ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1026年 4月第7編
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<終界>

 三人は深淵を真っ直ぐに進む
 闇だ、そこにあるのは一寸先すら見えない、完全なる暗闇だ
 そんな局面に置かれても、傍には仲間がいた
月「……長いですね」
虚「そうじゃな」
 そんな他愛のない会話で、救われる、ひとりではないのだ
 朱点童子は、ずっとこの暗闇で、光が見えない胎児のように過ごしてきたのだろうか

 やがて、道が開けた


<胎の間>

竜「ここが、目的地ね」
 たどり着いた大広間で、竜子が辺りを見回す
 修羅の塔中心部だけあって、おぞましい臭気の発生源なのだろう、あまりにも濃く、ただ立っているだけでも息苦しい
 内壁は脈動するように動き、三人はここが本当の地獄なのだと確信した
月「あの、あれ……」
 月見が指差したところに、およそ場違いな光景があった
 女がいた
 壁に張り付けられるようにして、手足を鎖で縛られており、その肢体は疲れきっているようだが、れっきとした女だ
月「まさか、これも朱点の罠……?」
虚「いや……ただの人間ではあらぬようじゃが」
 朱点童子の息がかかっているようなら、それはもう虚空には判る
 巫女装束をした乱れ髪の女は、ゆっくりと近づいてくる一同に気づくと、その汚れた顔を上げた
 「あッ……」
 正面から見たその女の瞳に、かすかな光が灯った
 「おまえたちは、まさか……!」
 その時、洞内に甲高い笑い声が響いた
朱点「やあ、久しぶり!
 暗がりから現れた宿敵が、女の隣に並び、片手を上げる
 桃色の狩衣を着た、血のような赤い髪の少年
月「朱点童子!」
 狂言師のように両手を広げて、歌うように朱点童子は声を張った
朱点「長きイバラの道を自ら選び、ここまでやって来た君たちの意気地、いやあ実にすばらしい!
 朱点童子の本体が、そこに居た
 こうして対峙すれば分かる、圧倒的な存在感、肌が焼けつくほどの殺気
 こんな者が、人間の世界に生きていてはならない、理屈ではなく、本能として心からそう感じられる
虚「……やはり、死ななければならんな、おぬしは」
朱点「よく言われるよ
 虚空の視線を、朱点童子は冷笑を持って受け止めた
朱点「君たちの地道な努力に敬意を表し、今日は特別にボクたちの秘密をひとつ教えてあげるよ
竜「……」
 隙さえあれば、竜子はいつでも朱点童子の胴を貫く気でいた
朱点「今まで倒してきた鬼や魔物たち、なかなか手ごわかったろ? 同じ術を使う奴までいた……偶然だと思うかい? クククク
 だが、もはやこの鬼の王は、貫手で心臓をもぎ取ったとしても、とても死にはしないだろう、虚空や月見もそれを分かってか、今はまだ動かない
朱点「さあ紹介しよう! その強さの源だ!
 朱点童子は女の髪を掴み、無理矢理起き上がらせた
朱点「京を滅ぼすボクの夢のために、いろんな鬼や魔物をいっぱい産んでくれた……我らが母さんだ!
 「うッ……」
 女は朱点童子の手から逃れようと、身をよじって、横を向いた
虚「……そうか、その女であったか」
朱点「おやぁ、ボクの母さんが君たちの知り合いの誰かに似てたかな?
 虚空の心中に去来したのは、怒りではなく、全てに対する納得であった
 この後に及んでも、まだ真実を探求し続けている虚空は、自分で自分を笑う
虚「くくく……」
朱点「アハハハハハ、ハハハ!
 善と悪に分かたれた少年の笑い声が、この塔の最上階で重なった
 朱点童子が手を広げると、三人の頭上に合戦場の光景が映し出された
 京での戦、そこには左京と美月の姿があった、幼いながらも周囲を鬼に囲まれ、それでも果敢に戦っていた
 地獄巡りの入り口近くで、烈がたったひとりで鬼を相手に刀を振るっていた
朱点「君たちがここでボクから逃げたら、その時は京討伐隊を出陣させるって決めていたンだけどな、残念だけど来てくれて嬉しいよ!
月「左京、美月ちゃんまで……そんなことは、絶対にさせませんよ!」
 朱点童子の言っているのは、あの茨城大将たちのことだろう
 あれだけの数が大挙して都に攻め入れば……
朱点「どうだい、君たちには家族と京の存亡がかかっている! アハハ、少しずつ“やる気”出てきただろう?
 目が濁っている
 氷ノ皇子が言っていたような、運命に翻弄された赤子の面影は、そこにはなかった
虚「おぬしを討つことに、もはや一抹の迷いすら無い、産まれた事を詫びながら死ね、その前に殺してやろう」
 朱点童子は口の端を釣り上げて笑うと、地面に手足を沈み込ませた
朱点「さーてと、母さんの前だ、今日はイイとこ見せないとな!
 それと同時に、女が蛇に飲み込まれるように、大地へとずぶずぶと呑まれてゆく
 これでお互い、死闘を妨げるものは、もう何もない
月「……お母さん、絶対に帰るからね」
虚「言うまでもない!」
 世界と、命と、誇りを賭けた、最後の戦いだ
 
朱点「い~く~ぜえッ!!」
 
竜「……来い」
 三人は己が魂を血に託し、朱点童子に挑む
 
 
 地面に描かれた真紅の梵字から、彩虹の光が溢れ出てくる
 大振動が大広間を襲った
月「え、これって……髪!?」
 かつて七度あった光景の再現に、月見が足を取られながら叫ぶ
朱点「アハハハ!
 烈震と共に現れた朱点童子は、巨大な白龍を引き連れていた、その最後の龍の頭の上で哄笑する
虚「く……髪付きか!」
朱点「まさか卑怯だなんて言わないよな、そっちは三人がかりだぜ?
 なんという憎々しい顔なのだろう
竜「……二匹、か」
月「でも、まったく想定していなかったわけでは、ありませんからね!」
 月見の言葉は決して負け惜しみではない
 壬生川一族は現に、かの風神雷神を何度も撃破している、というよりそれは、昼子の仕込んだ相手ではあったのだが、今だけは感謝しなければならないようだ
 あとは、朱点童子がどれほどのものか
虚「月見、竜子、朱点童子にだけ心血を注げ!」
月「泣かしてやりますよ!」
 八ツ髪はもう、完全に無視だ、風雷の間もそうして各個撃破で勝利してきた
竜「当たり前でしょう」
 竜子が底冷えのする声で、答えた
竜「……貴方が止めても、私は朱点を狙うわ」
 何度か見たことがある、竜子の心のタガが完全に解放された目だ
虚「……余は止めぬよ、存分に暴れるがいい、そのためにこの長い地獄を我慢してきたのじゃ」
 小僧ひとりを殺すために、ここまで来たのだ
 戦いが始まる
 
 
 虚空の戦い方は、徹頭徹尾、後の先に尽きる
竜「涼かさや・我に弾ける鬼の爪……岩となり・矛も剣も折れにけり……<石猿>!」
 柚子が生きていた頃から、世代が変わり、圧倒的な攻撃力を持って先手で叩き潰すのではなく、虚空は相手の行動を見極めてから切り返すのを、旨とした
 これは、虚空が同じ槍使いであった三代目当主から戦術を学んだ事が、起因していた
 だがこの戦い方は、大江山を制した蘭の戦い方によく似ている
 あの時の相手は外見こそ違うが、中身は朱点童子だったのだ
朱点「クククク……
 朱点童子は龍に乗りながら、笑っている
虚「余裕じゃな、<石猿>!」
 果たしてこの戦法は、髪を始末し続けた虚空の戦術は、再び朱点童子に通用するのだろうか
月「ボクも<石猿>! これで三度目です!」
 複数相手に英雄猛毒刃があればと、一瞬だけ思わずにはいられなかったが、あれはもはや月見の技ではないのだ
 それはそうと、三度<石猿>が、かかった
 緊張感に、目が眩む
 
 八ツ髪の番に回り、虚空は考えていた
 これまで戦ってきた龍は、実に多種多様な攻撃を仕掛けてきた
 攻撃術をしてくる髪、回復を唱える髪、<萌子>で攻撃力を高める髪、通常攻撃が非常に重い髪、だが、それらの対抗手段は塗り絵を潰すようにひとつひとつ導き出せる
 つまり、髪を放置することは、この場合は必然だった、どう考えても朱点童子の方に注意すべきだろう
 オロチの付け込む隙が、そこにあった
 後列に向けて、八ツ髪は緑色に目を光らせ、<寝太郎>を繰り出してきた
虚「な」
 まったくの予想外の方向からの搦め手に、月見がその場に声も上げず、崩れ落ちた
 これは冷静に考えてみれば、恐ろしい事態だ
竜「……」
 竜子の番が巡る
 もしここで<仙酔酒>を使ってしまったら、三度唱えた<石猿>の効果が帳消しになってしまう、だが使わなければ壬生川一族で動けるのはたったふたり
朱点「アハハハ、こいつの<寝太郎>はよく効くだろう? すぐに治した方がイイと思うけどな
竜「……抜かせ!」
 竜子の指が光る、紅色の<梵ピン>の輝きである
虚「竜子っ!」
 起こすべきだ、何としてでも起こすべきだったのだ
朱点「ざ~んねん、じゃあこっちの、番
 朱点童子が唱える言霊に、厳つ霊がその手のひらから飛び散り、大広間を紫に染める
朱点「全力で抗いなよ……極楽も・地獄も武王の・雷切の……獅子の心に 裂けぬ空なし……!
 魔王のように笑いながら、朱点童子は手加減無しの<雷獅子>を放った
 避けられない
 質量を持って暴れ狂う電光は、この世の終わりそのものであるようにも思えた
 虚空らの目を、耳を、手足を、脳髄に至るまでを執拗に焼き尽くす
 雷が収まってもまだ、目の奥に火花がちらついていた
朱点「へぇ~、やるネェ……凡庸な言葉だけど、この術を喰らって立っていたのは、君たちが初めてだよ
 虚空と竜子は、それでも膝をつかなかった
竜「……さすがに、言うだけのことはあるわね」
 龍の頭に乗り、遥か上から見下ろしてくる朱点童子を、竜子は睨む
虚「……何が、氷ノ皇子に、倍する力じゃ……見くびるなよ、化け物が!」
 
 朱点童子と戦い始めてから、まだ7手目の事だった


=第8編へ=
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by RuLushi | 2006-10-31 00:00