ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1026年 4月第6編
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<修羅の塔>

 その塔は、外見だけではなく、内部まで狂気の様相をしていた
 血管のように入り組んだ通路は粘膜のような物体で出来ており、歩くたびに不安定な床から染み出した粘液が足元を朱に汚した
月「うーわー……最悪、最低、何ですかこれ、きー、不気味ですねっ、もうっ」
 嫌悪感を隠そうともせず、月見が叫ぶ
虚「元気じゃな……」
 中は妙に蒸し暑い
月「いや、そうでもないですけど……」
 虚空のため息に、月見もため息を返した
 空元気も元気のうちとは、誰が言ったのだろう
 竜子はというと、いつも通りに<野分>を唱えていた、周期的に膨張と収縮を繰り返すこんな道にいても、マイペースを保ち続けている、恐ろしい精神力だ
竜「これで、いいわ」
 竜子の合図で、探索を開始する
 そんな気味悪い塔内で、最初の幸運が訪れた
 1界の最初の宝箱にて、ようやく時登りの笛が見つかったのだ
虚「ひとまずは、助かったな……」
月「そうですね、あとは火が残り一個になるときを待って、使いましょう……」
 その次に、最初の不幸がやってきた
虚「む」
 地形が切り替わった瞬間に、初めて見る鬼との接触を許してしまったのだ
 現れた悪羅大将によく似た鬼の名は、茨城大将と言った
 目の前に現れた白面の豪鬼は、先端に三日月型の刃がついている月牙という武器を振り回し、月見に叩きつけてきた
月「何ですってー」
 薙刀で受け止めながらも、月見は大きく吹き飛ばされた
虚「髪のような怪力じゃな……」
 一撃で220のダメージを貰い、月見はよろよろと立ち上がる
 竜子がお返しにと殴りつけるが、大将どころかお供のバサラという小鬼すら一撃では倒しきれない
竜「面倒ね……」
虚「竜子、<梵ピン>を使え」
竜「……分かったわ」
 よもや、雑魚にまで術を使わされるとは
 そうこうしている間にも、月見が次々と攻撃を受け、体力を消耗させてゆく
月「く、<円子>です!」
 月見の体力も一旦は持ち直すが、何と言っても多勢に無勢、その体力が再び奪われるもの時間の問題であった
 虚空は敵の数を少なくすることに躍起になった、<梵ピン>により強化された槍で、バサラを前後まとめて貫き、葬る
 三人はたかが通常戦闘に死力を振り絞らねばならなかった、この茨城大将たちは大八手よりよっぽど恐ろしい相手に見えた
 何度目かの攻撃で、ようやく大将の首を刎ねる
虚「ええい、忌々しい……!」
 虚空が荒い息をつきながら、思わずその場にしゃがみ込んだ
 いくら当主とは言え、その実は竜子よりも7ヶ月年下の若造、スタミナ不足は明らかだった
月「疲れますね、これは……」
 蠢動する奇妙な床を気持ち悪がっている場合ではなかった、月見もまたその場に座り込む
 竜子は本日二個目の神明丹と、薬を飲み込み、つぶやいた
竜「何だかこの壁……まるで、生き物の腹の中みたいね」
月「や、やめてくださいよぉ」
 思わず月見が腰を上げた
虚「朱点童子の趣味か……一刻も早く、四肢をバラバラにしてやりたいものじゃ」
竜「なら、進みましょう」
 竜子の言葉に、うむ、とうなずいて起き上がる
 壬生川一族は、こうして緋色の塔を登ってゆく

 そう言った矢先にまた絡まれた
 それも今度は、背後からの奇襲である
竜「しまった……!」
 動きを<寝太郎>で固めた鬼の横を通り抜けていた時に、無慈悲にもその術が運悪く切れてしまった、あるいは鬼に朱点の慈悲があったのかもしれない
 先ほどと同じ構成だが、先ほどとの違いはバサラが次々と<牛頭丸>を唱えてきたことだ
 一発ではそれほど痛くない土術が、何度も何度も一族を繰り返し襲った
月「ハァ……ハァ……くっ」
 ようやく月見の番に回ったとき、月見はその場に膝をついて、崩れ落ちる寸前であった
 こんなところで引き返すわけにはいかない
月「引波の、御守!」
 血がにじむ指先で、月見はお守りを高く掲げた
 
 早々に竜子の<卑弥子>で傷の手当てを済ませ、簡単に包帯を巻きつけた三人は、再び足を進めた
 竜子は場所が変わるたびに何度も何度も<野分>を唱えた
 2界へ登ると、そこは腸のようにうねっている一本道であった
 竜子の技力の消耗は激しい、<野分>に<白鏡>、<黒鏡>、さらに<速鳥>に<寝太郎>まで唱えている
 神明丹を最も効果的に使うには仕方がないことであるが、徐々に竜子の足取りが弱ってゆくのが、目に見えて分かり、見かねた月見が竜子にいくつかの術の分担を提案した
竜「……そう、じゃあお願いね」
 竜子の言葉から覇気が失われてゆく、その瞳の輝きが鈍っていないのがまだ救いだ
 もしかしたら、自分も似たような表情をしているのかもしれんな、と虚空は思う
 
 全ての鬼を避け、一同は3界へと登った
 今度の階層は先ほどとは異なり、全ての壁が取り払われた大部屋となっていた
 ここで三度目の茨城大将の軍勢が襲い掛かってくる
竜「くっ……」
 竜子が歯噛みした、今回も<野分>を唱える暇がなかった
 時間的な不安が解消されたことは不幸中の幸いではあったが、それにしてもこうも連続して戦闘に入ると、悠長なことも言ってられなくなるかもしれない
 無事、退けられるだろうか
竜「<石猿>!」
 決して見くびらなければ、所詮は体力の低い鬼だろう
 そう覚悟を決めた竜子たちをあざ笑うように、現れた鬼は次々と逃げ出した
月「なっ」
 そのうちの一匹、蛇喰らいという名の蛙が体当たりをしてきたかと思うと、次の瞬間にその体は爆発する、自爆してまで壬生川の戦力を消耗させようというつもりなのか
虚「鬼も笑えぬことをするのう……」
 飛び跳ねる鬼たちを、虚空が次々と串刺しに仕留める、まるでもずの速贄だ
 列攻撃可能な月見と虚空が連携して攻撃を仕掛け、それを竜子が<卑弥子>で補佐した
虚「はぁ……はぁ……」
 茨城大将の頭部を渾身の力で吹き飛ばした虚空は、その場に立てた槍にもたれかかりながら、荒い息をつく、その顎から汗が流れ落ちた
 すかさず、竜子が<野分>を唱えていた
竜「……もう、一匹たりとも近寄らせないわ」
虚「……そうしてくれると、有難いな」
 養老水を飲み、一息入れると、一族は這うように歩みだした
 
 急な階段を駆け上がると、4界は再び一本道であった
 竜子が<野分>を連打して、茨城大将の姿を完全に消滅させる
竜「行きましょう」
 そう言って一歩を踏み出した瞬間、竜子が貧血でも起こしたように、足取りを崩した
月「お姉様っ」
竜「……大丈夫、平気よ」
 月見の手を借りて、竜子が立ち上がる、その顔にまるで死相のような疲労の色がにじんでいたのを、月見は見ないフリをした
月「……きっとあと少しです、参りましょう」
竜「ええ」
 
 5界の大部屋で、一族は二本目の時登りの笛を入手した
虚「月見、おぬしも休め……移動術は余が唱える」
月「まだ、大丈夫ですよ、ボク、前半休んでましたから」
虚「休め、いいな」
 強く言い聞かせると、月見はそれ以上反論してこなかった
 つまりは皆、限界が近い
 
 
 一本道の6界で、月見が熱に浮かされたようにつぶやく
月「もしも、この戦いが終わって」
 あれほど拒絶していた不気味な道も、もうとっくに気にならなくなっていた
月「朱点を倒して、全てが終わったら……何十年も、生きられるんですよね」
虚「そうじゃな」
月「何だか、ちょっと、怖いですよね、そんなに生きて、何するんでしょうね」
 ふたりとも、足がおぼつかない
虚「……猫でも飼うか、黒猫以外のをな」
月「……いいですね」
虚「余は、旅がしたいな……行ったことのない場所へ、行ってみたい」
月「……ひとりで行ってくださいね、ボクは左京と美月とお留守番してますから」
虚「……冷たいな」
 壬生川の屋敷を出発したのはいつだったろう、もう何年も昔のことのように思える
虚「何十年経っても、退屈などせんよ」
月「……えっ?」
虚「どんなときでも、おぬしが退屈することはない」
月「……」
虚「月見の生涯は、余が見届けるからな」
月「……」
 通路の鼓動が、心臓のそれと重なる
 月見は思った、ひょっとして虚空が自分を選んだのは、自分が“先に死ぬ年上”だったから、なのではないか、と
 遺される立場と知っていた虚空は、かけがえのない時を、その一瞬一瞬を、今までずっとそれでも良いと過ごしてきたのだろうか
 虚空の精悍な横顔から、その心は読み取れない
月「あなた」
虚「……ん」
月「戻ったら、お背中流してあげますからね」
 短く、返事が返ってきた
虚「……おう」
 最後の階段が見えた
 旅路の果てだ

 
<修羅の塔7界>

 7界に上がってすぐ、朱点童子の声が聞こえてきた
 「ご苦労さん! あと一息で頂上だ、さあ、あとは後ろにある柱の間を真ッすぐに進むだけ、ただし、そこを過ぎればもう帰り道はない……まッ、お互いここまで来たら今さら後戻りなんてできやしない、そうだろ? アハハハハ……

 後戻りなんて出来ない、まったくその通りだ
 最後の確認にと、虚空たちは携帯袋を整理した

 携帯袋(26/30)
 養老水3つ、七光の御玉2つ、万金露7つ、時登りの笛1つ
 仁王水3つ、力士水4つ、神仙水1つ、朱の首輪1個
 その他、たすきや飾り、茶器等、合計4つ

 神明丹は使いきってしまった、能力を強化する秘薬は手に入るたびに使っていたが、目新しい武具はひとつも入手できていない
 だが、この先に何が待っていようと、三人は如何にして朱点を倒すかだけを、考えていた
虚「竜子、おぬしはずっと今まで不愉快で、薄気味の悪い女だと思っておった」
竜「……お互い様ね」
虚「じゃが、今だけは、おぬしがここに居る事が、何よりも心強い」
竜「……」
 脚も、その腕も、もう傷だらけだ、だというのにより美しく見えるのは、彼女が真の武人なのだからだろう
 修羅の塔頂上、7界の最奥にあったのは、紅色の印であった
 ここを下りればもう、そこには朱点童子がいる
虚「<石猿>三度から入るぞ、月見は後衛、余と竜子が前に出る、壬生川が味わった苦しみの分だけ、朱点童子の身を刻め」
竜「ええ」
月「はい!」
 自分たちの双肩には、壬生川の歴史と、未来と、そして京の命運が賭けられているのだ
 虚空は印への一歩を踏み出しながら、告げた
虚「勝とう、そして、終わらせるぞ」
 
=第7編へ=
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by RuLushi | 2006-10-30 00:00