ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1026年 4月第8編
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 行動不能状態の月見に、八ツ髪が尾を叩きつける
 しかしその一撃は幸か不幸か、強固な神術によって護られた月見には届かなかった
虚「<春菜>!」
 月見の行動順がスキップされ、次の虚空は全体回復術を唱えた
 だが、このままでは圧倒的に回復役が足りない
虚「竜子、神仙水を使え!」
竜「……そうね」
 竜子は今の雷撃により、冷静に戻りつつあった
 道明鏡返しも無い月見の、補助術の効果が切れるのは仕方ないが、そんなことを言っていられる場合ではない
月「う、うぅん……気持ち悪い……」
 かぶりを振って、月見が起き上がる、その顔色は蒼白だ
 これで今、<石猿>三度に<梵ピン>一回、ただし月見は無防備状態
 たとえ朱点童子が<雷獅子>を放ってきたとしても、三人がかりで回復に専念すれば、充分に持ち直せる
朱点「君たちはこう考えているンじゃないかい? “もしかして、このまま巧くいけば朱点童子を打ち倒せるのではないか、我らには神々のご加護がついている!”ってね
虚「……おぬしを倒せると思っておるさ」
朱点「ククク、君たちに天運なんてものは、最初ッからないんだよ
 朱点童子は狂気の笑みを浮かべながら、光を放った
 目を閉じてもまぶたの裏を突き刺して、その閃きは三人の脳に侵入した
月「え、何が」
 自らの手を見下ろしながら、月見がつぶやく
 異常に最初に気づいたのは、竜子だった
竜「……術が、使えない」
 竜子が茫然自失に朱点童子を見た
 これは、危険過ぎる
朱点「ククク、いいねその表情! まるで、食い扶持を減らすために母親に冬の山中に置き去りにされた、少女のようだよ!
 三人の術が封じ込められ、神仙水は、もう無い
虚「……貴様!」
 これから壬生川一族は、数少ない携帯袋の中身を頼りに、戦わねばならなくなった
 
月「……くっ!」
 今もっとも恐れる事は、神仙水が尽きて、<仙酔酒>が唱えられないこの状況で、八ツ髪に<寝太郎>を使われること
 その時点で、一族は“詰まれて”しまう
 神経が焼き切れるような焦燥感
 ならば……
月「力士水です!」
 月見はあえて、それを使った
 圧倒的な破壊力を誇ったあの五ツ髪ですら、三人の前にたった三発で敗れ去ったのだ
 朱点童子の前に、長期戦は、無用!
 八ツ髪は、<石猿>の切れた月見に向けて、岩盤を砕くような頭突きを仕掛けてきた
月「ああっ!」
 強烈な衝撃に月見が吹き飛ばされる
 だがもう、竜子も虚空も振り向きはしない
竜「朱点童子!」
虚「朱点童子!」
 呪いによって封じ込められたはずのふたりの体から、神の力が示現されてゆく、何年も何代も脈々と受け継がれてきた朱点童子への怨恨がそれを後押しする
竜「最終奥義、砕けなさい!」
 朱点童子に、竜子の百烈拳が無数に降りそそぐ、残像が残像を残し、その激情が朱点童子ひとりを叩きのめした
 最後の一撃の回し蹴りが朱点童子を吹き飛ばす
虚「貴様の雷鳴、返すぞ!」
 虚空落雷撃!
 敵陣に走る強烈な閃光が、朱点童子を猛追した
 いかずちが怨嗟の声を響かせながら、大地を駆け抜けて、悪鬼と龍を切り裂いた、修羅の塔最上階の壁が破れ、外から寒風が吹き込んでくる
 地面に着地した虚空と竜子は、共に身を崩す
 長旅による疲れが、当主たちの体を蝕んでいる、だが、好機は今しかない
 瓦礫の中から朱点童子の笑い声が漏れた、まだ生きている
 竜子が跳躍した
竜「飛天脚!」
 空中から飛来する竜の爪が、朱点童子の体を真っ二つにへし折った
朱点「ち……八ツ髪!
 そこに八ツ髪が大きく口を開き、獰猛な牙を剥いて大量の氷柱を吐き出してくる
 三人が身体を切り刻まれて、その着物を真っ赤に染めた
月「まだ、まだ倒れません!」
 立っているのがやっとのはずの怪我でありながら、月見は顔を上げ、力士水を掲げた
 まだ終わらない、激昂の連続奥義は続く
虚「豪槍山嵐、吼えろ!」
 当主の放った落雷撃は、朱点童子を断ち、その左腕を消し飛ばした
朱点「グ……ッ!
 初めて、朱点童子の顔に苦悶の表情が浮かんだ、四度目の奥義にして、その攻撃が朱点童子の核を捉えたのだ
 竜子が更に追い討ちを仕掛けた
竜「はあああああ!」
 もう健康度は17しか残っていない、ここから先は身動きするのにも命を削らなければいけない領域だ
 だが竜子は視界を血に染めながらも、怯まずに朱点童子を殴り飛ばした
 朱点童子は壁にぶち当たり、その場に身を崩した
 同じく、雷撃により吹き飛んだ八ツ髪は、倒れたまま身動きしない
 およそ二分にも満たないであろう騒乱が収まり、静寂が訪れた
竜「……ふう」
虚「……ハァ、ハァ……」
 死力を尽くした
 それはまさに、燃え尽きる寸前の蝋燭の炎だった
 ともすれば気を失ってしまうような命の喪失感の中で、三人は立ち続けた
 月見が口火を切った
月「やった、のでしょうか……」
 その瞬間、八ツ髪がむくりと鎌首をもたげ、その口から大量の岩石を吐き出してきた
虚「ぬお!」
 感覚の薄れていた三人を巻き込んで、土砂は壬生川一族を呑み込んだ
 槍をその場に突き刺して虚空が抵抗するが、それもかなわず流されてゆく
朱点「ちょっと“期待”しただろう? でも“無駄”なのさ
 後ろから、朱点童子の声がした
 振り向いた虚空が見たものは、胸の中央から剣を生やして目を見開いている月見の姿だった
 
 朱点童子が刀を引き抜くと、月見は支えを失った薙刀のようにその場に倒れた
虚「月見っ、貴様あああああああああ!」
 虚空が当主の指輪を突き出した
 十一代目壬生川当主の背後から、猛将の英霊が出現し、朱点童子に向けてその一太刀を浴びせに襲い掛かる
 その先祖の霊を、朱点童子は真一文字に分断した
朱点「手ぬるいね
 柄の無い刀を右手一本で弄びながら、朱点童子は笑う
朱点「そろそろ本気、出しなよ

 
 圧倒的だった
 何度突いても、殴っても、朱点童子は平然と冷笑を浮かべていた、この男はどうやったら死ぬのだろうか、とすら思えてくる
 八ツ髪の火炎を身に受け、煙に吹き飛ばされ、氷に刺されても、何度でも虚空と竜子は立ち上がった
虚「……貴様……」
 泥にまみれ、虚空は何度でも起き上がる
 この深い地の底には、神の奇跡など起こりはしない
 喉が裂けるような雄叫びを上げて飛びかかった竜子を、朱点童子は切り伏せた
朱点「ちッ、弱すぎる
 ついに虚空は、独りになった

 
 心のどこかで、虚空はどこか竜子に憧れていた、自身が気づかないほどにそれは小さな感情であったが、竜子が負ける場面など想像できなかった
 その彼女が、朱点童子に頭を踏まれながら、野良犬のように伏せっていた
 あれほど美しかった髪も血に染まり、面影すらない
 なるほど、ここは地獄なのだと思う
 最愛の妻は、羅生門に棄てられた死体のように、片隅に丸まっていた、酷い有様だ
 虚空は腹をくくった
「人生の至福の時なんてあったとしても一瞬ですの、だから目をそらしちゃダメ、見逃しちゃダメですよ」
 母親の言葉が、蘇る
 間違いない、自分の死ぬべき場所は、ここなのだ
 失うものなど何も無いと知り、虚空は朱点童子を見た
虚「余は命を捨てるぞ」
 死に場所を求める、鬼となろう
 目を閉じ、再び開いた時、虚空のその瞳は真っ赤に染まっていた
 間合いを詰めた朱点童子の刀が虚空の腹に突き刺さり、虚空は血を吐いた
虚「貴様と相討ちで死んでやる
 朱点童子の首を掴み、虚空は指先に渾身の力を込めた

 これで終わることとなっても、悔いはない




 


 滅びの間際で、何者かに肩に手を置かれ、虚空は朱点童子から引き剥がされた
 自分と朱点童子の他に、誰がいたというのか
 先ほど、鎖に捕らえられた女かと思ったが、それは違った
 あまり動かない目が見たのは、髪の長い女だった
 竜子だった
竜「月見を連れて、出なさい」
 何を言っているのか、分からなかった
 いつのまにか虚空の傍には辛うじて呼吸をしている月見がいて、竜子は真っ直ぐに先ほど奥義の乱発で破壊した光の漏れている外壁を指差した
 朱点童子が竜子に斬りかかるが、竜子はそれをかわし、朱点童子を弾き飛ばした、とても半死人の身のこなしとは思えない
竜「屋敷に帰りなさい、あとは私がやるわ」
虚「何を……」
 竜子が復活したのなら、ふたりがかりで挑めばあるいは今度こそ朱点童子を倒せるかもしれない、とそんなことを告げる虚空に、竜子が首を振った
竜「月見を頼んだわ」
 血で濡れた竜子の髪は、彼女が自身があれほど忌み嫌っていた朱点童子の髪の色に染まっていた
 竜子が虚空の胸を押した
 その手は、ずっとするほど冷たかった
虚「竜子……?」
 放り投げられた月見を、虚空は思わず抱きとめる、自分にまだそんな力が残っていたことが信じられなかった
 そこに八ツ髪が、火炎を吐き出してきた
竜「足手まといなのよ、貴方たち……いきなさい」
 虚空の身体が、見えない力に強く押される
 視界が開けた、肌を刺す冷気に今さらながら脳が覚醒した、階下に広がっているのは、亡者砂漠だった
虚「竜子おおおおおおおおおおおおお!」
 虚空は月見を抱いたまま、砂漠へと落下してゆく
 次の瞬間、塔が轟音と共に揺れた
 


竜「私は朱点童子になりたかった
 朱点童子に背を向けたまま、竜子はつぶやいた
竜「貴方がお紺の魂を捕らえたように、私にもそれが出来るのだと思った、だけど、私には力が足りなかった、氷ノ皇子から奪った術だけでは、それは完成しなかった
 竜子の髪が根元から赤く染まってゆく
 肌は黒みを帯び、知性的な瞳が火のように紅と変わった
竜「母さんと永遠にふたりで生き続けるためなら、私は何だって出来るわ、貴方を殺して、その血肉によって私は新生するの
 新たな朱点童子の誕生に、修羅の塔が震えた
 朱点童子と八ツ髪を前に、竜子は笑うと、持っていた朱の首輪を愛しそうに撫で、自らの首にはめた
竜「へぇ~、そうか……“死”って意外と柔らかかったのね」
 この時、竜子の内腿に彫られた白柚の入れ墨が、静かに散る
 それは、人であった壬生川竜子が、死ぬ瞬間だった
朱点「“まだ死にたくない、もっと生きていたい” そう呻きながら死になさい
 朱点童子・竜子を見て、朱点童子・黄川人が笑った
朱点「やあやあ、今度の出し物は、それなりに楽しめそうだね
 強大な力の衝突が起こった


 この戦いの結末を知っていたのは、三柱の神だけだった
 氷ノ皇子は、気が狂うほど戦うふたりの朱点童子のために、鎮魂の歌を詠った
 太照天夕子は、竜子が敗れたのを知ると、そっと目を閉じて彼女のために祈った
 太照天昼子は、魂を奪われまいと自害した彼女のために、庭の片隅に小さな墓を作った
 
 それは闇のような瞳をした、もうひとりの朱点童子の物語だった






 
 壬生川の物語に、戻ろう

 月見を背負いながら、どこをどのように歩いたか、虚空は覚えていなかった
 ただ、皮が裂けるまで開かない修羅の塔の扉を叩いたのは覚えている、道中に鬼は一匹もいなかったし、何度もつんのめって月見を落とすまいと顔から地面に転んだが、一度も痛いとは思わなかった、地獄を戻りながらずっと家族のことを考えていた
 槍を忘れたと気がついたのは、黄泉坂を登っていた頃だ、それまではそんなことすら忘れていた、倒れるたびにもう二度と立ち上がれないのではないかと思うほどの疲労が襲ってきたが、背中の重みが最後の最後で虚空の足を動かした
 虚空の耳に、月見の遠い声が聞こえたような気がする、「もう大丈夫です」や「降ろしてください」や「眠い」や「帰りましょう」だった、どれが幻聴でどれが本物だったのだろうか
 地上へ出る、長い長い階段を登った

 帰るのだ、と、ぼんやりと思っていた
 身体の芯から疲れ切っていた、今になって家に帰れるのだという想いが湧く、月見と一緒に帰るのだ、月見と一緒にあの暮らしに戻るのだ、地獄から生きて、もう少しで人間の世界に帰れるのだ
 虚空の肩から垂れた月見の腕が、揺れた
月「あなた」
 耳元でくぐもった声が聞こえた
月「ボク、良いお母さんになりたかったんです」
 夢を見ているのだろうか
 虚空は月見を背負いなおし、もう少しで地上に帰れるぞ、と告げた
月「あなた」
 外が見えた、薄明かりが漏れているのを見ると、今は夜なのだろう
 駆け上るような気持ちで、虚空は一歩一歩を刻んだ
 その足が、土を踏む
月「できるだけゆっくり、きてくださいね」
 まってますから、と月見が言った
虚「月見、外に出たぞ」
 風がふたりを撫でた
 耳が痛いほど静かな夜だ
虚「ふたりで、帰ろう」
 月が雲に隠された暗い夜だった
 月見はもう、何も言わなかった
 軽い、魂の抜けた体は、あまりにも軽かった
 死にたかった

 亡骸を背負いながら、虚空は泣いた
 その名を何度も呼びながら、死にぞこないは泣き続けた
 








 壬生川 竜子 享年1才5ヶ月
 壬生川 月見 享年1才2ヶ月


 壬生川 虚空 生還
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by RuLushi | 2006-11-01 00:00