ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1026年 4月第5編
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<亡者砂漠>
 
 三人は落ちた亡者砂漠の中で、何故ただの砂地が地獄と呼ばれるかを知った
 冷える、体の芯から熱が奪われてゆくようだ
 薄墨色の砂粒は凍っているのではないかと思うほど、冷たく、光も届かない極寒のこの地に来て三人の口数は激減した
 墓場のような砂漠は見渡す限りに広かった、その上、かつて一族が苦戦した金色館のように、地形と地形が不思議な力により複雑に繋がっている
竜「……この、開けてある宝箱」
虚「先ほどもここを、通ったということじゃな」
 白い息をはき出しながら、虚空が<白鏡>と<黒鏡>を唱えた
 進んでいる、という確かな手ごたえを得られないこの状況は、三人を著しく疲弊させた
 時登りの笛も、いまだ手に入らない
月「何だか、イツ花さんのお味噌汁が恋しくなってきましたね」
 寒さに震えながら、月見が笑う、気丈な笑みだ
虚「余は熱燗が良い」
 道しるべは無いが、とりあえず北東の方角を目指すという方向で、三人は足を進める
 亡者とは、死人であり、執念に取り憑かれている者のことだ
 砂漠につけられた亡者の名は、こうして足掻いている壬生川一族の事なのかもしれないな、と虚空は思った

 
<一方、壬生川家では> 
 
 御三家が出陣した後の壬生川家に、ちょっとした騒動が起こっていた
美「やっぱり、おうちの中にはいないみたいよ!」
夕子「そうですか、ありがとうございます」
美「んもー、美月たちにしんぱいかけるなんて、だめなおにいちゃんね!」
 腰に手を当てて、頬を膨らませる美月
イ「となると、やっぱり向かったんでしょうネェ」
 居間には、夕子、イツ花、美月、それに眠っている左京の四人がいた、つまりは烈を除いた壬生川家の全員である
 三人が自分が置いていったことを知ると、烈は大層落ち込んだ、左京や美月の言葉も聞き入れなくなるほどに
 烈は生まれた直後に、自らが母親と信じたほたるとの別れを体験している、親との生活をほとんど体験していないのは、当時すでに父を失っていた翠以来であった、今思えば烈の笑顔はまるで張り詰めた糸のように危ういものだったのだ、1ヶ月児がひとりきりの部屋で何を思っていたのか、知る由も無いが
 少年が何よりも恐れるのは殺されることではなく、遺されることだった、自分だけを置いて周りの環境が変わってゆくことが恐怖だった、虚空と月見が夫婦となって自分から離れていったことすらその一端を担っている、それに気づいたのはイツ花だけであったろう
 かくして、烈は屋敷を抜け出し、刀も満足に振るえないほどの重傷で三人の後を追った
 夕子がイツ花に目で問う、何柱かの神に捜させましょうか? こどもの足では地獄まではたどりつけないでしょうが、放置していた場合いのちに関わるかもしれません
 イツ花が微笑みながら、かぶりを振った
イ「じゃあ美月ちゃんは、おねえちゃんと一緒に、お利口さんに待ってましょうかァ、烈さんはタフそうですし」
美「うん、昼子おばちゃん、美月押し花つくってみたいの」
 その申し出に、美月が目を線にして笑う
イ「アラアラ、わたしはイツ花おねえちゃんだから、間違えちゃいけませんよォ、桜の花、集めてこないとね、イツ花おねえちゃんも手伝うからネ」
 あくまでも譲らないが、イツ花の目元はすっかり緩んでいる、まるで初孫が出来た初老の婦人のようだ
 そんな壬生川屋敷の空気を変える様な、凄まじい音が玄関の方から聞こえてきた
美「昼子おばちゃん……」
 美月がイツ花にしがみつく、今のは門が乱暴に開けられた音だ
夕子「鬼はこの家には侵入できないはずですが」
イ「はず、じゃなくて出来ないンですよォ、ちょっと見てきましょうか」
 イツ花と夕子が共に席を立つ
美「みつきもいくよー!」
 三人が玄関に赴くと、人間の気配が近づいてくる、大勢ではない、鎧の音が鳴っているのを聞くと、侵入者は武士のようだ
 戸が開かれ、美月がイツ花の後ろに隠れる
 そこに正座していたのは、青年だった
 「押し入った無礼は詫びます」
 青年が包帯の巻きついた顔を上げた
イ「あらあらァ……痛そうですネェ」
 イツ花が見ただけでも、青年は頭と右肩とあばらの骨にヒビが入っているはずだ、着ている鎧は乾いた血が張り付き、腰に下げている二本の鞘のうち一本は空だった
 青年はたったひとりだった
由「僕は、京都守護団の由一、お力添えを……」
 息を切らしながら、由一はかすれた声で言う
由「市街に鬼が入り込んで、もう、動けるものはほとんど」
 イツ花と夕子が顔を見合わせた
由「出てくる鬼は四月の初めで止まったんだが、京の鬼を追い出しきれないんだ、阿部の手の者も帝都防衛軍も、もう相当やられちまって……」
 当主たちが地獄に侵入したから止まったのだろう
 京都の隊長が、地上の切り札とも言うべき壬生川一族の元に訪れたということは、恐らく本当に抜き差しならない状況なのだろうが
イ「あのォ、頼ってきてくださったところ、申し訳ないのですがァ……」
 イツ花がおずおずと切り出すと、青年はしばらく呆然としていた
由「壬生川に残っているのは、女と子供だけ……?」
 夕子がうなずくと青年は自らの寿命が終わったかのような顔をして、それから乾いた声で喘ぎながら笑った
由「そうか、鬼の首を取りに行っているんだものな、僕はどうにかしていたみたいだ……なあに、壬生川のように、僕たちも出来ることをやるだけさ、邪魔して悪かった」
 イツ花の後ろに隠れていた美月が、顔を出した
美「あ、あの」
由「壬生川の子か……」
 外見年齢で8才ほどの青髪の美月が、由一の目を見つめながら言った
美「美月、たたかえるよ」
 太照天がふたりがかりで止めた
イ「いやいやいやいや」
夕子「いやいや、それは……」
 少女にはまるでそれが、熱が出た家族を看病するように、当たり前のことだと思えた
美「ちょっと行ってくるね」
 困っている人を助けたいというそれだけのために、美月はぴょんと玄関に下りて、わらじを結び出す
イ「美月ちゃん、本当の戦なんですよ! いっぱい血が出たりめちゃくちゃ痛かったりするンですよ! このお兄さんみたいになるんですよッ!?」
夕子「爪が剥がれ、皮膚が裂かれ、肉がえぐられますよ、それに0ヶ月児の出陣などきいたことがありません」
 座っている由一の顎元までしか背がない美月が、振り向いて微笑む
美「うん、心配かけてごめんなさい、行ってくるね!」
 その血は9割以上が神のものであるし、何と言っても太照天昼子の娘だ、生半可な鬼ではその神格に傷すら付けられないだろうが
 話から取り残されていた青年が、我に返ってつぶやく
由「この子が、僕たちを救ってくれるのか……?」
イ「そんな子に戦わせたら多分何か法律に引っかかりますよッ」
 廊下の方から、声が届いた
左「じゃあ……俺も行く」
 現れた赤髪の少年もまた、子供だった
左「……話は全て、大体聞かせてもらった」
イ「どっちですか!?」
 顔つきも声もまったく違うのに、青年はその少年の中にかつての友を見た
由「きみの母親は?」
左「……月見」
由「月見? じゃあきみのお婆ちゃんは……」
左「瑞穂」
 思わぬ名を聞き、拳を握り固めると、青年は立ち上がった
由「ありがとう、きみたちと、きみたちの先祖たちに感謝する」
 気がつけば、青年の傷もほぼ完治していた、唱えたのは左京の<お雫>だ
 美月が眠そうな目をこする左京に抱きつく
美「おにいちゃん、ありがとう!」
左「……美月に、良い格好を見せたかっただけだよ」
 そう言うと、左京は震える手で美月の頭を撫でた
 左京もまた、これが初陣なのだ
イ「もう、ふたりとも……怪我したらと~ってもニガいお薬出しますからネ!」
 むくれながらも見送るイツ花に手を振りながら、目の前の人を見捨てられないという一心で、美月と左京もまたそれぞれの戦場へと向かった
 

<修羅の塔>
 
 砂煙の向こうに、巨大な塔が見えた
 それは奇妙な形と色をしていた、遠目から見ても禍々しい筋が何本も表面に走っているのが分かり、全体は肉の中身のような薄紅色をしていた
 足の感覚はとっくに無くなっていた、それでも歩いてこれたのは、自分たちはひとりではないからだろう
虚「……朱点の住処か」
月「……やっと、来ましたね」
 霜で固まった砂を踏み砕きながら、一同はようやくその塔の巨大な扉の前までたどり着いた
 虚空がその扉に触ると、まるで本当に生きながら地獄に来たかのような、おぞましさが指先から全身に駆け巡った、扉は気持ち悪いほど生暖かい
 もう二度と、生きては戻れないかもしれない
 目を閉じて深く息を吸うと、虚空はゆっくりと扉を押し開けた
 暖気が外に流れてくるその時、再び声がした
 「そういえばこないだ何か約束をしたね、あぁ…そうそう、君たちの出生の秘密についてだったかナ?
虚「そんなもの、聞いたところで迷わぬぞ」
 「知らないほうが幸せってコトも、世の中にはたくさんある、アハハハ……だから話したいんだ
 壬生川の皆をどこからか見下ろしながら、今頃きっと朱点童子は笑っているのだろう
 「ズバリ言おう! 朱点童子を殺すためだけに生まれた、もうひとりの朱点童子、それが君たちの始祖の正体サ!
 その内容は、太照天昼子の言っていたものとわずかに違っているように思えた
 「この計画が耳に入ったときはさすがにボクも焦ったよ、とうとう天界も捨て身できたってね、だからもうひとりのボクが育つ前に、例の呪いをかけたんだ、先手必勝ってわけサ
 もうひとりのボクが育つ前に、ということは、すなわち……
 「アハハハ……殺すまでは考えてなかったよ、ボクはそこまで残忍じゃないし、楽しみが減るのはイヤだからね
 笑い声が引き潮のように遠ざかってゆく
 朱点童子の言葉に踊らされるつもりはないが、虚空はしばらく沈黙していた
 今までずっと、両親を失った不遇な赤子に、神が救いの手を差し伸べたのだと思っていた
 朱点童子を討つための、復讐の力を授けてくれたのだと、思い込んでいた
虚「齟齬があると思っておったら……そういうことか、昼子め」
 赤猫お夏やお業が言っていたことが、ようやく繋がった、つまり、玄輝の代からすでに壬生川は第三の存在であったのだ
 お輪か源太のどちらかが、神だったのだろう
 生まれた玄輝は朱点童子の力を秘めていたが、短命の呪いによってその才覚は目覚めることが無かった
虚「なんということだ……」
 昼子は刺客を立てた自らの計画の失敗を知ったが、呪い憑きの方が都合が良いと思ったのだろう、だから呪いを解かなかった、何というしたたかさか
 あやつは不運に見舞われた赤子に、解決策を示し、その方向性を少しだけ導いてやれば良かったのだ、全ての罪を朱点童子に被せて
虚「森羅万象、昼子に仕組まれた茶番であったか……」
 この瞬間、朱点童子が言っていた真実が虚空を襲った
 そんなことのために、玄輝を筆頭にした一族23人が死に絶えたのか、朱点童子ひとりを止めるためだけの昼子の計画のために
 一族だけではない、京の人間はその何百倍もの被害が出ている
虚「竜子! そなたは何も感じぬのか!」
月「あ、あなた、何を怒っているんですか?」
 怒鳴りながら肩越しに振り向く虚空に、竜子は冷めた目を向けた
竜「私にはどうでもいいことだわ」
虚「おぬしの母とて、昼子の被害者ではないか! ひとがたのように命を散らされたのだぞ!」
竜「……そうね、でもどうでもいいわ」
虚「なぜそこまで達観できるのじゃ!」
 虚空はもはや掴みかかりそうなほどの勢いだ
竜「だって、母さんに会えたのは、私が壬生川に生まれたおかげだもの、生まれ出でたことに恨みはないわ」
 竜子のその言葉には重みがあった、そう、月見がなぜ竜子を慕っているかが、分かるほどに
竜「貴方少し冷静さを失っているわ、朱点に惑わされるのはやめなさい」
 扉に拳を当てながら立ちすくむ虚空の肩に手を置き、竜子がささやく
月「そうですよ、いよいよきっと多分ここが最後ですよ! 気力振り絞りましょう!」
 目の前にそそり立つ赤黒い塔の名は、修羅の塔と言った
 虚空は何度か顔をこすると、槍を手にうなずく
虚「ああ、面倒は全て朱点を斬ってから済ませよう」
 
 修羅の塔に踏み込んだ壬生川一族を待ち構えていたのは、まだ見ぬ強大な鬼であった
 
=第6編へ=
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by RuLushi | 2006-10-29 00:00