ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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2005年 09月 22日 ( 1 )
1022年 3月

<庭にて>
 
鈴「それでは、初めです」
 鈴鹿が手を振り下ろすと、門司と伽子の間に緊張感が走った
門「へへっ、相手が悪かったっすね、何てったって俺っちは世界・神術選手権で第二位を記録した――」
 門司の台詞の途中で、伽子の結んだ術が完成する
伽「ええーい、死ねモンチー、<お焔>!」
 小さな火球が、門司の足元で弾けて火の粉を撒き散らす
門「熱いっ、熱いっすよっ、てか死ねって何っすか!w
 わたわたと慌てる門司に、鈴鹿がぽつりと、
鈴「口上が長かったですね」
 そこへ、いつも眠そうな眼をした以蔵が通りかかる
以「……何やってんだ?」
 庭に距離を開けて対峙する門司と伽子、その手前に鈴鹿が赤と白の旗を持って立っていた
鈴「兄上、模擬戦です」
 振り返って、鈴鹿がそう言う
 門司が印を描いて<白波>の術を唱え、その衝撃波を伽子がひらりと避ける
以「……術のみでか、夢見に師事した門司に、伽子が勝てるとは思わねーけどな」
 現在、壬生川家を分別するのは、以蔵、鈴鹿、夢見それぞれの家系だ
 術に秀でた弓使いの家が夢見、門司の血筋なのに対して、以蔵の流派は剣技・槍術に重きを置いている根っからの仕留め役だった
 先々代の当主である初子が、夢見の母で4ヶ月年上の佐和に武芸で勝っていたのも、そういう特化によるものだ
鈴「でも、伽子さんの術力は大したものです」
 文武両道を志した蘭の血を引き継ぐ鈴鹿が、やんわりと以蔵の危惧を否定する
 門司が<業ノ火>の術を唱えている間に、伽子が<暴れ石>を早口で結ぶ
伽「傍若無人に今し方・古今東西の荒石こぞり…………ああっ、続きなんだっけ!w」
 伽子が途中で頭を抱えて、印を中断してたところで、門司がにやりと笑う
門「ワーハハ、勝ったっ、まだちっちゃい伽っちには負けるわけにはいかないっす!」
 ビシッと伽子を指差す門司
鈴「門司さんも、術中断」
門「しまったっす!
 以蔵がこそこそと伽子に囁く
以「荒石こぞりて、削岩突起寄り合わせ、喧々諤々大崩し、だ」
鈴「3秒ルールです、まだ間に合いますね」
 鈴鹿も伽子にうなずく
伽「ありがとーっ、古今東西の荒石こぞりて……削岩突起寄り合わせ・喧々諤々大崩し!
 きゅぴーんと伽子の指が光り、周囲の砂岩がざわめく
門「もう3秒とか、とっくに過ぎているじゃないっすかー!w」
以「術なんて適当でも大体発動するからな」
鈴「夢見姉上がよく間違っているのに無理矢理放ったりしてましたね」
 のんきな言葉に、門司が何やら納得できないとわめきたてる
伽「<あーばれーいーしー>!
 門司の叫び声は、怒号を立てて押し寄せる岩々に一緒になって押し潰されていった
 その光景を眺めて、以蔵は鈴鹿にぽつりと漏らした
以「こりゃ、ダメだ」
鈴「……何がですか?」
以「何回やっても……相手が門司だったのが、勝因になっちまう
鈴「……そう、ですね」
 鈴鹿も同意する
 伽子の放った<暴れ石>が去ると、そこには伸びてぴくぴくと痙攣する門司の姿が残されていた
伽「ぶい!」
 嬉しそうにVサインをする伽子に、以蔵と鈴鹿は頭を抱えていた


<選考試合前・京の都>

 あちこちを包帯で結んだ門司を、伽子が引っ張ってゆく
伽「ねぇねぇモンチー、あたし水あめ食べたいっ」
 門司が呆れながら返す
門「あのっすね、そういうのは以蔵っち兄さんに頼めば良いじゃないっすか」
伽「えー、じゃあ、あたしがモンチーに、買った水あめを少し分けてあげるってのでどう?」
門「それ俺っちのお金っすよね!?w
 そんなふたりを、以蔵と鈴鹿が遠くから眺める
以「なんだかんだで仲良いな、あいつら……」
鈴「以蔵兄上が門司さんをからかうのを、すっかり覚えてしまいましたね伽子さん」
 鈴鹿が冷静に分析する
以「そーか、門司の存在が教育上良くなかったんだな」 
鈴「曲解し過ぎです」
 それよりも、と以蔵は話を変えた
以「夢姉の様子、変だったな」
 いつもなら、あれほどはしゃぐ京の都だというのに夢見は着いて来なかったのが、以蔵は不思議でならなかった
以「門司も来るんだし、家に居る理由なんてねーのにな……」
 夢見の様子を思い起こすと、家を出る自分たちに向けた言葉はそっけない「行ってらっしゃいですぅ」だけだった
以「何でだろーな鈴鹿」
鈴「分かりません」
以「……あっそ」
鈴「人の気持ちは、その本人にしか分かりません」
 まぁそりゃそーだわな、と以蔵がため息をつく
伽「あっ、何かそうやっていると、夫婦みたい!」
 いつの間にか戻ってきていた伽子が、頭に狐のお面をつけたまま以蔵と鈴鹿を指差す
 思わず顔を見合わせる年長者ふたり
以「……鈴鹿とか
鈴「……以蔵兄上と、ですか
 ほぼ同時につぶやいた
伽「何でそんな嫌そうな顔するの!?w」
 突っ込む伽子の後ろ、荷物持ちと化した門司がよろよろと歩いてくる
門「俺っち、一応怪我人なんすから……」
 両手に出店の菓子やら、京土産の羅生門キーホルダーやらを重そう抱えたまま、るるるーと涙を流す門司
伽「え、モンチー怪我しているの?」
門「あなたが怪我させたんすよね!?w
 ごめんごめんあはははー、と笑う伽子に鈴鹿がうなずく
鈴「やはり、以蔵兄上のお嬢さんですよね」
以「……さ、そろそろ会場に行くか」
 聞こえなかったフリをして、以蔵は道なりに進んでいった


<選考試合>

 伽子の初陣となる春の選考会で、壬生川家は当主・以蔵による圧倒的な強さを見せつけ、堂々の夏・春連覇を果たした
 その伸び伸びと戦う伽子の幼い姿が、京の町でも密かな人気を博したのは、壬生川家の知るところではない話だった

 
<壬生川家>
 
以「ただいま」
 選考試合の疲れも少なく、槍を担いで戻ってきた以蔵が屋敷に戻る
 いつもなら真っ先に出迎えて来るはずのイツ花の姿が見えない
以「……まぁ、夢姉のお迎えとかは期待してなかったけどな」
 そう言いつつ何となく虫の知らせを想い、様子のおかしかった夢見の事が気にかかって、ひとりで早く帰ってきたのだ
イ「当主さま!」
 玄関に座り込んで足袋を脱いでいた以蔵に、イツ花のただ事ではない声が届いた
以「イツ花……どーした、そんな慌てて?」
 血相を変えたイツ花が、以蔵の目を見据えて、ただ一言つぶやいた
イ「夢見さまが……お倒れになりました」
 以蔵はその瞬間、槍を投げ捨てて駆け出した


<夢見の部屋>

 遅れて鈴鹿が夢見の部屋に着いたとき、以蔵が夢見の布団の前でうなだれたように座っていた
 寝ている夢見は顔色が青く、一目で弱っているのが見て取れた
鈴「以蔵兄上……」
以「夢姉は、きっと死ぬよな」
 以蔵は夢見の手を握ったまま、そうつぶやいた
鈴「……夢見姉上は1才6ヶ月、そろそろ難しいかもしれません」
以「門司はまだか」
 鈴鹿は以蔵の隣に腰を下ろす
鈴「先ほど早馬を手配しましたが……なにぶん、門司さんは伽子さんと一緒ですから」
 伽子の荷物を背負い、歩幅の短い子供のお守りをしているのだ、壬生川家に帰ってくるまでまだ少し時間がかかるはずだった
以「目、覚ますかな、夢姉」
 以蔵の声は穏やかだった
鈴「分かりません」
以「……お前そこは、ウソでも、覚ますって言う場面だぞ」
鈴「そんなウソは、つけません」
 鈴鹿は静かに、そう答えた
以「イツ花が教えてくれたんだ、夢見の言葉、何だと思う?」
鈴「分かりません」
 淡々と以蔵は続けた
以「ごめんなさい、だってよ……わたしでごめんなさい、ひたすら、ごめんなさいだとさ」
鈴「そうですか」
以「……夢姉をこんな風にしたのは、やっぱりオレたちなんだよな」
 鈴鹿は首を振る
鈴「私には、分かりません……」
 以蔵は枕元にあった濡れた手ぬぐいで、うなされている夢見の額の汗を拭き取る
鈴「……ただ、私が母上から聞いた話があります」
以「蘭姉の言葉か……」
鈴「……生まれてくる赤ん坊は、天界の神にくじ引きを引かされて……当たりに当たったが最後、壬生川家に生まれ落ち、死ぬまで、神の退屈しのぎに鬼を殺し続けるそうです……私には、意味が分かりかねましたが……」
 くじ引きで決まった罰ゲームか、と以蔵がつぶやく
 少しの間があり、
 ふたりの前、夢見がうっすらと瞳を開けた
夢「う……うぅ……」
以「……夢姉」
 以蔵が夢姉の手を強く握る
夢「わたし、ごめんなさい……誇れることが何もなくて、こんな娘で……ごめんなさい、ママぁ……」
 夢姉の目から、涙がこぼれた
以「夢姉……お前は良く頑張ったよ、もう……ゆっくり、寝るんだ」
夢「親不孝ものでしたけど……許して、ください……ママ……」
 その震える唇を見て、以蔵が強く首を振る
以「……夢姉は良くやった、オレたちと朱点を討ったんだからな……誰にも出来なかったことを、成し遂げたんだよ……」
 泣きながら、夢見は最後の力を振り絞り……かすれ声でつぶやいた
 

夢「私、もうダメみたい……しょうがない、ですよね……ごめんなさい……」
 
 壬生川 夢見 享年1才6ヶ月




 以蔵はいつまでも、夢見の手を握っていた

以「なぁ……鈴鹿」
 呼ばれて向いた鈴鹿は、以蔵の表情を見て、驚きを隠せなかった
 夢見の手を握る以蔵は、まるで能面のような無表情だった
以「おかしいだろ、オレ……何も感じねーんだ……」
 彼は呆けたように、夢見の亡き顔を見つめていた
以「夢姉の死を、ただ受け止めていて……悲しくもねーし、寂しくもねーし……ただ、あった事を事実として、受け止めているんだ、オレ……」
鈴「以蔵、兄上……」
 鈴鹿が痛々しいと思ってしまうほど、以蔵の声は普段と何も変わってはいなかった
以「オレ、好きだと思ってたんだけどな、夢姉……弱虫だったオレをいつも、引っ張り回して……いなくなったら、泣けるって、どっかで信じてて……それが、最後の望みだったんだけどな」
 屋敷から騒がしい声が聞こえてくる、門司が到着したのだろう
以「オレ、狂っちまったのかな、何も感じなくなって、このまま死ぬんかな……」
 蘭は幼い頃に、朱の首輪を身につけたと言っていた
 そのため、蘭はこの世を呪いながら死んでいった、あれは、自分の行く末なのだ
 だから蘭は、鈴鹿ではなく以蔵を呼んだのだと、以蔵は今になってようやく理解した

以「そうだ、オレは……鬼を殺し、砕き、屠り続けて、最期には鬼の屍の上で死ぬんだな……」
 以蔵は幽鬼のように音もなく立ち上がると、黙って部屋を出てゆく
 入れ替わりに、泣きながら門司と伽子が入ってきた
 鈴鹿は部屋を出て、以蔵を追いかける
 だが、その以蔵の背中から立ち上る鬼気を見て、息を呑んで足を止めてしまった
 鈴鹿はふいに、選考試合で彼の情け容赦ない強さを妬んだ者から囁かれていた、以蔵の二つ名を思い出していた
 


 鬼斬り以蔵
 
 壬生川五代目当主は、こうして一族の最年長となった
 
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by RuLushi | 2005-09-22 02:44