ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1019年6月
 
牽「『お友だちから始めましょ』ってね! そりゃもう可愛いもんだったよ、春野鈴女ちゃん! 母さんが言っていたけど、あの感情を『萌え』っていうんだろうねー」
福「ああ、そう……」
 
 ジメジメと鬱陶しい梅雨が続く6月のある日。
 牽と福助は自室でそれぞれ、術の巻物を開いていた。
 
牽「はー、もう来月には、僕の子供が来るのかー」
福「早いね」
牽「本当に、なんだか不思議だよね」
福「そうだね」

 しばらく牽の語る他愛のない内容を聞き流している辺りだった。
 彼が突然言い出した。

牽「……そういえばさ、福助は最近、ずいぶんと晴海ちゃんと仲が良いよね」
福「……なんのことかな」
 
 微妙な空気が流れる。

牽「……」
福「……」
牽「……いつもふたりで、お喋りしているみたいだけど」
福「……気のせいだよ」
牽「……僕が行くと、さっさと離れたりさ」
福「……気のせいだよ」
 
 牽の問いに視線を合わせようとしない福助。
 
牽「あのさ、ずばり聞くけどさ」
福「……」
牽「……晴海ちゃんのこと、好きなんでしょ」
 
 福助は鼻で笑う。

福「……なんだよそれ、誤解だよ。牽じゃあるまいし」
牽「ふ、福助」
福「彼女が生まれたときから僕は一緒にいるんだよ。いくらなんでも、そんな感情を持つはずがないよ。バカじゃないの。ありえないってば」
牽「お、お前……!」
福「ああ、これは僕の持論だから、牽には関係ないよ。気にしたならごめんね」
牽「べ、別に僕は鈴女ちゃん一筋だし!」
福「そっか、じゃあいいじゃない」
牽「でも兄として気になるんだよ!」
 
 やたらと噛みついてくる兄に、福助もまた苛立ちを隠そうとしない。
 
福「あのね、僕は晴海さんのことを心配してるんだよ。牽みたいな野獣と一緒に暮らしているわけだし」
牽「誰が野獣だよ! すっごく大人しいって近所でも評判だよ!」
福「晴海さんの裸を見て、鼻血出しそうにしてたくせに」
牽「い、いいいいつの話だよそれ! って、っていうかそんなことしてないし!」
福「いや、動揺しすぎじゃないかな……」
 
 引くわー……、と小さくつぶやく。
 牽がキッと睨んできた。

牽「いーや、双子だからわかるね! 福助は適当なことを言うのばっかり巧いから、すっかり騙されそうになったけど、君だって晴海ちゃんのことが好きなはずだよ!」
福「はずだよ、って言われてもな……」
牽「どうせいつもみたいに、自分で自分の心にウソついているだけなんだろ! 僕にはわかるんだぞ!」
福「それはだから、牽の勝手な想像で……」
牽「どうして目を逸らすんだよ!」
福「……暑苦しいから、だよ」
 
 ガラッ、と戸が開かれる。
 牽と福助は互いの頬をつねり合っている状態で、横を向いた。

晴「おーい、福助ー! きょうも暑いなー! 出陣の時間だぜー!」
 
 きょとんとした晴海の表情。彼女は小さく首をひねる。
 
晴「どうした? ケンカかー?」
牽「い、いや……」
福「これは……」
 
 慌てて離れるも、晴海は訝しげにこちらを眺めてくる。
 すると牽が、がじがじと頭をかきながら叫び出す。

牽「あーもう! 僕やっぱりこういうのイライラして耐え切れない!」
晴「お、おう?」
福「ちょ、ちょっと、牽……」

 嫌な予感を覚えた福助が思わず手を伸ばすも、牽は気にせず。

牽「ねえ、晴海ちゃん。僕と福助と、どっちが好き!?」
福「はぁ!?」
 
 福助は思わず牽を殴った。ガツン、と。
 牽の首が曲がって明後日の方向を向く。
 
福「そういう繊細なことをあっさりと口にするんじゃないよ!」
牽「だって気になるじゃん!」
福「心に閉まっておけよ!」
牽「だから気になるんだってば!」
福「君ってやつは!」
 
 牽と福助はもう9ヶ月才だ。身体も大きい上に筋肉質なので、本気でケンカするとそれなりに部屋も壊れてしまう。
 近寄るとやはり危険なのだが、晴海は迷わずふたりの間に飛び込んだ。

晴「やめなさい!」
 
 少女の小さな手が牽と福助の手首を鉄輪のような握力で掴む。
 
牽「は、晴海ちゃん……!」
福「あ、危ないな……さすが拳法家……」
 
 と言いかけたふたりの言葉が途中で途切れた。
 晴海がふたりの手首を掴んだままひねる。それだけでふたりの身体は宙を舞った。
 どすん、とわずかに屋敷が揺れる。

牽&福『~~~~~~~~~~~~~~~~~!』

 牽と福助は頭を抱えながら、声にならない叫び声をあげている。
 その前に立って、晴海は腰に手を当てている。

晴「牽! 福! 正座!」
牽「……え?」
福「……う、うん……?」
晴「早く!」
 
 涙目のままで牽と福助は即座に正座する。
 
福「……なんで僕まで……」
晴「いいか、ふたりとも! 晴海たちはこれから、鬼退治に行くんだぜ!」
牽「はい……」
晴「それなのに、どうして兄弟でケンカするんだ! 晴海だって怒るぞ!」
福「……もう怒っているじゃないか……」
晴「もっともっと、ってことだ!」
牽「それは怖い……ていうか痛い……」

 まるで鷹のように目を光らせながら、晴海は双子を見やる。

晴「で、なんだって?」
牽「え?」
晴「晴海は、牽と福でどっちが好き、だっけ?」
福「あ、いや、それはもう……」
牽「うん、そう!」
 
 テメエ……、と福助が睨むが、牽は気づかない。
 
晴「晴海としては、どっちが好き、っていうのもないんだけど……」
福「だ、だよね……」
牽「でもあえて選ぶとしたらどっち!?」
福「お前もう黙ってろよ……」
晴「あえて、かあ……」
 
 考え出す晴海を、牽はワクワクと、福助は嫌そうに見つめている。
 
晴「うーん……」
 
 腕組みをしつつ、晴海は真剣な調子だ。なんにだって手を抜いたりはしない。そんな彼女は、本当に純粋で良い子だと福助は思う。
 
福(でも、どうせ僕が選ばれるわけがないんだから、牽のやつ……)
 
 またもイライラが募る。
 ちらちらと視線を動かしていた晴海が、小さくうなずいた。晴海の唇がゆっくりと開く。
 きっと、牽の名を告げようとして――
 
咲「おい、お前らおせえ。なにやってんだ」
 
 いつの間にか晴海の後ろに立っていた咲也は、顎をさすりながら当惑した顔のまま言った。

咲「……なにやってんだ?」
 
 彼の前には、正座をした牽と福助、それに腕組みをしている晴海がいた。
 
牽&福&晴『……えーっと……』
 
 三人の声が、見事に重なった。
 
 

 ~~
  
 
 
<白骨城>
 
咲「今月は時間がねえからな。ちゃっちゃと行くぞ」
 
 咲也は早速、速風の御守を使用する。
 
晴「おう!」
 
 戦場に出るのが初めての晴海は、両拳を握り締めて意気揚々としている。その衣装がまた、なかなかに凄い。
 
福「過激な格好だね、晴海さん……」
牽「足、露出しているぞ、あれ……」

 二の腕から先が出ているのはともかく、下半身は股を布が覆っているぐらいだ。嫁入り前の女性としては、あられもない。
 見ているこっちが恥ずかしくなってくる。
 
福「晴海さんに、次は身だしなみに関しても勉強させなきゃな……」
牽「え、なんだよそれ」
福「……いや、なんでもない」
牽「むむむ……」
 
 牽の視線から逃れるように福助は先に行く。
 

 
 かくして、再び四人揃った荒神橋一族は、夢残ヶ原を走り出す。
 

 
 今月の咲也の目的はひとつの術書。

咲「<速瀬>だ」
 
 咲也は息を切らせながらついてくる娘に語る。

咲「俺たちに与えられた一ヶ月は短い。だからこそ時を縮めるための手段は、かけがえのないものだ。わかるな、晴海」
晴「……ああ」
咲「代用手段として今は速風の御守を用いているが、この道具は携帯袋を圧迫すっからな。常に持ち歩くのは金もかかってしょうがねえ。その上、6つでもまだ足りないと来た」
晴「だから、その、移動速度をあげる術なんだな」
咲「そういうことよ」
 
 親子が並ぶと、頭ひとつ分ほども背丈が違う。咲也を見上げながら、晴海も力強くうなずいた。

晴「父ちゃん、もっともっと晴海に色んなことを教えてくれよな」
咲「……ああ、もちろんだ」
 
 四人の前には、禍々しくそびえ立つ白骨城。
 
咲「行こう」
 
 白骨城に足を踏み入れるのは、一年ぶりだ。
 右も左もわからなかったあの頃とはなにもかも違う。
 咲也は胸を張って、進軍を開始した。
 
 
 
 ~~
 
 
 
 本当ならば、咲也に出陣する意思はなかった。
 咲也の年齢はすでに1才5ヶ月。

咲(誰にも弱音を吐くことができないってのは、なかなかどうして、面白くねえもんだぜ……)
 
 奇跡でも起こらなければ、大江山に昇ることはかなわない。それはすでに瑠璃に言われたことであったため、自身の中に失望は少なかった。
 だから、これ以上経験点を稼ぐつもりもなく。
 
咲(だけど……今月は、どうしても<速瀬>を取得しておきたいもんな)
 
 経験点と討伐速度。そのふたつを天秤にかけた上で、咲也は<速瀬>を選んだ。
 こういうことを捨取選択することこそが、当主の役割だと思えたのだ。
 
咲(それに、ま、俺がなにか教えられることもあるかもしれねえ、か)
 
 初陣の晴海は拳と蹴りを武器に、果敢に鬼に挑んでゆく。
 しかし、彼女の本分は攻撃の技ではない。晴海に求められているのは、一族の命を繋ぎとめる回復の術だ。それはある意味で、もっとも困難な役割だ。
 
咲(誰かが凶刃に倒れれば、晴海はそれを悔やむだろう……もし命を落とせば、一生後悔するに違いない……) 

 誰かを守るということは、なによりも難しい。
 だからこそ、咲也は晴海にその役目を託そうと思う。誰よりも心優しい晴海に。

咲「これから進む先には、色んな敵が待つけどよ」
晴「おう」
 
 初めての実戦に気分が高ぶっているらしき晴海の頭を、咲也が撫でる。
 
咲「負けんなよ、晴海」

 晴海が咲也の表情を仰ぎ見たのは、その声があまりにも優しかったからであって。
 
晴「……あ、ああ、父ちゃん」
 
 今はまだ、戸惑うだけだとしても。


 
 アシゲの祭壇で襲いかかってくる恨み足を、荒神橋一族は2月、瑠璃と最期に出陣した鳥居千万宮で入手した<花連火>の併せ、六倍撃で火葬に付す。
  
 
 
 ~~
 
 
 
 たどり着いたのは、白骨城の十二ノ丸。
 残る火は5つ。
 一同は燃え髪大将を狩りに狩る。 
 
 悪鬼もかくやあらんという勢いの咲也に、牽も福助も口を挟む余裕がない。
 技もさることながら、大岩を叩き割るような勢いで振り回される薙刀に、血と肉とがばらまかれてゆく。
 
 だが、<速瀬>は出ない。
 落とさない。
 焦燥感だけが募る。

晴「父ちゃん、時計の火は残りあとひとつだぜ……」
咲「ハァ、ハァ……」
 
 蒸し返すような暑さの中、気が遠くなりそうになりながらも挑みかかることを止められない。
 牽も福助も意識が朦朧としているのか、まるで亡者のように斬りかかる。

咲「だが……術書がまだ……!」
晴「父ちゃん……」
咲「……晴海、もしかしたら、今月は<速瀬>を入手できなかったとしても、だ」
晴「……ああ」
咲「ただ、最後の一瞬まで諦めるなよ。常に人事を尽くすのだ。ひたむきであれ。その気持が、崩れかかった時に、力をくれるはずだ。覚えていてくれよ、晴海」

 咲也が最後の燃え髪大将を、脳天から真っ二つに両断する。
 それで、おしまいだった。

 
 ついに、術書は出なかった。
 その場に薙刀をついてあえぐ福助。大の字に寝転がる牽。壁にもたれかかっている晴海。彼らを見回して、咲也は天を仰ぐ。

咲(たとえ、知識があったとしても成功させることができない……これが俺の、天運……つまりは、“分”ってところなんだろうな……)
 
 あまりの疲労感に、全身から力が失われてゆくようだった。

咲(瑠璃……)
 
 指輪をなぞりながら、先代と自身の名を呼ぶ。

咲(俺は、お前のように、彼らに何を残すことができるのか……)
 
 顎を伝い滑り落ちる汗を拭うこともせず、咲也は目を瞑る。
 
咲(俺は……)
 
 これから歩むであろう、晴海たちの苦難の道程を。
 できることなら、ほんのわずかにでも照らせられれば。
 
 
 あまりにも長く、しかし一瞬のようだった一ヶ月は過ぎ去る。
 翌月は7月だ。
 夏と、新たな家族がやってくる月だった。
 
 
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by RuLushi | 2012-02-01 02:11 | 二代目当主・咲也