ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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2006年 10月 26日 ( 1 )
1026年 4月第2編
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 名前はもう決めていたのだ
虚「“美月”良い名じゃろう」
 虚空は月見に笑いかけた
虚「おぬしの名をもろうてみた、悪くないと思わんか?」
月「な……さ、さすがに、それは恥ずかしいですよ……!?」
 虚空の胸倉を掴んで突っかかるかと思いきや、そっぽを向いて口を尖らせる月見、その程度で済むのは慣れてきた証拠なのかもしれない
虚「美月、おまえは白い肌じゃが、余の母ほたるによく似ておる、弓使いとして修行を積むが良い」
 太陽から生まれ落ちた月の子ははにかむと、「はい、どうぞよろしくおねがいします」と大きく頭を下げたのであった
 

 居間での団欒は、美月も加わってまだ少し続いた
左「どうも……俺は左京だ……」
美「あなたがおにいちゃんね! どんな人かずぅっと想像してたんだから!」
 美月は左京の元に駆け寄り、義理の兄の頬をむぎゅっと掴んだ
美「顔をよーく見させてね、よーく、よーく……」
左「……」
 顔をこねくり回して遊ぶ少女、されるがままの少年
美「変な顔ー、わはははーw」
 自分でタコ入道のような面構えにしておいて爆笑する、腹立つことこの上ない
烈「ぼ、ぼくは烈、よろしくね」
美「こちらこそ、よろしくおねがいしますっ」
 左京をぽいと捨て、飛び跳ねるように頭を下げた後、美月はにっこりと笑う
美「じゃあ烈くんはちょっと強そうだから、トクベツに、みつきお抱えのお侍さんにしてあげる! お喜びっ
烈「え、あ、う、嬉しいなーハハーw」
 胸を張る美月に、思わず棒読みの烈
竜「……さすが虚空と昼子の子ね、まるで女虚空」
虚「感心するなッ
月「でも、昼子さまのお子様にしては、ずいぶん、なんていうか、ファンキーな子ですね」
虚「ぐむ……そ、そうじゃな」
 眉根を寄せる月見に、先ほどの烈同様奇妙な声しか出ない虚空である
 こうして、一家は新たな家族、香家伝統の「弓使い」の美月を迎えたのであった


 竜子が部屋に戻ると、夫婦は子たちを連れて道場で稽古をつけることにした、烈も加わりたがっていたが、虚空が迷わず眠らせ、夕子に世話を押しつけてひたすらに汗を流した
 月見左京らの組み手が終わると、夕食前には本気カルタを楽しんだ、その名の通り無論一切両親が手を抜かないため、行った部屋の畳が何枚か駄目になり、不慮の事故により左京の左手の骨が砕けた――すぐに<円子>で治療されたが
 夕子が作ったいつもより何倍も豪勢な晩御飯を終えると、虚空は左京と、月見は美月を連れて風呂を楽しむこととなった、久しく姉とも湯を共にしていない月見は順番を待っている間いつになく嬉しそうで、それを見て不用意に「じゃあ今度は余と入るか月見」と風呂上りに発言した虚空が嫁の手によって浴槽に数分沈められていた


 その夜は、虚空と美月と月見、三人で並んで布団を敷いた
美「わーいわーい、かわのじかわのじー!」
 心から嬉しそうにはしゃぐ美月を見ると、ふたりの顔にも自然と笑みが浮かぶ
 ちなみに左京が居ないときはまたどこかで転がったまま寝ているのだろうが、それに関しては特に誰も気にしていなかった
虚「寝るぞ」
美「うん、みつきパパと寝るぅ」
 美月が潜ったまま転がって虚空の布団に入り込んでゆく
 月見が行灯の明かりを吹き消した時に気づいたが、美月の体はまるでほたるの燐光のように薄い光に包まれていた
月「ねえ美月、お母さんのところにおいでよう」
 娘を取られてか、はたまた娘に旦那を取られてか、月見が拗ねたようにつぶやく
虚「かか、美月は余が良いと言っておろうが」
美「うん、いくー」
 ごろごろと転がる美月、無言で背を向ける虚空
美「……あのね、これナイショよ、みつきってヒロインなのよ」
 美月は母親の胸元に抱きつきながら、嬉しそうにささやく
月「ヒロイン?」
 声に出さずに勝ったと言いながら、月見は娘を抱く
美「うん、上でみんなが言ってたの、みつきは特別な子だから、だからみんな優しくしてくれたのよ、昼子おばちゃんも、あなたはヒロインなのよ、って」
月「そっか、それは良かったのね」
 月見はまなじりを下げて美月の髪を撫でる
美「みつきもパパママに会っておもったんだよ、アイしあっているふたりの間に産まれたって、この家でみつきが初めてなんだってね、ふふふ」
月「う、うん……そっか、そういえば左京の頃はまだ結婚してなかったんでしたっけ……」
美「だから、美月、すごいうれしいんだよ、ナイショだからね」
月「うん、お母さんも嬉しいですよ、美月に会えて……」
 目と目で見つめ合って、お互いに軽く吹き出す
美「おやすみなさい、ママ」
月「ええ、おやすみなさい美月」
 手と手を取って目をつぶると、すぐに美月は寝息を立てた
 幸せが目に見えるものならば、触れられるものならば、目の前の子供がまさにその物だっただろう

 静かに、虚空が身を起こした
虚「寝たな」
月「はい」
虚「発つぞ」
 月見は美月を起こさないように組んでいた手を優しくどけると、その柔らかな前髪を撫で、それから起き上がった
 音を立てないように気遣って遅れる月見に対して、虚空が手早く着替え手荷物を整える
 ふたりは、毛布を抱き込んで涎を垂らしながら「ししまるは、おうまさん役よ……」と寝言を言う美月をまたいで、部屋から出た
 静まり返った屋敷に、月明かりが差し込んでいた
 温もりに名残を惜しむ時は終わった、ここから夫婦は武士となる
竜「……いいのね」
 玄関で待っていた竜子にうなずくと、虚空と月見は昼のうちに準備しておいた携帯袋と武具を拾う
月「昼間に出陣すると、京の人たちもうるさいとは言え、最後の出陣にしては何だかちょっと地味なものですよね」
竜「そうね」
虚「闇に紛れてというのも、風情があると思うがな」
 結局、2ヶ月才の左京は家に残すことになった、初陣の者が修練を積むような場所ではないだろう、と
 全て三人で決めたことだ、重傷の烈を置き去りにするのも
 三人が門から出ると、外にはイツ花と夕子がじっと佇んでいた
虚「おぬしら、見送りか……」
夕子「どうか、御武運をお祈りしております」
イ「屋敷のことはご心配なく、わたしたちにお任せください」
虚「ああ、今まで通り、頼んだぞ」
 十一代目当主の言葉に、二柱の太照天は堅くうなずいた
月「あ、左京がどこで寝ているか知りませんが、見つけたら布団をかけてやってください、もう4月とは言え、夜は冷えますから」
 月見の心配そうな口調を聞いて、竜子が少し笑った
竜「貴方、今から地獄にゆくのに、そんなの」
月「い、いいじゃないですかお姉様ぁ」
竜「そうね、良いけれどね」
 三人は道の先を見つめた
 ついに、決戦だ
虚「イツ花、例の景気付けに、頼んでも良いか?」
イ「例の……あ、ああ、アレですネ! アレ!」
 虚空の申し出に顎に指を当ててから、思いついたイツ花はパッと顔を輝かせる
月「近所迷惑にならない程度にお願いしますねw」
イ「はァーい、それでは、」
 イツ花は月見の忠告などまったく無視して、拳を握り渾身の力で叫ぶ
 夜を照らすように希望のように
イ「当主様、とっつげきィィィィィ!!」
 声は風となり、船を走らせる
 黄泉へと一隊は歩み始める、目指すは朱点童子の首一つ
 
 三人の果てしなく長い一ヶ月の、それが始まりであった
 壬生川一族 かく戦えけり


 =第3編へ=
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by RuLushi | 2006-10-26 00:00