ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1019年8月前編
 
 
 真琴の遺伝子図は非常に偏っていた。
 火と風は高く、水と土が低い。
 特に水の能力値の中でも、体の水は壊滅的であった。
 
 咲也は書机に向かい、真琴の育て方に関する覚書を作っていた。
 いつかは、使う日も来るだろう。自分ではない誰かが。

咲(春野鈴女を母としたのは、なによりも“風”の属性値を欲していたからだ……)
 
 筆を滑らせる。
 
 晴海に求められていたのは、<円子>を使うことができる素質。
 ならば、真琴はというと。

咲(“連弾弓”……)
 
 攻撃手段というものは、守護の力に比べて、いくつもの選択肢がある。術の併せ、強化術、札……つまり、最終的に鬼の体力を失わせればいいのだ。
 その中でも咲也は、“奥義”に着目した。
 人智を超えた荒神橋一族にだけ伝わる力。肉体の限界を振り絞り、精神をも燃やし尽くす秘技。それこそが“奥義”である。
 
 弓使いの技のひとつに、連弾弓、というものがある。魂を込めた三本の矢を同時に射出する奥義である。
 それを取得するために必要な素質は、心技体の風。
 風の能力値は風神である母神から十分に遺伝された。
 さらに春野鈴女から遺伝する素質で二番目に高いのは、攻撃力に直接関わる火の能力なのである。
 
 こうして真琴の遺伝子は、通常ではありえないほどに偏向した。
 体力の低さは予想外だったものの。

咲(すなわち……晴海が守りの要だとすれば、真琴は攻めの要……)
 
 来月から真琴が戦場に出られるようになっても、経験を積む時間はもう、9月、10月の二ヶ月間のみ。たったそれだけの期間では、確実に奥義を覚えられるとは言い難いが……
 
咲(それでも、牽と福助が型に囚われず、ふたりを補助してやれば……)
 
 大丈夫だ。
 絶対に、大丈夫だ。

咲(……勝てる、勝てるだろ……? なあ、瑠璃、きっと……いや、勝てるはずだ……)
 
 大江山の朱点童子を倒さなければ、荒神橋一族に未来はない。
 牽も福助も晴海も真琴も、みんな助けてやりたいから。

咲(……畜生め)
 
 そこに自分が出陣できないのが、やはりなによりも心残りで。
 手の中で、筆がみしりみしりと悲鳴をあげる。


真「うう、当主サーン、次なにをしますかー……って、顔怖っ!」

 特訓を受けている最中の真琴がやってきて、戸の辺りで固まっていたことに咲也はしばらく気づかなかった。
  
  
 
 ~~
 
 
 
<白骨城>
 
 テウチの祭壇に火花がほとばしる。
 
 襲い来る右カイナを、福助が薙刀で必死に受け止めていた。気を抜けば、指の一本一本に腕を潰されてしまいそうだ。

福「は、はやく……もう、持たない……!」
晴「牽、合わせてくれよ!」

 左カイナに追いかけ回されているのは、晴海。巨大な拳骨を右へ左へとステップで避ける。その後ろからさらに左カイナを牽が追いかけていた。
 晴海が急転換し、カイナがその姿を見失った直後の一瞬。牽の振るった刀が骨をわずかに削り取った。
 
牽「げっ、なんだこれ……!」
 
 だが、悲鳴。
 カイナはまるで虫でも払うような仕草で牽を吹き飛ばす。床を転がった後、受身を取っていた牽は膝を立てて起き上がる。
 

 右カイナ、左カイナ。
 上腕骨から指骨の先が浮遊した、奇怪な姿を持つ鬼である。

 
牽「だめだ、堅い!」
福「おい牽……! まじめにやってくれ……!」
牽「じゃあ僕と変われってんだ!」
 
 怒号が飛び交う。
 その間に晴海が右カイナを蹴り飛ばすと、わずかに拘束が緩んだ。福助はカイナを振りほどき、なんとか脱出する。

 再び一箇所に集まり、討伐隊は作戦の練り直しだ。

福「ハァ、ハァ……く、くそう、なら術で……」
牽「<白波>の併せだね、それしかない」
福「晴海さんも、一緒に」
晴「おう!」
 
 カイナはゆらゆらと揺れながら、目もないくせにこちらを睥睨しているかのようだ。
 直後、風が巻き起こる。
 術技特有の気の流れは、自然界には起こりえない気流を生み出した。
 
晴「戦原……逆白波のたつまでに……」
牽&福『矢も血も骨も、すすげ河太郎……!』

 晴海を中心とした青い光に、牽と福助の神気が絡みつく。
 印を結んだ晴海のまなこが輝いた。

晴「<白波>!」 
 
 直後、虚空から出現した真っ白な水流は、瞬く間に祭壇を飲み込むほどに広がった。
 龍を彷彿とさせるような大津波に、左右のカイナは逃げ場もなく、ただ蹂躙されてゆく。
 六倍の威力を持つ水術が過ぎ去ったあとには、骨の一欠片すらも残ってはいなかった。
 
 
 三人の併せは、物の見事に鬼たちを葬り去ったのであった。
 


 ~~

 
 
 ひたすらに、ひたすらに討伐隊の三人は鬼の群れを蹴散らし続けた。
 その最中<黒鏡>の術も入手し、これで『白骨城で取ってくるべし』と咲也が言っていた宝はもうあらかた取得が済んでいた。
 
 そんな時だった。晴海が言ったのだ。

晴「今月の終わりだ。大物を退治にしに、行こうぜ」
 
 迷宮の奥地には、必ず一体の番人が存在している。晴海は父親からそう教わっていた。彼らはその迷宮でもっとも強く、高価な宝を隠し持っている、と。
 
福「……いや、それは……」

 鬼胎を抱くのは、やはり福助。万全の調子でも断りたがるものを、今は皆、一ヶ月の討伐を終えて疲労が滲んでいる。
 対する牽は晴海にうなずく。

牽「いいじゃないか、僕たちだってだいぶ強くなったしさ」
福「やめろ、牽」
牽「なんだよ、福助」
福「根拠のない自信は、やめてくれ。そんな楽観的な一言で僕たち全員、死地にさらされたらたまったもんじゃない。第一、相手の顔だって知らないんだ」
牽「……」
 
 切迫した福助の声に、牽もさすがに黙りこむ。
 が、晴海は普段通りの中庸さで間に入った。

晴「いや、勝ち目はある、と思う。父ちゃんから色々、聞いてきたんだ」
福「……咲也兄さんから?」
晴「ああ。なぜだかさ、父ちゃんはここの相手のことを知っているみたいで……確か名前は、“大江ノ捨丸(おおえのすてまる)”」
牽「おー、聞かせてもらおうじゃないか、なあ福助」
福「……ああ」
 
 ふたりに、晴海は父から聞いたことをそのまま伝達する。

晴「――って感じで、といっても、そんなに詳しく教わったわけじゃないけど……でも、今の晴海たちなら、大丈夫だと思うんだ」
福「……」

 福助は熟考する。
 彼は今になってようやく、どうして咲也が自分を討伐隊の隊長に指名したのか、わかったような気がしていた。
 判断を誤れば、一家全員を危険に晒す。
 だがもちろん、見返りだってあるだろう。
 それは経験点や宝といった目に見えるものだけではない。大江山に向けて、三人での連携を鍛えるためにもここはうってつけの舞台だ。自分たちはそろそろ、そういったことを考えなければならない段階に来ているはずだ。

牽「こんなところで逃げていたら、大江山だって乗り越えられないだろ」
 
 牽の言葉に、福助は静かに首を振る。
 
福「それとこれとは、違う……ここはここ、大江山は大江山だ。僕はそういう、精神論のような言葉を信じない」
牽「だからさ、咲也兄さんが僕たち三人に出陣させた意味を、よく考えろって! ホントは福助だってわかってんだろ!」
福「……それは」
 
 薄々気づいてはいたのだ。
 晴海を見やる。彼女もそっとうなずいていた。

牽「何のために、僕たち三人で来たんだよ。もちろん<速瀬>だとか経験を積むためだけどさ、それ以上に大事なものがあるだろ。僕らはどうしたって、凱旋しなくっちゃいけないんだ。『あいつらやるじゃねえか』って、兄さんに思われたいだろ? いつもと同じじゃだめなんだよ!」
 
 牽は熱く福助に訴える。その言葉は、福助に重くのしかかる。

牽「母さんの仇を討つんだろ、僕たちの腕で。そうして、生き残るんだよ、この先もずっとずっと、みんなでさ!」

 わかっていたことだ。
 咲也はもう戦場には出ないだろう。後のことを全て自分たちに任せて、引退するつもりなのだ。
 そんな当主に、牽は“土産”を持ち帰りたいと言っている。
 
晴「福、行こう」

 晴海が手を差し出してきて。
 
福「……」
 
 福助は血と汗で汚れたその手を握り返した。
 
 

 三人の歩んできた道には、黒スズ大将の骸が点々と転がっていた。
 
 
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by RuLushi | 2012-02-11 00:57 | 二代目当主・咲也