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ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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=荒神橋家私書箱=
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1018年12月前編
<咲也の子>

 12月の寒さ厳しい交神の間。
 厚着をした瑠璃と普段着の咲也だ。

瑠「すごいなー、さくちゃん、よく寒くないねえー」
咲「なんかな、慣れてきたんだよ。色々と……」
イ「なんだか重みがありますねえ」
 
 どてら姿のイツ花も、鼻をすすってやってくる。
 その格好は妙に似合っていた。
 指先を袖の中に埋めたまま、イツ花はぱちぱちと手を鳴らした。
 
イ「椿姫ノ花連さまから、新しいご家族を預かって参りました! おめでとうございます!!」
 
 咲也は一瞬だけ緊張する。
 
イ「女のお子様です」

 思わず咲也は瑠璃を見やる。瑠璃は「?」を頭の上に浮かべていた。
 
『あたしが求めるのは、<円子>を扱える『女性』の『拳法家』。その子が誕生したとき、荒神橋一族の戦い方は劇的に変わるのさ』

 彼女はそう言っていた。
 ついに、揃ってしまったのだ。
 
 何もかもが“瑠璃”の手のひらの上で踊っているようだった。
 
イ「でも性格は、豪快そのもの!!」
咲「……豪快?」
 
 なんだろうか、その咲也にも花連にもない要素は。
 がらり、と戸が開いた。 
 

 「よう、初めましてだ」

 
 肌は白く、目の色も青。髪までが青だが、そのうちの一房が白い。
 髪を短く刈り込んで、まるで男の子のようにキラキラと目を輝かせていた。
 
咲「女の子か……」
 
 いくつか考えていたものの、女性の名前はひとつも思い浮かばなかったのだ。
 咲也が困っていると、瑠璃がニコニコと箱を手渡してきた。
『命名箱』だ。
 
咲「……仕方ない」
 
 なんとなくこのまま、『命名箱』による名付けが定例となってしまいそうで恐ろしかったが、やってきたばかりの少女をいつまでも待たせておくわけにはいかないだろう。
 紙を引く。
 
 
 少女の名は『晴海(はるみ)』。
 水の属性を色濃く残す彼女には、よく似合うと思われた。
 
晴「いい名前じゃねえか。気に入ったぜ、父ちゃん」
 
 晴れ渡った海のように、爽快に笑う。
 気持ちの良い笑い方だ。
 
 瑠璃は顔の横で両手を組んで、身悶える。

瑠「はー……ついに、一家に新しい女の子かぁ……」
 
 まだ鼻血は出ていないが、耳まで赤く染まっていた。
 夢見るような瞳で、瑠璃は晴海を見つめる。

瑠「これでついに……いっしょに、おふろに……」
咲「ああ、そういうことか……」
 
 ずーっと言っていた瑠璃の夢がようやく叶うのだろう。
 
瑠「ねえねえ……ふうふふふ……晴海ちゃん、さっそく、瑠璃さんとお風呂に入りましょうかぁ……ふうふふふ……」
 
 変質者さながらの顔で近づく瑠璃が、この屋敷の当主なのだ。
 晴海は少年のように笑う。

晴「いいぜ、“おばあちゃん”!」

 咲也は思わず腰が砕けてしまいそうになった。
 自分とわずか4ヶ月しか年の変わらない瑠璃が、婆呼ばわりとは。
 
 しかし、瑠璃はこの上なく嬉しそうだ。

瑠「わーお、やったー! 晴海ちゃん大好き大好きー! ちょう萌えるー!」
晴「そんなことを言われちまうと照れるぜ、はっはっは」
 
 抱きついてくる瑠璃を撫でる晴海という姿は、どこからどう見ても逆だろう、と咲也は思っていた。
 

 
 

<念願のお風呂>

 晴海を連れて、瑠璃は昼風呂へとやってきた。
 とんでもなくウキウキしている。
 
瑠「さーてー、晴海ちゃん……ふうふふふ……ヌギヌギしましょうね、ヌギヌギ……」
晴「お、おう」
 
 見えない圧力を感じたのか、晴海はなにやら固まっているようだ。
 その間に、瑠璃は手早く晴海の着ているものを脱がせてゆく。
 
瑠「イツ花さんは『わたしは身分が違いますからァ』って言って、一緒に入ってくれなかったし、さくちゃんは恥ずかしがり屋だし、けんちゃんふくちゃんも嫌だっていうしー」
晴「寂しい思いをしていたんだな、おばあちゃん」
瑠「そんなことはないよ。あたし毎日とっても楽しいんだから」
 
 裸になった瑠璃は、晴海の後ろに回り、幼子の肩を押す。
 暖気の篭った浴室には、湯気が立ち込めており、それはまるで幸福の香りのようだった。
 
晴「おお、これが下界の風呂ってやつか」
瑠「そうだよー。まずは身体をキレイキレイしましょうね」
 
 瑠璃が晴海を洗い場の風呂桶の上に座らせると、彼女は手ぬぐいに石鹸をつけ、晴海の肌を丁寧にこすってゆく。
 晴海は時折身悶える。

晴「なんだかくすぐったいぜ」
瑠「晴海ちゃんの肌はどこからどこまでもすべすべだねえ……陶磁器みたいにつるつるしてて……」
晴「おばあちゃんの手だって、晴海とあんまり変わらないんじゃねえか?」
瑠「ああ、ホント萌えるよ、晴海ちゃん……がぶ」
晴「――!?」
 
 なにを思ったか突然首筋に噛みつく瑠璃。晴海は驚いて振り返りながら後ずさりした。真っ赤な顔で首を抑えている。

晴「い、いきなりなんだ!? なにしやがるぜ!」
瑠「いやあなんか、美味しそうに見えちゃって」
 
 あはは、と笑う瑠璃。もう大丈夫だから、とぽんぽんと風呂桶を叩く。晴海は顔をしかめて、渋々と元の位置に戻る。

晴「びっくりするぜ、まったく……」
瑠「じゃあ今度から許可もらうよ。食べていい? って」
晴「基本的にはダメだぜ!」


 湯桶で泡を洗い流すと、ふたりは檜の浴槽に浸かる。お湯がわずかに溢れ、洗い場の上を滑り落ちる。
 
 
晴「うおっ」
 
 と、瑠璃の胸によりかかっていた晴海が、唐突に身を引いた。

晴「な、なんだかチクッとした!」
瑠「え? あ、なんだろ?」
 
 瑠璃が右手を挙げると、窓から差し込む光に照らされて、きらりと指輪が輝いた。
 当主の指輪だ。
 ゆっくりと指を近づける晴海。触れるか触れないかのところで、手を引っ込める。

晴「なんだか、触るとぴりって感じるな……」
瑠「へえ、そうなんだ。やっぱりなにか特別な力があるんだろうねえ。っていうのも、あたしもね」
 
 と、笑顔で話し出しそうになって、瑠璃は口元を手で押さえた。
 晴海が首を傾げる。

晴「どうしたんだぜ?」
瑠「えーっと……い、今から言うことは、女同士のヒミツだからね? 晴海ちゃん、誰にも喋っちゃダメだよ」
晴「いいぜ、任せておきな!」
 
 間髪入れずに親指を立てる晴海。なんとも男らしい笑顔だ。
 瑠璃もほとんど疑わずに、晴海の頭を撫でる。

瑠「この指輪をつけているとね、色んなことがわかっちゃうし、すごく勇気が出て、なんでもできるような気になっちゃうんだよ」
晴「すげえな、変わった道具なんだなー」
瑠「うん、とってもすごいんだ」
 
 瑠璃は自らの指輪を愛おしそうに撫でる。

瑠「全て、なにもかも、この指輪のおかげなんだ、ここまで戦ってこられたのは……でもその代わりに、さくちゃんにはたくさん無茶をさせちゃったけど……」
晴「おばあちゃん?」
瑠「あ、ううん、なんでもないよ、大丈夫」
 
 瑠璃は笑みを、晴海にも向けた。

瑠「いつかはこの指輪は、晴海ちゃんのものになるんだから……お願い、大切にしてあげてね」
晴「もちろんだぜ」
 
 湯に濡れた手で瑠璃は晴海の頬を撫でる。

瑠「……ごめんね、晴海ちゃん……ごめんね……」
晴「ん、んん?」
 
 晴海はどうして瑠璃が謝っていたのかわからず、首を傾げる。
 それどころか、瑠璃の言葉がつまりはどういう意味を差すのか。このときの晴海はまだほとんどが理解できていなかったはずだ。
 

 一年後かに、もしかしたら思い出す時があるのかもしれない。
 

 次代の当主を約束された少女、晴海。
 彼女の物語は、ここから始まるのだ。
 
 
 
by RuLushi | 2011-12-23 21:50 | 初代当主・瑠璃