ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1019年11月第1編
 
 
<荒神橋家>

 牽と福助は向かい合っていた。
 暦は秋を深めつつ、肌寒さも覚え始めた道場である。
 双方ともに正座し、稽古着。ふたりの前には、木剣、それに総樫の薙刀。
 
牽「……」
福「……」
 
 火神の子、ふたりはゆっくりとそれぞれの得物を握る。
 立ち上がり、礼。
 たちまち道場の空気が緊迫してゆく。

牽「行くよ、福助」
福「……ああ」

 牽は切っ先を福助に突きつけるような上段の構え。
 対する福助は中段。薙刀を水平に構えている。

 上段。打ち付けられた薙刀を避け、切り返す。間合いを取る福助。詰める牽。攻守交替。出足を下段で払う福助。読んでいた牽は深追いしないものの、その勢いが止まる。 
 
 牽と福助の視線が交錯する。ふいに、牽が笑った。

牽「今の僕と福助なら、さすがに咲也さんも認めざるをえないかな」
福「あんまり、容易に想像はできないんだけどな、それ」
牽「最近は自分でも実感できるんだよ。強くなった、ってさ」
福「……相変わらず、おめでたい頭を持っているね」
 
 牽もまた、福助に遅れて<花乱火>の術を修得した。これで双子による併せ技が実行可能となったのだ。
 
牽「ずっと、僕は強くなりたかったんだよね。最初は母さんに褒められたくて、次は咲也兄さんに認められたくて」
福「牽の行動理由は、シンプルだったな」
牽「だから今は、晴海ちゃんや真琴を守れるようにね」
福「臆面もなく……子供かよ」
牽「何にも恥じる必要なんてないよ。だいたい、ここには福助しかいないんだし」
 
 牽の様子は、どこか浮ついているようにも思えた。だが、それに伴ってパフォーマンスが向上していくのが、牽の強みだ。単なるお祭り男なのかもしれない。
 結局、<花乱火>でさえ、福助だけのものではなくなってしまった。いつだってそうだ。どんなに用意周到に準備をしたところで、自分がリードするのは最初の一瞬だけであり、すぐに牽に追い越されるのだ。
 だが、どうしてだろう。今はそれほど、嫌な気分ではない。
 
福「まあ、それでも残す迷宮はあとひとつだもんな」
牽「そうだよ。だから僕たちは、もっともっと強くならなきゃね」
福「いや、だから、あとひとつ戦ったら終わりだろ?」
牽「終わりなんかじゃないって。だって、これから始まるんだから。僕たちの暮らしはさ」
 
 福助は言葉を詰まらせた。今を生きるので精一杯で、そんなことは考えたこともなかった。福助は頬をかき、そっぽを向く。

福「ま、せいぜい頼りにしているさ、兄貴」
牽「おう、任せてくれ、弟よ」
 
 笑う牽に福助は「調子に乗るなよな」と小さくつぶやいた。
 
 
 ~~ 


晴「今まで世話になったな、イツ花」
 
 台所にいたイツ花に頭を下げる晴海。イツ花は慌てて両手を振った。

イ「や、イヤですよォ、当主さま。そんなまるで、お別れするみたいなこと」
晴「でもさ、イツ花は朱点童子を討伐するまで、ってことでこの屋敷に来たんだろ? それだったら、やっぱり元の家の戻っちゃうんじゃないのか」
イ「それはまァ、そうかもしれませんけど……でも、だからって……」
 
 むむむ、とイツ花は眉根を寄せて考えこむ。それから、両手を合わせて顔を上げた。

イ「はい、わたし決めましたァ!」
晴「んん?」
イ「イツ花はですね、ずぅっとこの、荒神橋家に勤めさせていただこうと思います!」
晴「いや、それは別にいらないぜ」
イ「ガーン!」
 
 イツ花は激しく頭を打たれたように、身体を揺らした。

イ「うう、結構一世一代の大決心のつもりだったのにィ……」
晴「そりゃあイツ花がずっと一緒にいてくれたら、晴海たちも嬉しいけどさ。なんたって、この屋敷に来たときからずっと一緒にいるわけだし」
 
 晴海は照れながら笑う。
 
晴「それでも、なんかそのままじゃ、駄目な気がしてさ。できることなら、身の回りのことはなるべく自分でできるようになりたいんだ」
イ「は、晴海さま……ご立派です……」
晴「はは、あはは」

 イツ花にキラキラと見つめられて、晴海はくすぐったそうにしていた。
 そこに声が届く。

真「えー、ウチは反対ですけどー」
 
 イツ花と晴海が居間を覗くと、真琴がうつ伏せに寝転がりながら術書を開いていた。足をパタパタと動かしながら。

真「ご飯だってお洗濯だって、イツ花さんがいないとなんにもできませんよう」
晴「そこは、できるようにならなきゃだめだろ? 真琴ちゃん」
真「えー、めんどくさいですー」
晴「その代わり、戦いの訓練をしなくても良くなるんだぜ?」
真「ありがたいことです。それはそれとして、ですね」
 
 真琴はにっこりとイツ花に微笑む。

真「イツ花さんは、ずっとウチのそばにいてくれますよねぇ」
イ「はーい、もちろんですよ、真琴さまー」
真「あー肩凝ってきちゃったなー。弓の鍛錬のしすぎですかねー。誰か揉んでくれませんかねー」
イ「はぁい、わたくしでよろしければー」 

 真琴の猫なで声に、イツ花もデレデレだ。一番下の子は特に愛らしいようだ。甲斐甲斐しく真琴の世話を焼くイツ花に、良いように使われているのではないかと思いながら、晴海も苦笑する。
 
晴「じゃあ、しばらく……真琴が一人前になるまでは、いてもらおうかな」
イ「わーい、喜んで!」
真「えー、ずっとでいいですってば、ずっとでー」
 
 
 
 

<そして出陣の朝>
  
晴「じゃあ、行こうぜ」
 
 屋敷の前、立ち並ぶ一同。
 牽は朝早く起きたため、あくびを噛み殺していた。

牽「りょーかい。頑張ろうねー」
福「……ま、生きて帰れるようにしような」
 
 福助は硬い表情をしていたが、口元にはうっすらと笑みを浮かべていた。
 悲観も過ぎれば諦めもつく。彼の中ではもうどうやら、自分自身に対する答えが出ていたようだ。

真「……」
 
 真琴は塀に寄りかかったまま、誰とも目を合わさないように空を見上げている。


 四人は旅立つ。
 イツ花の用意してくれたお弁当を腰に下げ、向かうのは朱点童子の根城、大江山。
 
晴(結局、<円子>を覚えることはできなかったけれど……)

 母――椿姫ノ花連が自分に授けてくれた技の水も、完全に目覚めることはなかった。
 晴海たちは歩き出す。

晴(今さらどうこう言っても仕方ない。戦う前から負けた気でいるなんて、論外だ。その分は、晴海の命で補ってみせる……!)
 
 牽、福助、晴海、真琴。
 彼らの道の先には、数十名の武士団が立ち並んでいた。
 完全武装をした物々しい姿は、これからまるで戦にでも向かうような出で立ちだ。その中に見知った顔がなければ、屋敷に攻め込んできたものと取り違えてしまうかもしれない。

牽「あれは」
福「都の、武家か……?」
 
 その先頭の男は、荒神橋の一族を待ち続けていたようだった。
 高辻勲、かつて荒神橋源太とともに戦いし偉丈夫。
 
勲「約束通り、助太刀に参ったぞ。三代目・荒神橋瑠璃よ」

 勲の前に立つのは、晴海。遥かに小柄ながらも、相手を見上げるその視線は力強い。

晴「ああ、心強いぜ。行こう!」

 勲は目を細めた。彼女と最後に会ってから、まだ一年も経ってはいない。それが今では、立派な武人に成長したのだ。
 この一族の数奇な運命は、もはや人知を越えている。

 かつて彼女の祖母――瑠璃は言った。
 晴海こそが大江山に登り、そして朱点童子を討つだろう、と。
 その予言は今、真実になろうとしている。
 
 
 勲は武士団を振り返り、そして告げる。

勲「彼女こそが、かつて大江山に登り、そして朱点童子と相見えた源太の娘よ! 我らは荒神橋家の助けとなる! 皆の者、心せよ!」
 
 鬨の声が上がる。まるで万雷のような人の叫びに包まれながら、晴海もまた腕を突き上げた。

晴「朱点童子は必ず晴海たちが討ち取ってみせる! だから野郎ども、よろしく頼むぜ!」
 
 真琴があっけに取られて、福助はなぜかため息をつく。牽は笑っていた。
 
牽「母さんはああいうの苦手だったからね。やるなあ、晴海ちゃん」
福「だからって、『野郎ども』は品がない」
真「恥ずかしいと思います」
 
 口々につぶやくも、熱狂の渦の中にいる晴海には届かない。
 

 
 かくして、荒神橋一族は赴く。
“決戦の地”へと。
 
 
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by RuLushi | 2012-07-23 19:42 | 三代目当主・晴海