ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1019年11月第8編
 
 
 真琴が放った矢は、投石のような威力で朱点童子の頭部にぶち当たり、その巨体を揺らした。
 凄まじい攻撃力だが、連弾弓は一度では終わらない。真琴の手元で次々と光が閃く。
 二射目、朱点童子の身体は衝撃によって宙に浮いた。さらに三射目。傾いた朱点童子の側頭部に矢が突き刺さり、爆散。朱点童子は冗談のように床を転がり、柱に激突して止まった。
 その威力は、まさに神撃のようだった。
 真琴は己の力が信じられない。
 
真「……これが、ウチの……? ……って……!」
 
 ふいに、
 真琴は違和感を覚えて自分の腕を見下ろす。
 あれほどの奥義を使いながら、真琴には一見変わった様子は見えない。
 だが……
 悪夢の予感を覚えてしまった。なにかがおかしい。自分の身体に見えない異変が起きているのだ。背筋を冷たいものが走り抜ける。それは恐怖の種だった。
 
 
 これで終わってくれ、と願うのは、あまりにも楽観的すぎた。
 大鬼が吹き飛ばされて痛みに悶えている間に、福助は<お雫>を唱え終わっている。
 晴海と朱点童子が起き上がったのは、ほぼ同時。

朱点「なめやがってェ!」
晴「まだまだァ!」
 
 当主の勢いに、近くにいた福助が「うおっ」と叫びながら後ずさりする。
 瓦礫を吹き飛ばしながら朱点童子が立ち上がり、頭を振って態勢を整えた頃には、晴海がその鬼の前に立ちはだかっていた。
 
朱点「まずはあの弓使いのガキからだ……! ひねり潰してやらァ!」
晴「ふっざけんな! 頭に来ているのはこっちだって同じだ! 仲間に手出しはさせねえ!」
 
 腕を振り回しながら熱情を燃やす晴海。彼女が本気で怒る姿を見るのは、初めてだ。
 福助は遺憾の意を示す。
 
福「晴海さん、当主なのにそんな言葉遣いを……」
牽「今そんなこと言っている場合か!?」
 
 福助は晴海のそばで待機し、牽は真琴の元へと急ぎ戻る。
 眼の色を変えた朱点童子は、今度こそ本気のようだった。歩きを覚えたばかりの幼児のような拙さで、左右に身体を揺らしながら迫り来る。しかし形相は般若。滑稽さと悪心の二面が同時に存在するその姿こそが、鬼そのものであった。
 
 朱点童子は晴海の直前で止まり、地面に拳を叩きつける。床が割れて、朱点閣が揺らぐ。思わず足を取られてしまった晴海に向けて、朱点童子は飛び上がった。そのままの勢いで、尻を向けてのしかかってくる。
 
朱点「ならてめェからやってやる! 圧殺だァ! 死ねェ!」

 知能が低いとは言え、さすがは鬼。恨むこと、祟ること、殺すことを生業としているだけあって、いくさごとに関しては一日の長がある。このままでは、晴海はぺしゃんこにされてしまうだろう。

晴「うるせえよ! ばか! 誰ひとり死ぬもんか!」
 
 かたや晴海は、馬小屋ほどの巨体の朱点童子に向かって拳を突き上げる。いくらなんでも無茶な行為だ。晴海は頭に血が上っているのだ。案の定、晴海は少しも抵抗できずに朱点童子の下敷きになって潰されてしまう。
 
福「晴海さん!」
 
 いつでも<お雫>を唱えられる態勢を保ちながら、叫ぶ福助。
 その返事は、雄叫びだった。
 
晴「おおおおおおおおお!」
朱点「ンあァ!?」
 
 朱点童子までもが驚愕する。晴海は顔を真っ赤にしながらも、渾身の力で朱点童子を受け止めていた。両足が地面に沈み込んでゆき、細い体がミシミシと歪む。今にも砕けてしまいそうだ。
 牽が怒鳴る。

牽「真琴! 射てええ!」

 恐らくはそれが晴海の狙いだ。

真「ッ、わ、わかってますってば!」
 
 気を練っていた真琴は、それを己の手に乗せて再び解放する。あの時の甘美な力が真琴の全身から溢れ出た。二度目の、連弾弓。広間に光が満ちる。
 その奥義をなんとでも阻止したかったのは、朱点童子だ。鬼は真琴に力が収束していくのを見るや否や、遮二無二暴れ出した。

朱点「させるかよォォ!」
晴「ああっ!」

 ついに晴海は木の葉のように吹き飛び、福助が地面に激突する寸前に彼女を受け止める。朱点童子もまた、身を翻して飛び退いた。しかし真琴の狙いは今さら変えられない。矢はでたらめに飛ぶ。朱点閣の壁が次々と穿たれてゆく。
 朱点童子は距離を取り、晴海と福助が間に入ったため、一旦仕切り直しだ。

朱点「もうその手は食わねェよ! すぐにてめェら、三途の川を渡してやらァ……!」
 
 鼻息荒く、朱点童子は一族を睨みつける。
 


 奥義を二度まで使って、まだ朱点童子は倒せていない。となれば、最大まで<武人>を重ねがけた真琴が、三度目の連弾弓を使わなければ――

牽「――真琴」
 
 振り返り、牽は驚愕した。
 
真「あ、ああああ、あああああぁ……」
 
 真琴は呻吟していた。
 彼女の腕が、ひび割れていたのだ。まるで陶器のように、だ。
 そんなこと、本来なら現実にはありえない。
 髪を振り乱しながら、真琴は正気を失いかける。

真「な、なんですかこれ、これ、ウチの身体どうなっちゃっているんですか……!? 父サン、父サン、これって……ねえ、父サン!」
牽「それが、奥義の代償なのか……?」
 
 わめく真琴を、牽は落ち着かせることはできない。娘の身になにが起きているのか、まったくわからないのだ。

 朱点童子を晴海と福助は二人がかりで食い止めていた。だが晴海は何度も致命傷を受けている身だし、福助も石猿田衛門から受けた傷が深い。一族は皆、満身創痍なのだ。
 このままでは、荒神橋一族は全滅だ。
 朱点童子の硬い皮膚には、刃も通らない。晴海の打突も効果はない。

 だが、無理だ。もう真琴には奥義は打てない。
 福助は後衛の牽に怒鳴る。

福「今から<武人>を改めて重ね直さないと……!」
牽「そんな時間はないだろ!」
福「だからって!」
牽「それなら<花乱火>の併せだ!」
福「僕と牽が詠唱に入るのは無理だろう!」

 粉塵と怒号、それに朱点童子の拳が飛び交う。
 どちらに転んでもおかしくはない紙一重の勝負だ。それでも、荒神橋一族の旗色が悪い。福助が、晴海が必死になって朱点童子に飛びかかる。

 いつしか、少女はひとりで立ち上がっていた。
 弓を、構えていた。

 
 まるで時が止まったような世界で、真琴だけが動いていた。

牽「真琴――」


 
 亀裂の入った腕で弓を持ち、亀裂の入った腕で矢を引き絞る。
 真琴の目は朱点童子を捉えていた。
 涙でにじむその視界を、絞り込む。
 
真「だ、誰も……ウチにはできないと思っているんでしょう、誰も、誰も!」
 
 視界に入る細腕の現状は、深く考えれば震えが止まらなくなりそうだった。だが、そんな態度のままでは矢は当たらない。
 幸い、まだ痛みはない。これなら狙える。まだ狙えるのだ。
 
真「守るだとか、守られるだとか、そういうの、キラいです。ウチは、ウチのために……」
 
 言葉は真琴を救ってくれるような気がした。たとえそれが嘘でも真でも。

 こんな荒れ果てた鬼の根城で、命を削りながら思う。
 恐怖を克服できたわけではない。だが、それでも――

 だってここで負けてしまったら、どうだろう?
 来年もう一度、長い雪山を登って。
 辛い目に遭いながら、門番たちを打ち破って。
 更に、再び朱点童子と戦うはめになるのだ。
 その時には自分はもう、たったひとりで。
 きっと、悔やんでいるだろう。
 今ここで、朱点童子を討ち果たせなかったことを。
 一生、後悔するに違いない。
 
真「当たり前ですよ、誰かのために犠牲になるなんて、そんな。馬鹿げてます、ウチは、他の誰でもない、ウチ自身のために――」
 
 晴海も牽も福助も見殺しにしたようなもので。
 そんなことはしたくない。
 絶対に、したくない。
 たとえ、この腕がもう二度と――

牽「よせえ! 真琴おおお!」

 真琴の腕から小さな欠片のようなものが飛び散った。
 それは雪のように真っ白な光を放ちながら、空気に溶けて消える。
 真琴は父に叫び返す。

真「好きでやっているんです! 止めないでください!」
 
 星のような、矢が放たれる。
 
 
 真琴の射った三本の矢は、朱点童子の腹を貫いた。
 背後に血をまき散らしながら、矢は空中で破裂する。
 噴き出た血は、床を真っ赤に濡らしてゆく。
 
朱点「が、ふ……ッ」
 
 朱点童子はゆっくりとその場に膝をついた。
 その奥義はとどめになっただろうか。
 いや、とどめではなかった。
 朱点童子はまだ生きている。致命傷には違いないだろう。それでも、がりっと爪で床をひっかきながらも立ち上がり、戦おうとしている。血を吐いてまで。

朱点「俺ァ、こんなところで……こんなところで、死ねねェよなァ!」

 生きたいという気持ちは、鬼だって同じ。
 わからないことだらけの朱点童子の言葉だったが、それだけはわかる。
 晴海は足を引きずりながら、朱点童子に近づいていく。福助の助けを断り、たったひとりで。
 
晴「朱点童子……」
朱点「うおおおおォッ!」

 力なく振り回される腕を難なく避け、晴海は腕を掲げた。

晴「晴海たちの、荒神橋一族の命……返してもらうぞ……」
 
 晴海は、指輪を突きつけた。
 光が溢れる。
 朱点童子は驚愕に目を見開いた
 現れたのは、ひとりの偉大な武士。
 朱点童子はその姿に見覚えがあっただろうか。
 

 荒神橋源太。
 その恨みを今こそ、晴らす時――

 
 一族の祖霊は雄叫びをあげながら朱点童子を切り刻む。生前は見ることはできなかった、都一番の武士の剣術だ。それは朱点童子の命の灯火をついに消し去る。
 そして、朱点童子の断末魔が響いた。
 
朱点「ギャアアアアアアアアアア!」
 
 朱点童子は仰向けに倒れて天を仰ぐ。
 それから、ぴくりとも動かなくなった。痙攣すらもしない。

 
 一同はしばらく声も出せなかった。
 これで、終わったのだろうか。
 本当に、朱点童子を倒したのか。
 戦いの余韻が辺りを包んでいる。
 どうやら終わったらしいと思えたのは、さらにひとつの火が消えた後のことだった。
 

 晴海は荒い呼吸を落ち着かせようと努力しながら、その場に座り込む。
 
晴「はぁ……はぁ……」
 
 福助が晴海の元にやってくる。

福「これで、終わったのか」
晴「……ああ、そうだな」
 
 言葉を交わすとようやく実感が湧いてくる。
 体の奥が、熱くなる。

 牽は真琴と一緒にいた。
 父は娘にこう告げる。

牽「……頑張ったな、真琴」
真「……ええ、まあ……はい」
 
 へたり込んだ真琴。もう軽口を叩く元気も残っていないようだ。
 その腕は、欠片が全て飛び散り、肘から先が真っ黒に染まっていた。まるで病に侵されているような姿だ。
 そんな娘の頭に、牽はポンと手を置く。
 真琴は嫌そうに眉根を寄せる。

真「子供扱い……」
牽「労っているんだってば。朱点童子を倒せたのは、君の力なんだから」
真「……早く帰って、お風呂入りたい……」
 
 汗や血でまみれた姿は、乙女の真琴には我慢ならないのだろう。そんな真琴に牽は笑いかける。
 朱点童子の骸から、天の川のような輝きが溢れ出したのは、その直後のことだった。

牽「な、なんだこれ」
 
 一粒、二粒。地上に落ちた星々のような光が、次々と舞い上がってゆく。それは朱点閣の天井を通り抜け、空へと昇る。目も眩むような瑞光は、広間を無限の色に満たしてゆく。
 思わず、感嘆の声が漏れた。

牽「すげ……ほら、見ろよ真琴……って、真琴?」
真「……」
 
 真琴は牽にもたれかかりながら、気を失っていた。

牽「……そうか、まあ、頑張ったもんな」

 朱点童子に囚われた神々の解放を見つめながら、牽は真琴の頭をもう一度撫でた。彼女は最後まで意地を張り通したのだ。
 たった4ヶ月才の少女には厳しい道中だったろう。それでも真琴はやり遂げた。牽は眩しそうに目を細めた。それは天界の神々が放つ光輝に負けずとも劣らない、真琴自身の勇気の光だった。
 
 









 


  「クククク……」


 その時、気味の悪い笑い声。
 倒れたはずの朱点童子から発せられている。

 まさか、と振り返る。
 大の字に寝ている朱点童子は、笑っていた。
 
 
  「クククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククク
 
 
 悪夢のようだった。
 
 
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by RuLushi | 2012-09-01 11:49 | 三代目当主・晴海