
臥「お、おー!」
の「がんばろぉ~」
 
 相変わらず燃え髪大将の軍は強い強い
 一方的に健康度が(臥蛇丸だけ極度に)減ってゆく
 
 というわけで、一ヶ月がむしゃらに戦い抜き、
 一人大怪我をしたものの(臥蛇丸だけ健康度20)全員ご無事に戻る事ができた

臥「お父様の亡くなった翌月に、俺も逝くところだった……」
 看病をしてくれた妹たちは、手ぬぐいを冷やしながら、
夏「お父上も、寂しがっているのかもね」
の「臥蛇やーぃ、こっちこーぃ、なんて~w」
 生死の境をさまよった臥蛇丸としては、笑い事ではなかった
by RuLushi | 2005-07-20 00:54