人気ブログランキング |
ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
mibukawa.exblog.jp
近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
ブログパーツ
カテゴリ
=荒神橋家私書箱=
最新の記事
初めましての方へ/トップ
at 2014-12-31 17:42
1019年12月前編
at 2012-10-30 09:02
貞光とほたる
at 2012-09-09 04:59
1019年11月第9編
at 2012-09-03 07:56
1019年11月第8編
at 2012-09-01 11:49
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
1021年 11月前編

 道場で以蔵の打ち込みの掛け声が響く
以「破!
 木の槍を振るい、藁人形の頭部を一撃で吹き飛ばす
 荒く息をつく以蔵に、後ろから声がかかった
蘭「……悪くない」
以「蘭姉?」
 気づかなかった
蘭「……最近、以蔵は訓練ばかりだな」
以「あー、うんまぁ、暇だしな」
 初子が亡くなって以来、ひとりで居る時間が増えた以蔵は、その空き時間のほとんどを道場か庭で槍を振ることに費やしていた
蘭「夢見を息子に取られたからか」
以「ちげーから
 そっぽを向いてつぶやく
蘭「……その夢見は先ほど、門司と鈴鹿と一緒に、被って叩いてジャンケンゲームで遊んでいたぞ」
 一緒に叩いて、額でも割ってやれば良かったのに、と以蔵は思う
以「蘭姉も、お喋りになったじゃねーか」
蘭「……対外交流というものは、なかなか面倒なものだからな」
 よく見れば他所行きの着物を羽織っている、先ほどまで京の都を訪れていたのだろう
蘭「……誰もが我々を奇異の視線で見る、鬼の一族、とな」
 疲れたように上着を脱いで、蘭は壁に立てかけてある薙刀を取る
蘭「俺は良い……鬼のようなものだからな、だが……かつて壬生川家に生きた巻絵や初子に、鬼の異名は少々物々しすぎる」
 以蔵は槍を水平に構えて蘭と対峙する、かつてあれほどに届かないと思っていた蘭の薙刀が近くに見えていた
以「なぁ蘭姉、蘭姉は母さんのライバルだったんだろ」
蘭「……俺が初子に勝てたことなぞ、術法とにらめっこくらいなものだった」
 その真面目くさった言い方に、以蔵は少し吹き出してしまう
以「二番目のは何だよ、それw」
蘭「何が面白いのか、初子はな……俺の顔をじっと見ると、すぐに笑い出すのだ、困ったよ」
 今思えば、何て失礼な人なんだろう、と以蔵は思う
 それから以蔵と蘭は数合ほど打ち合った
 道場に、乾いて澄んだ、気持ちの良い音がこだまする
以「全盛期の母さんと、今のオレ……どちらが上だった?」
蘭「初子だ」
 蘭は迷うことなく断言する
以「ひいき目じゃねーだろうな」
蘭「失礼な」
 1才5ヶ月の蘭が、0才11ヶ月の以蔵を目を細めて眺める
蘭「お前はまだ若い青年期だろう……成熟期の初子には、まだ届かない」
以「……そーか」
 以蔵は蘭に稽古をつけてもらいながら、その言葉を噛み締めていた
 大江山への出陣は今月であり、もう自分にとって来年はない
 
 蘭の去っていった道場で、顎を伝う汗を拭きながら、以蔵は必死に考えていた
以「朱点を……討つ」
 結局はそれが、母親にしてやれる唯一の恩返しであり、名誉を手にする唯一の道なのだ
 
 
<夢見の部屋>
 
 騒がしい部屋の前に立って、以蔵は障子をがらりと開けた
以「……夢姉、入るぞ」
 夢見が琴を弾いて、門司が歌っていた
門「はなァー、はなァー、どんなはなァァァーーー!
 どこかで聞いた曲だったが、そんなにコブシは効いていない、と思う以蔵
 ぽろろんぽろろんと弾いている夢見に、声をかける
以「夢姉」
夢「ぽろろ~ん?
以「喋れよ」
 どこで覚えたのか知らないが、夢見は琴を横に置いて、以蔵と向かい合う
夢「どうかしましたかぁ、いっくん?」
以「いっくんは止めろって、ずっと言ってるだろーよ……」
夢「だってぇ、いっくんはいっくんですぅ」
 変わらず微笑む夢見を見て、ため息をつく以蔵
以「悪いけど門司、ちょっとあっち行っててくれ」
門「はなァー?」
 舌を引っこ抜いてやろうか、と思う
門「えー、じゃあ暇だから遊ぼうっちよー以蔵っち兄さんー」
以「良いぞ」
 うなずくと以蔵は、夢見の部屋に転がっている鞠を掴んでがらりと障子を開き、庭に向かって思いっきり投げる
 凄まじい速度で、林に吸い込まれていった鞠の方角を指差す
以「取ってこい、門司
門「俺っち、こんな無茶な命令を受けたのは壬生川家に来て初めてだ!」
 泣きながら、走っていく
 やれやれ、と以蔵は障子を閉めて、再び腰を下ろした
夢「ユメに遊んでもらえないからってぇ、門司に八つ当たりしちゃダメですよぉ?」
以「ちげーから!
 思わず声を荒げる以蔵
夢「ユメは教育ママなんですからぁ、もう遊んでばっかりいられないんですぅ、子供が一番大事なんですぅ、良い学校出てぇ、良い大学に入ってぇ」
以「少し黙れ……うん、元気そうで何よりだ、ハハ」
 睨まれたので、軽くフォローを入れておく
 そういえば、門司が生まれて以来、久しぶりの会話らしい会話だ
 以蔵は槍術に、夢見は子育てに夢中だった
以「今月、大江山に出陣するんだが、夢姉はどーすんだ?」
夢「どうするもなにもぉ、蘭さまに拉致されるに決まってますぅー」
 口を尖らせる夢見に、どうかな、と呟く
以「今の蘭姉なら、きっと、オレと鈴鹿と三人で行く気さ」
夢「そんなことどうして分かるんですかぁ」
 ユメを二時間も逆さ吊りにしてたくせにぃ、と意外に根に持つ夢見
以「どーして……んー、どーしてだろーなぁ」
夢「説得力が全然ありませぇん~」
 頬を膨らませたり、そんな風な振る舞いをしていると、とても1才2ヶ月の一児の母には見えない
以「でも、蘭姉はもう無理に夢見は引っ張っていかない、門司もだ」
夢「むぅ……」
 もし、無理矢理連れ出そうとするなら、オレが……と言いかけて、以蔵は口をつぐんだ
夢「わっかりましたぁ!」
以「な、何がだ?」
夢「ユメ、大江山に出陣しますぅ!」
以「なにぃ!」
 何を思ったのか夢見は突然立ち上がり、目を輝かせる
夢「すっかり忘れてましたぁ! 夢見家族計画を完了させるためにはぃ、朱点童子を討たなきゃいけないんですぅ!」
 タタラ陣内さまと約束したのだ、朱点を討てばお嫁さんにしてくれる、と
夢「ユメ、初子さまとお喋りしたんです、朱点を倒したら京の都におうちを建てて、そこで、親子で暮らすんだ、って……」
 手を組んで、キラキラ目で天井を見つめる
 もはや以蔵は幼年期のように、黙って聞くしかできない
以「は、はぁ?」
夢「お庭にはお犬を飼ってぇ、門司とお犬が競争してぇ……門司とお犬が芸を磨いて、門司とお犬がコンクールに出てぇ」
以「門司はお前のペットか
夢「それで、ユメはタタラ陣内さまとぉ、幸せに過ごすんですぅ……あ、いっくんもたまになら遊びに来てもいいですよぉ」
 思い出したように付け加える
以「たまに、なのか」
 軽く傷つく
夢「毎日こられたらぁ、ユメとタタラ陣内さまの営みがぁ……」
 ぽっと頬を染める夢見に、以蔵は呆れた顔をする
以「でも、ま……楽しみにしているよ、お呼ばれするのも」
 以蔵はそう言って、立ち上がる
夢「はぁぃ、そのために打倒・朱点童子、ですぅ!」
 握り拳を突き出す夢見に、以蔵は思わず笑った
 打倒・朱点……、夢姉には、なんて似合わない言葉なんだろう
以「今月、頑張ろーな」
夢「はいですぅ~」
 そう言い残して、以蔵は夢見の部屋から出てゆく
 

<蘭の部屋>
 
 蘭が静かに部屋に戻ると、暗がりの中に鈴鹿がいた
蘭「……ビックリした」
鈴「おかえりなさい、母上」
 蘭に背を向けて、鏡を見つめながら、ぶつぶつとつぶやいている鈴鹿
 怖すぎる
蘭「何をしていたのだ鈴鹿」
鈴「しりとりです」
蘭「……ひとりで、か」
 背中を向けたまま、鈴鹿はこくりとうなずく
鈴「自分の語彙がどれほどあるのか、時間はかかりますが、検索できます」
 する意味はと聞きたかったが、おそらく蘭には理解できないのではないかと思う
鈴「私の語彙の中では、日常身の回りの物が1割7分で、もっとも高い比率でした」
 記憶しているのか……、何だか身の毛がよだってきたので、蘭は話を変えることにした
蘭「そうだ鈴鹿、これより出陣するぞ」
鈴「出陣……大江山、ですか?」
蘭「ああ」
 鈴鹿がこちらに振り返る
鈴「母上は、ウソつきでいらっしゃいました」
蘭「……何の話だ?」
 鈴鹿は蘭の目を見て、淡々と続ける
鈴「母上は、屋敷に来たばかりの私に、自分は人の親にふさわしくない人物であるから、親らしいことを期待するな、とおっしゃいました」
蘭「……ああ、確かに言った」
鈴「ですが、私は母上の薙刀のご指導を受けて、感じました」
 鈴の青い目が、わずかに燃え上がる
鈴「母上は、人の親にふさわしくない人物ではありませんでした、私は母上から実に色々なことを教わりました、術、薙刀、作法、様々なことをです」
蘭「……」
鈴「ですから私、鈴鹿は母上をウソつきだと申し上げています」
蘭「……そうか」
 蘭は袖口に入れていた手を、鈴鹿の頬に当てた
蘭「……ありがとう、鈴鹿」
鈴「いえ……これまでの人生、ありがとうございました、どうか立派な最期を」
 少し、違和感を感じた
蘭「……まるで、俺が死ぬような言い草だな」
鈴「え、違うのですか?
蘭「……」
 蘭は押し黙る
鈴「母上は死ぬ気だと、以蔵兄上は申しておりました」
蘭「……あのバカ者」
 余計な事を言って、とつぶやく
蘭「俺はただ……大江山で朽ちても、悔いはないと思っているだけだ」
鈴「それは、どう違うのですか?」
 素直に聞かれて、つい黙り込んでしまう
蘭「……そう、だな、違わないかもしれないな」
 蘭は思わず、ふふ、と微笑を漏らしてしまった
蘭「だが俺はウソつきだ……大江山で朽ちて悔いが残らないなど……やはり、ウソだ、帰ってきたいな」
鈴「そうですか、安心しました」
 鈴鹿は相変わらずの無表情のまま、うなずいた
 

 こうして、四者四様の決意を込めた、大江山への出陣が始まる
 幸四郎の大敗より二年、巻絵の死より一年が経過していた
 





 少年は倉庫の門を開いて、一番奥のつづらの中に目当ての物を探し当てた、つい最近に九重楼で入手したものだった
 家族で一番にも、ヒーローにもなれない弱虫は、その選択を選んだ
 自分の運命をある日突然変えるような、そんな雷鳴のような出来事を信じて

 最奥に封じられているそれは、身につけたものをことごとく鬼へと変えてしまう異形の魔具だった
以「……朱点を倒せば、全てが……終わるんだ」
 震える手で、鬼の秘宝を取り出す
以「オレはオレ自身の栄光のために……朱点を、討つ」 

 朱の首輪を、以蔵はゆっくりと装着した

 
by RuLushi | 2005-09-11 00:26