ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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2006年 10月 25日 ( 1 )
1026年 4月第1編

 真名姫が天界に戻ったこの月、ついに地獄への扉が開いた
 それからまもなくして、巨大な赤い印の中から、今までとは比べ物にならないほど凶暴で頑強な鬼たちが溢れ出た
 手練の侍をも腕の一薙ぎで吹き飛ばすその怪力に、京の都はまるで蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、壬生川屋敷の前には連日多くの人が詰め掛けてきていた


<同時刻、壬生川会議の間にて>

 外の喧騒も届かない影の落ちた部屋、まだ正午前だというのに日当たり悪く、室内は薄暗い
虚「ふむ」
 虚空は手元の記録を静かに閉じる
 前御三家、柚子、瑞穂、ほたるの跡目を継いで、この場に居るのは新三家
月「それでは、おふたりの腹も決まった、ということでよろしいですね」
 1才2ヶ月の臥家の娘、月見が両隣に座る姉と夫を仰ぐ
 勝気な母親に似て、ずっと落ち着きの無かった少女が今や母、口うるさいのは相変わらずだが、努力と共に磨いたその武芸のように、意思の強い芯が確かに通っていた
竜「ええ、望むところよ」
 肩にかかる髪を払って、竜子がうなずく
 その隙間から、朱色の飾りが覗いた
竜「私の覚悟は、証明する必要もないでしょう」
 机の上には、先月までの武録、それに<卑弥子>の術書、そして帳面
 先月の終わり、竜子は朱の首輪を身に着けた、その甲斐あって、彼女は<卑弥子>や<雷獅子>を含めた全ての術を修得するに至ったのだった
月「<卑弥子>があれば、戦いは楽になると思いますけど、でもやっぱり、ボク心配です」
 不安げな顔をする月見に、竜子は首を振る
竜「体に変化はないわ」
 300を越える技力を持つ、幸家宗主は薄く微笑む
 体の火を除く全ての資質で母親を凌駕した彼女は、1才5ヶ月になっても、その空気をも変えてしまうような美貌に衰えはない
虚「では、これにて話し合いは締める」
 壬生川当主が、十分な間を取って、ふたりに続けた
虚「これが、最後の御三家会議じゃ」
竜「ええ」
 朱点を倒したら家を出る、竜子はそう言った
 人並みの命を得て何をするつもりなのかは分からないが、月見は離れることは哀しいことではないのだと思っている
虚「イツ花が、もうじき余の子が着くとか言っておったな……そろそろ、余は外のやかましい連中の相手をしておくか」
 虚空が立ち上がって、無愛想な顔をさらにしかめて呟く
月「当主の務めですよね、頑張ってください、十一代目!」
 月見の声援を受けて戸を開く虚空、日の光と春風が部屋に差し込んでくる
虚「あしらってくれるわ」
 逆光の中から、不敵な声が届く
 先代当主が指輪を託した人は、こんなに立派になりました
 声に出さずつぶやいて、月見は10ヶ月才になった旦那に、行ってらっしゃい、と手を振った


 術書の復習をするという竜子と別れて、月見は怪我人の元に向かう
竜「月見」
 その途中で、ふいに姉に後ろから呼び止められた
月「あ、お姉様、お勉強しに行ったんじゃ」
竜「少し、いいかしら」
月「どうかしましたか?」
 向かい合うと、月見は見上げる形になる、そういえば虚空はいつの間に竜子の身長を抜いたのだろう
竜「今まで、ありがとうね」
月「え、え?」
 そう言い出した竜子は、半ば信じられないことだが、どうやら照れているように見えた
竜「貴方と虚空の助けがあって、ここまで来ることが出来たわ、今まで迷走したこともあったけれど、あともう少し」
 まるで、九代目当主が生きていた頃のような微笑みだった
 戸惑って言葉が出ない月見に、竜子は告げる
竜「先祖の、ううん、母さんのために、朱点童子を倒す……それが、私の永久不変の願い、もう少しだけ、手を貸して頂戴」
月「そんな、ボクこそお姉様に助けて貰ってばっかりで、お互い様ですよ」
 快活に笑う月見に、そういえば、と竜子が首を傾げてみせた
竜「気になっていたのだけど……どうして貴方、あの子と結婚したの」
月「え、ええ……w」
 竜子の意外な発言に、月見は少し焦る
月「さ、さすがにもう照れるような時期じゃないですけど……ほ、ほら、人の気持ちって簡単に移り変わるものなんです、偉い歌人さんも言ってますよっ」
竜「そうねぇ」
 納得したようなしてないような声を出して、竜子はじゃあね、と去ってゆく
竜「……ずっと、変わらない想いもあれば、変わるものもある、か……本当に、あと少し」
 去り際に、何かをつぶやいていたが、それこそがいつもの竜子のため、月見はあまり気にしない
 

月「烈くん、寝てますかー?」
 月見が声をかけてから、烈の部屋の戸を開く
 と、中では烈と左京が腕相撲をしていた
烈「ぐ、ぐぐぐぐ……左京くん、本気でやっているよね……!?」
左「……うん、かなり」
 右腕一本の烈相手に、左京が両手で挑みかかっている
月「ちょっと何しているんですか!w
 月見が組み合うふたりを引っぺがす
烈「え、腕相撲?」
月「見れば分かりますから!w」
 ちなみに今月の烈は重傷人である
烈「ていうかすごいんだよ左京、腕相撲やっててもぼーっとしているの!」
左「してない……春眠暁を覚えず」
月「そんなの嬉しそうに発見しなくていいから、寝てなさい!w」
 月見に怒鳴られて、しぶしぶ布団に入る烈
烈「月見お姉さん、怒りんぼー!」
左「……怒りんぼー」
月「黙って寝てなさい!w っていうか、何一緒になって言っているの、左京っ」
 慌てて布団に潜る烈、その前で月見が息子の耳を引っ張る
左「痛い痛い……」
 母親の手を解いて、赤くなった耳を撫でながら、左京がまぶたを閉じる
左「痛い……痛くて、眠い……」
月「キミの頭の中はどうなっているんですか……w」
 ため息をつく、次世代がこんなんで大丈夫だろうか
 でもそういえば、虚空が来た当初も自分はそんなことを言っていた気がする、と月見は思い返す
烈「ねね、そうだ月見お姉さん」
月「はいはい?」
 5ヶ月になってもまだまだ幼く目を輝かせている烈が、布団から少しだけ顔を出して言う
烈「この前の龍を倒したから、朱点童子の秘密基地が出てきたんでしょ?」
月「え、ええ、そうですよ」
 秘密基地て
烈「ぼくも怪我を治したら、即助太刀するから、それまで我慢しててね!」
 にっこりと笑う、若き剣士
月「……そのためには、しっかり寝て、体を休めないとダメなんですからね?」
烈「あっちゃあ、そう言われちゃうのかぁ」
 舌を出してから、烈は再び布団に潜る
 月見は寝太郎の術をささやこうかどうか迷ってから、まあいいか、と左京に向き直る
月「さ、烈くんの休む邪魔しちゃダメですよ左京、戻りましょう」
左「……部屋で、二度寝」
月「あなた少しは体動かしなさい!w
 ずーるずーると息子の首根っこを掴んで、月見は烈の部屋から出てゆく
 

 庭は、桜木が桃色の彩りを加えていた
 今年は時期が遅いのか、満開にはまだ遠いが、それでも圧巻の美しさである
夕子「さ、どうぞ」
 休憩がてら居間にやってきた竜子にと、まるで待ち構えていたように夕子が茶を差し出した
竜「……貴方、まだいたの」
夕子「……」
 割烹着がなかなか様になってきている、でも割烹着が似合う神様というのはどうなのだろうか、渡された緑茶をすすりながら、竜子は庭に目を向けた
竜「去年は、月見が来た翌月だったかしら」
 虚空がまだ産まれていなかったため、女だけの花見であった
夕子「竜子様が“お母さんの娘でよかった”とおっしゃった月ですね、昼子の記録にも残っています」
竜「何しているのあの人」
 思わずこめかみを押さえる竜子
 先ほどから庭池があったはずの場所にこんもりと土が被さっているのが、妙に気になってはいるが、それはともかくとして
月「あ、夕花さん、来てらっしゃったんですね」
左「……こんにちは」
 臥家の母子に無言で頭を下げる夕子
夕子「今、お茶いれます」
月「あ、どうぞお構いなく、っていうかボク手伝いますよー」
 月見は台所へと消える夕子の後を、小走りで追っていく
 やがて、五人分の湯飲みと茶菓子を持って、ふたりが出てきた
竜「……多くない?」
月「ボクと左京、あの人と烈くん、それと夕花さんの分ですよ」
 月見は左京に、烈が起きていたら誘ってくるように言いつけると、並べた桜餅に手を伸ばして頬張る
月「うわ、甘くて美味しい、これ夕花さんが作ったんですか?」
夕子「ええ、がんばりました」
 竜子並に表情が読めない夕子が、心なしか誇らしげに見える
 左京と入れ替わりで、今度は長袴を着飾った珍しい出で立ちの虚空が帰ってきた
虚「やれやれ、やかましい奴らじゃったわ」
月「おかえりなさい、あなた」
 どっしりと居間に腰を下ろした虚空の湯飲みに、月見が急須を傾ける
月「結局、どうしたんですか?」
虚「どうもこうもないわ、邪魔だから蹴散らしてやった
月「け、蹴散らして?」
虚「おうよ、すぐに朱点など打ち倒して見せると言ってな……というか、余の湯飲みから茶が溢れておるのじゃが、熱い、熱いぞっ」
月「は、ごめんなさい、呆然としちゃってました」
 慌てて布巾を取り、虚空の袴にこぼれた茶をふき取る月見
竜「……なんか」
 その様子を眺めていた竜子が、淡々とつぶやく
竜「貴方たち、ちょっと気持ち悪いわね」
虚「何がじゃ!w
月「何を言い出すんですか!w
 息もピッタリ、すっかり夫婦の貫禄だ
夕子「いいえ、充分おもしろいものですね、こういうのは」
虚「面白がるなっw
 フォローしたつもりの夕子にも怒鳴る
左「……呼んできた」
烈「おはようございまーす」
 屈託なく微笑む烈を見て、月見が左京に尋ねる
月「今度は何してました?」
左「……部屋の中で、超素振りしてた」
烈「ちょっと左京!w
 アイコンタクトする間もなく裏切った弟に叫ぶ烈
月「……烈くん、そこに座ってしっかり体休めなさい」
烈「は、はい……」
 月見の結んだ両房の髪がピンと逆立っているのを見て、烈はうなだれて少し離れたところに座る
 ふと気づいて、虚空は居間の面々を見回した
虚「壬生川家、全員集合ではないか」
 いつ以来だろう
左「……初めて見た、揃ったところ」
虚「珍しいな、記念に幻灯屋でも呼びつけるか?」
月「そこまでしなくてもっw」
 本気で言っているように見える虚空に、とりあえず月見が突っ込む
竜「桜も咲いたのだもの、たまにはね」
 一番の欠席者がしゃあしゃあとつぶやく
 竜子の言葉に、皆が自然と庭に目を向けた
烈「桜、綺麗だね、すごい桜色お祭り!」
虚「余も、見るのは今回が初めてじゃな……いいものではないか」
 寝息を立て出した左京以外の、初めて桜を見たふたりが口々に述べた
 雪のような花びらが、壬生川家の庭に降り注いでいる
夕子「この桜が咲くのは、今年で9回目ですね」
月「9回目……」
 何か言い表せないような感情がこみ上げてきて、思わず月見は桜木に見とれてしまう
虚「桜が人の生き血をすすって生きる妖樹ならば、とてもこうまでは育たなかったろうな」
烈「何それ?」
虚「儂らは外で血を流し過ぎておる、あれにやる分などもう残っておらんよ……それも、これまでじゃがな」
 そう言って、虚空は茶を噛みつくように飲む
夕子「そろそろお時間です、みなさま、庭へ」
 突然夕子が立ち上がり、一同に庭に下りるように促す
烈「え、なになに?」
竜「……時間?」
夕子「はい」
 疑問を浮かべながらも、夕子の無言の勢いに押されてしまう
 縁側でわらじを履く虚空がふと見上げると、太陽の輝きがいつにも増して、強まっているように見えた
 庭に立つ一族に、太い光が注がれる
夕子「おりてきます」
 夕子の言葉で幾人かは察していた、恐らく壬生川屋敷の周りに集まっていた人にも見えるだろう、この陽光は
左「……眩しい」
 先ほどまで寝入っていたはずの左京まで、目を擦りながら庭に下りてきた
 光が、埋め立てた池のあった辺りを照らすと、そこに花開くように立派な泉が湧きあがった
虚「せっかく潰したというのに……!」
 金色の風が吹くと、六分咲きだった桜が、次々と開花してゆく
月「うわ、綺麗!」
虚「……あの池、余計な事を」
 手加減も容赦もない神の御力だ
 見上げても果ての見えない天から、一筋の光明が下りてきた、それを囲むように数多の偉大な獣たちが武器を掲げているのが薄ぼんやりと見える、きっと神々が祝福してくれているのだろう
 神の血を引く一族には見える、白金の中心に小さな子供の姿があった
 近づけばそれは、影がなくなるほど眩い光に包まれていて、やがて光が吸い込まれてゆくように幼子の中に集まっていった
夕子「いらっしゃいましたね」
 烈や左京は手のひらで顔を覆い、指の隙間からわずかに細目を開けていた、竜子はいつもと変わらず平然と立っていて、月見は虚空の腕を知らず掴んでいた
虚「ああ」
 虚空の視線の先には、幼いながらも温かな光に守られた長い髪の少女がいた
夕子「あちらの子が、あなたさまの生きた証です、どうぞ名を付けてあげてください」
 空を切り取ったような青い髪の少女は庭に降り立つと、ゆっくりと瞳を開く
 理智的な蒼い瞳が、無邪気に微笑む

「初めまして、パパ、ママ、向こうでふたりのことたくさんきいたのよ」


=第2編へ=
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by RuLushi | 2006-10-25 02:46