ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1019年11月第3編
 
 
<大江山討伐>
 
 見渡す限り白く、どこまでも白く。
 四人は腰の高さほどもある雪をかき分けながら、進軍をしていた。
 振り返れば彼らの歩んできた足跡が、点々と見える。

 視界は悪い。まだ11月だというのに、霧のような粉雪が辺りを覆っている。
 獣の唸りにも似た声は、絶え間なく響いてくる。それはきっと、腹を減らした鬼たちのものだろう。彼らは爛々と目を光らせながら、物陰から常に荒神橋の一族を狙っているのだ。
 
 先陣は牽。晴海、真琴と続き、しんがりは福助。
 時折、宝鏡を覗き込みながら、鬼の奇襲に備える役目も福助である。
 今もまた、鏡の中の赤い点が、こちらに向かって近づいてくる。

福「来るよ――」
 
 鋭い疾呼に応じたのは、牽。
 雪をまき散らしながら眼前に飛び出てきた紅こべ大将に、抜き打ちの刀を叩きつける。そのまま振り切った。真っ白な雪に血の線が刻まれる。まるで赤い花が咲いたようだった。
 刀を回し、鞘に収める牽。
 
牽「どんなもんだい」
福「バカ、まだいるんだよ!」
牽「え――」
 
 今度は斜め後方からだ。不意を突かれた牽は構えを解いていた。とっさに反応ができない。
 迫る紅こべ大将の腕に、矢が刺さった。悲鳴をあげて仰け反る鬼。

真「もう、なにやっているんですかぁ!」

 第二射とともに、晴海も跳んだ。真琴の二の矢は紅こべの首に突き刺さる。動きの止まった鬼を、拳法家の飛び蹴りが打ち砕いた。紅こべ大将は黒い霧となって霧散する。晴海が音も立てず雪に着地した。
 牽と福助が大きなため息をつく。

牽「ごめん、油断してた」
福「しっかりしろ。バカ」
 
 牽が真琴に駆け寄る。

牽「真琴もありがとう。助かったよ……って、真琴?」
 
 少女は小さく震えていた。自分の体を抱きながら、牽を半眼で睨む。
 
真「うう、寒い、寒いです……寒い寒い寒い……」
牽「だ、大丈夫か? ぼくの羽織でも着る?」
真「いらないですよ……汗ばんじゃうじゃないですか……っしゅん!」
福「まあ、確かに暑いよな……」

 福助は額の汗を拭う。外気に触れている部分は寒いのに、体の芯はひどく熱を持っていた。おかげで息が切れてしまう。

牽「正直、ここまでしんどいとは予想してなかったかな、ハハ……」
真「笑っている場合ですか、父サン……」
 
 ふたりの声にも覇気がない。
 たった四人の道中は、予想以上に体力を消耗してしまっているのだった。
 
  

 大江山に突入した時には、多くの武士と一緒だった。
 門をくぐった次の瞬間、彼らとは離れ離れになってしまっていたのだ。
 迷宮を探索するには、乱された時間と同じように、ある一種の“仕掛け”があるようだ。それが侵入者を拒むためのものか、あるいは内部のものを閉じ込めるための結界なのかはわからないが。
 立場の違う人間たちがひとつの迷宮に足を踏み入れても、必ずしも同じ場所に入れるとは限れないらしい。迷宮がまるで生き物のように形を変えることは知っていたものの、この“ルール”を目の当たりにしたのは初めてだった。
 よって、荒神橋一族は自らの力のみで頂上を目指さなければならない。
 しかし、彼らはもとよりそのつもりだった。
 
晴「……勲の旦那、無事だといいんだがな」
 
 たかだかひとりの小娘がつぶやく。その心配がどれほど傲慢なことなのか、今の晴海には知る由もなかった。
 
 
 
 ~
 
 
 雪に体力を奪われ、視界を取られ、いつ現れるとも知れない鬼に備えながらの進軍だ。肉体的にも精神的にも、その疲弊感はこれまでの迷宮の比ではない。
 特に最年少の真琴は辛そうだった。時折思い出したように指先に息を吹きかけるその顔色も悪い。
 すぐ後ろにいた福助が、彼女に囁く。

福「少し休もうか、真琴さん」
真「……ついさっきも、休んだばかりじゃないですか」
福「まあ、そうだけど……」
 
 真琴の減らず口は鈍っていない。その強がりはきっと、彼女のプライドだろう。
 だが、このまま倒れるまで意地を張り続けるのだとしたら、それは厄介な自尊心だ。

福(……どうしたものかね)
 
 真琴の青さを責める気は起きなかった。むしろ、美しさすら感じてしまう。
 大江山を、四人はあがくようにして進んでいた。
 
福(心が休めないのなら、せめて体だけでも休んでほしいんだけど)
 
 しばらく雪を踏みしめる音が続く。
 
牽「あーもう!」
 
 牽が唐突に叫び声を上げた。後ろに立っていた晴海がびくっと体を震わせる。牽は雪を蹴り散らかすと、振り返って怒鳴る。

牽「なんか違くない? こういうの! なんか、違うんだけど!」
晴「え、ええ?」
福「どうした、急に……このプレッシャーに耐え切れなくなったのか?」
真「うるさいですよ、鬼が集まって来ちゃうじゃないですか……」
牽「なんだよ三人とも。いや、だから、こういうお通夜みたいな雰囲気で挑むのは、間違っているんだってば!」
晴「???」

 要領を得ない牽の言葉に、一同は首を傾げる。真琴などは露骨に苛立っているようだった。
 
牽「だからね、これからのことを考えようよ! 朱点童子を倒したら、やりたいことがいっぱいあるでしょ? それをさ、みんなで言っていこうよ」
真「はぁ……?」
 
 真琴の後ろで、福助が「なるほど」とうなずく。晴海も乗ってきた。

福「いいんじゃないか。なあ、晴海さん」
晴「そうだな……晴海は夏になったら北の方に旅に行きたいぜー」
牽「さすが、晴海ちゃんだね。こんな雪山の中で、脚を露出させるだけのことはあるよ」
 
 粉雪を払いながら、三人は笑い合う。
 
福「じゃあ僕は、どうだろうな。しばらく、家でゆっくりしていたいと思うよ」
真「えっ、福助サン、そんな夢があったんですか」
福「知らなかったのかい。僕は本当は怠け者なんだよ」
真「なんと、やばいです」
福「そういう君は?」
真「う、ウチはー……」
 
 弓を担ぎながら、真琴は顎に手を当てる。少女は眉間にシワを寄せながら考え込んでいた。まるで難問に挑んでいるようだ。
 
真「父サンは、なにかあるんですか?」
牽「おいしいものを山ほど食べる! 食べ尽くす!」
真「うわあ」
 
 真琴は引いた。晴海は声を上げて笑う。

牽「武芸でどこまで行けるか挑戦もしたいし、もっともっとたくさんの迷い猫だって探せるだろうし。ああ、海も見に行きたいなー。それに、色んな人とも話してみたいんだ」
真「浅ましい……」
牽「どういうことだよ真琴! っていうか、他にもまだまだあるんだよ!」
真「強欲……」
牽「君、僕に厳しくないかなあ!?」
 
 真琴と牽がワーワー言い争いを始める中、そのふたりの声を聞きながら晴海と福助は微笑み合っていた。
 
晴「でも、もうすぐなんだよな。今言っていたことが全部叶うのって、もうすぐ……」
福「……そうだね」
晴「なんだか晴海、今、幸せなんだ。みんなとこうして、ここで戦うことができてさ。瑠璃ちゃんと、父ちゃんから受け継いだものが、確かにここにあるって思えるから……だから」
 
 雪の舞う空を見上げて、晴海はしっかりとうなずく。
 一度、「口に出すと、ちょっぴり恥ずかしいけど」と頬をかいてから、改めて。

晴「今、すごく嬉しいんだぜ」
 
 鬼と不安を蹴散らしながら、四人は山を登り続けた。



 一同は足を止める。
 彼らの前にそびえ立つのは、ひとつの門。
 大江山のさらに奥。朱点童子の潜む都へと続く扉――仁王門だ。
 
 その前には、一対の仏像が安置していた。
 名も知らぬ、誰が作ったのかもわからないその仁王は、呪によって縛られ、仏敵ではなく侵入者を排除するだけの鬼と化していた。
 いつしか彼らは、畏怖とともにその名を呼ばれることになる。
 
 ドクン、と晴海の心臓が鳴る。
 
 ――痩せ仁王、太り仁王。
 
 邪気を感じ取ったのだろう。荒神橋の面々はそれぞれ得物を構えていた。
 やがて、先頭に立つ牽が彼らの間に足を踏み入れた時、それは起こった。
 
 目を輝かせた二匹の仁王がこちらを睨んでいたのだ。
 動き出した彼らは、台座を降りて襲いかかってくる。

 大江山、文字通り第一の関門である。
 


 先手は晴海。彼女は初手に<雷電>を選択した。
 前後に距離を取った二匹の仁王を一網打尽にしようと試みる雷術である。
 青い稲光が雪を切り裂く。それらは巨大な仁王の体表を撫でて、霧散した。
 
晴「……効いて、いるのか……?」
 
 手応えはあまりない。続いて真琴が矢を射る。それは前列に立っていた太り仁王の腹に深々と突き刺さる。やはり仁王は表情を変えない。
 
真「不気味、なんですけど――」

 その真琴を狙って、痩せ仁王が刀を叩きつけてきた。飛び退いて避けた真琴の腕に、浅い裂傷が刻まれる。白雪が煙のように舞い上がった。飛び散った雪が口に入ったのか、真琴はペッペッとツバを吐く。
 
真「もう! 痛いじゃないですか!」
 
 怯えよりも怒りが先に来る辺り、真琴も実戦に慣れてきたのだろう。
 続く牽は覚えたての火炎術<花乱火>を披露した。
 しかしそれは、太り仁王の体をわずかに焦がしただけで、すぐにかき消えてしまった。

牽「あれー! ちゃんと勉強したつもりなんだけどなあ!」
福「どこかで手を抜いてたんじゃないのか! お前は!」
晴「ううん、違う」
 
 双子に真剣な表情をした晴海が首を振る。

晴「今は粉雪が降り注いでいるだろう。だから、火の術法が威力を失っているんだ。だから、福」
福「……ン、わかった」
 
 違和感を覚えながらも、福助は印を結ぶ。
 先ほど晴海が唱えた<雷電>だ。

福「一気に片を付ける……!」

 そこで、太り仁王が狙いを定めたのは――やはり後列の真琴。
 強烈な殺気に顔を歪めた真琴に、巨大な金棒が叩きつけられる――

真「やばいですよ! 二度も同じ手を食うものですか!」
 
 雪に紛れて、真琴は鬼の攻撃を回避していた。
 したたかな彼女の適応力に、思わず晴海も口の中で笑みを漏らす。

晴「併せ、二人目行くぜ!」
真「ウチが三人目です!」
 
 真琴は戦いの中、凄まじい速度で成長している。それを嬉しく思うのはきっと、晴海が年長者だからなのだろう。
 直後、三人併せ、六倍撃の<雷電>が敵陣を切り裂く。
 紫電は太り仁王を貫き、その背後にいる痩せ仁王までも覆い尽くした。
 辺りの雪が一瞬にして蒸発し、周囲は霧に包まれる。妖しい視界の中で、巨大なふたつの影がどさりと倒れるのが見えた。

 冷気と寒風により、少しずつ霧が晴れてゆく。四人は未だに構えを崩してはいない。
 最初に見えたのは、太り仁王の巨体が地面に突っ伏している図だった。
 破片となって横たわるその鬼は、線香の煙のように体から黒い煙を立ち上らせていた。それはまるで魂が抜け出ていくようにも見えた。
 晴海はホッとしつつも、より目を凝らす。今度は痩せ仁王の像が雪の中で黒煙となって地面に沈み込んでゆくのを見つけて、今度こそ胸を撫で下ろした。
 福助の放った術の併せによって、二匹の仁王はその活動を完全に停止させたのだ。
 
晴「ふう……」
 
 ようやく、一息つける。
 晴海たちはこの場所でしばらく休憩をしてから、先へと進むだろう。
 
 
 これからこの門を通って、宿敵・朱点童子と決着をつけるのだ。
 そこに待ち受ける運命を、今は知らずに。
 
 
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by RuLushi | 2012-08-04 06:18 | 三代目当主・晴海