ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1025年 6月中編

<壬生川家>

 壬生川家の風呂場は武家の屋敷にしてはさほど広くもないが、そう狭くも無い
 例えば、ひとりで入るなら十分に脚を伸ばせるし、無理をすれば三人同時に入浴することも可能だろう
 気を許したもの同士であれば、一緒に入る事もある
 というわけで夕方、風呂から上がった柚子と竜子は、居間にやってきた
柚「はぁ、いいお湯でした、次良いよほたるさんー」
 湯上りで髪をまとめている柚子を、ほたるが手招きする
ほ「柚子様、ちょっと夏には早いのですけれど、カキ氷食べますの?」
柚「わぁ、もらうもらうーw」
 ほたるの差し出したさじに、喜んで飛びつく柚子
ほ「竜子様は?」
竜「……私はいい、甘いモノ苦手だし」
 竜子はそう言って、廊下の縁側に座って涼みながらカキ氷を食べている瑞穂の横に腰を下ろした
 風に濡れ髪が揺れる
瑞「果物の様子、どうだった?」
 瑞穂に聞かれて、竜子は髪を押さえながら答える
竜「……もう、腕はほとんど動かないみたい、着物を脱ぐのも、苦労してた」
瑞「ふーん、手伝ってやったのね?」
 壬生川家で、なぜか一番風呂の権利を持っている瑞穂が、色々どばどばかけた氷を口に運ぶ
 竜子は風にかき消されそうな声で、つぶやいた
竜「……私が壊し屋だったなら、お母さんの腕になれたのに」
 居間の方から、ほたると柚子の明るい声が聞こえてくる
竜「……どうして私は、拳法家なんかになったのかな」
 柚子の前でしか見せない柔らかな声色で、竜子は膝を抱く
 瑞穂は目を瞑って、答えた
瑞「たとえ、果物が拳法家だったとしても、きっとあの子は奥義の使いすぎで身体をボロボロにしてたわよ、そういう奴よ、バカなのよ」
 瑞穂の言葉に、竜子が面白くもなさそうに言った
竜「……まさか、瑞穂に慰められるなんて」
瑞「べ、別にあんたを慰めたわけじゃないわよ……ただ、そうやってウジウジされると、鬱陶しいのよ」
 そっぽを向く瑞穂に、竜子は再び尋ねる
竜「……お母さんに、わたしができることって、もう何もないのかな」
 死期が迫ってきた、と頭につけようとして、竜子は言葉を飲み込んだ
 柚子の健康度は間違いなく低下している、それなのに、彼女は出陣しようとしていた
 瑞穂は、つぶやく
瑞「……子供が親に気を遣うなんて、一年早いわよ、心配も憂慮もひっくるめて、あんたらしくしてりゃ良いじゃないの」
 竜子はちらりと居間に目をやった
 ほたるが、柚子に何かを突きつけていた
柚「え、えっと……どうしてカキ氷の中から、こんなものが……?」
ほ「うふふ、漢方薬“東方淫羊根”ですのよ、効果抜群なんですから」
 満面の笑みで、柚子に棒状のモノを差し出すほたる
柚「あ、あの、その……口、に、しなきゃ、だめ……?」
ほ「ほら、あーん」
柚「う、ううう……そ、そんなおっきいの、無理だよぅ……」
ほ「ほらほら、下のお口もあーん?」
柚「ちょ、ちょっとほたるさん!? む、むぐうぅ……」
 無理やり口の中に突っ込まれている柚子を見つめながら、竜子は瑞穂の言葉を反芻する
 そして、ため息
竜「……一年か、長いわね」
 

<出陣>

 翌日、出陣の日
 玄関には予定時刻二時間前から、初陣の娘が完全武装で居座っていた
月「遅いですよ皆さん!」
 そうして無茶を言う
柚「や、やる気満々だね、月見さん……w」
 竜子に身体を支えられながら、柚子は冷や汗を流す
月「当たり前じゃないですか! ボクの初陣、きょうは歴史に残る働きをさせてもらいますから、よく見ててくださいね当主さま!」
 えっへんと胸を張る月見は、確かに3ヶ月才にしては頼もしく見えた
ほ「遅くなりましたの」
 最後に微笑みながら、ほたるが追いついてきた
月「あれ、今月はお母さんは出ないんですね?」
ほ「ええ、瑞穂様は家に残って、虚空さんの訓練みたいですの」
 噂をすれば何とやら、準備を整えた四人の前に、瑞穂がやってくる
 縄でぐるぐる巻きになって、口に短刀の鞘が突っ込まれた虚空の足を引っ張りながら
柚「……うわぁ」
月「……」
ほ「あら、瑞穂様」
 あんぐりと口を開く柚子、目を丸くする月見、普段と変わらないほたるの前で、瑞穂は窮屈そうに肩を回す
瑞「まあしゃあないじゃない、そろそろ月見は出陣だし、柚子とほたるは外せないし、ここはあたいが残るっきゃ」
 虚空の事は誰も何も触れない
虚「○*□×☆!!」
瑞「ま、そういうわけで、あたいに気にせず戦ってらっしゃいな」
 凄い勢いで何かを喚いている虚空の足を引きずりながら、瑞穂が去り際に「祖霊丹も用意しておかなきゃ」とつぶやくのが聞こえた
 ほたるが、ぽつりと漏らす
ほ「帰るおうちが、残っていれば良いですのねえ」
 こうして一同は、屋敷に大きな不安と火種を残したまま、出陣してゆくのであった


<紅蓮の祠>

 やってきたのは、すでに一度攻略したことがある迷宮、紅蓮の祠であった
 先月に選んだ相翼院を無事攻略できたので、今度はその次だ
竜「今月も、髪の攻略を目的にするんだね」
柚「うん、出来ればやりたいんだ」
 その言外に竜子は、わたしが生きているうちに、という言葉を読み取ってしまう
竜「……うん、頑張ろ、お母さん」
 髪を倒さなければ呪いは解けないが、髪と戦わなければ柚子は奥義を打つこともないのだ
 思わず目先の幸せを優先してしまいたくなり、竜子は唇を噛み締める
ほ「どうしましたの、竜子様?」
 一同から少し遅れて歩いていた竜子に、ほたるが声をかけた
竜「……いや、何でもない、大丈夫」
 拳を握り締めながら首を振る竜子に、ほたるがささやく
ほ「竜子様は、本当に柚子様のことが、お好きなのですのね」
竜「……うん」
 竜子は思わず、無防備にうなずく
ほ「竜子様のような娘を持って、柚子様は、本当に、幸せですのね」
竜「……前に、お母さんにもそんな事を言われたわ」
 暗い顔で、竜子は下唇を噛む
竜「……でも、分からないの、私、そんな……何もしていないのに」
 そんな竜子の頭を、ほたるはよしよしと撫でつける
 少し考えて、ほたるは竜子にゆっくりと語りかけた
ほ「それでは、柚子様は、竜子様に何かしてくださいましたの?」
竜「お母さんは……」
 竜子は顔を上げて、前列で月見に何かを指導している柚子の笑顔を見た
 胸が高鳴る
 母は一緒にいてくれた、ずっと、ずっと一緒にいてくれた
 甘えさせてくれたことより、術を教えてくれたことより、稽古をつけてくれたことより、昔話をしてくれたことよりも、それが一番大事なことだった、ただ一緒にいてくれたことが
竜「……」
 大切なことに気づいた、竜子の心に灯火が生まれた
竜「もしも……」
 小さな声に、ほたるが耳を傾ける
 一言一言噛み締めるように、竜子はつぶやく
竜「もしも、私の心が満たされたように、お母さんも、私と居たことによって、日々が満ちていたのなら、それ以上もう、何も望むことは出来ないんだ……」
 だって、それよりも大事なことなんて、何もないのだから
 ほたるは竜子の肩を抱きながら、にっこりと微笑む
ほ「柚子様が幸せだと言った言葉を、お疑いになりますの?」
竜「……そんなことは出来ないわ」
 笑うほたるの腕を解いて、竜子は燃える拳を装着する
竜「……私と同じほどの強さで、一緒に居たいと思ってくれているお母さんに、それ以上に大事な事があるのなら……」
 他の事を望むのは、自分のワガママなのだと、気づく
 少しだけ、吹っ切れることができた
 柚子の腕はもう、いくつもの大事な想いが刻み込まれて満足には動かないのだけれども、それは決して悲しいことではない、それを悲しむのは柚子にとって無礼だ
 子として、その想いを引き継ぎたいと竜子は思った
 柚子が死に、その悲しみも、憤りも、切なさも、不安も、憎しみも、腕に刻み付けなければいけない、と思った
 いつしか自分の腕も重くなり、威力を増し、そして石のようになってしまっても、そのときはきっと、幸せなのだろう
竜「……瑞穂の言う事は嘘ばかり、一年はかからなかったわ」
 竜子の瞳に、力が戻った

 こうして壬生川一族は、初陣の月見をかばいながら、紅蓮の祠を奥へ奥へと進んでゆくのであった
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by RuLushi | 2006-02-05 10:41