ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1019年10月
 
 
 一同は引き続き相翼院にいた。
 多大な戦勝点と天秤にかけたのは、九重楼で取得するはずだったいくつかの術書だ。
 
 晴海の提案を、牽と福助が飲んだのだ。
 真琴にとっても、より多くの経験を積むことができるここでの戦いは悪くない話だろう。敵の密度もその質も、九重楼とは効率が雲泥の差である。
 だが、その真琴の心中は穏やかではなかった。
 なんといっても彼女は、初陣にして“死闘”を経験したのだ。
 
真(ジョーダンじゃないですってば)
 
 あんな化け物といきなり戦うなどと、正気の沙汰ではなかった。
 全身がばらばらに引き裂かれるような痛みも、死を前にした恐怖も、殺さなければ殺されてしまうという覚悟も、なにもかも自分の人生にはなかった。
 そして、母も教えてはくれなかった。
 戦いに関する話は、なにも、なにも。

真(こんなことを、これから何度も繰り返せっていうんですか? やってられないですよ、本当に、どうにもならないですって)
 
 先ほどからずっとだ。こみ上げてくる嫌悪感に、飲み込まれてしまいそうになる。ひどく間違っている。そんな気がしてならない。
 だが、これが現実だ。これこそが荒神橋一族の宿命なのだ。
 
 
 真琴自身の思考とは裏腹に、身体は的確に動いていた。
 相翼院の長い廊下。
 襲いかかる鬼の眉間を、容赦なく矢は射抜く。一連の動作が身体に染み付いているのだ。苦々しく思う。それは二ヶ月間、咲也によって叩き込まれた生きるための技術だった。
 
真(あーもう、ホント、ホントに余計なことですよ……もう、こんなの……)
 
 真琴は眉根を寄せて、自らの手を見下ろす。
 まだ小さく、成長途中にある手のひら。どこからどう見ても少女のもののはずだ。

真(ウチは、こんなことするために生まれたんじゃないんですけどねぇ――)
 
 もしかして、正しかったのは咲也のほうなのだろうか。
 そんなはずはない。真琴は認めるわけにはいかなかった。

 それでも――
 心の奥には更なる強さを求める矛盾した感情が誕生しつつあることを感じ、真琴は身震いをしてしまった。
 



 休憩中。うつむく真琴に、牽が歩み寄ってくる。

牽「大丈夫か? 真琴」
真「……なんですか、父サン」
牽「いや、さっきからずっと辛そうにしているからさ」
真「ええ、ええ、そうでしょうよ。ていうかあちらもこちらも鬼だらけ。こんな陰気に満ちた場所であっけらかんとしている人がいたら見てみたいものですよ。思いっきり笑ってやりますね」
 
 言い切ってから気づく。
 目の前にいた。

福「笑ってやれよ、真琴さん」
真「……はぁ」
牽「なんでぼくを見てため息をつくんだよ!?」
 
 立ち上がろうとする真琴に肩を貸す福助は、少女の心の中に入ってこようとする。

福「でもそうしていると思い出すよ。僕も初陣のときは、ずっと帰りたいと思っていたんだ」
真「……別に、咲也サンのシゴキのほうが厳しかったですし」
 
 同意されると否定したくなってくるのはなぜだろう。福助は意外そうにこちらを見つめている。真琴は目を逸らした。ここでさらに反論するのはあまりにも子供っぽい。
 そこに晴海が声をかけてきた。
 
晴「あんまり休んでいる暇はないぜ。真琴、戦えなくなったら早く言ってくれよ。そうじゃなかったら、次に行くぞ」

 苛立ちが伝播してきたように、真琴も口を尖らせた。

真「なんですかあれ。感じ悪くないですか」

 福助につぶやく。聞こえたとしても構わない。
 晴海の口調にわずかな違和感を覚えたのは、福助の方だった。

福「……ああ、まあ……晴海さんには、色々と背負うものがあるんだよ。きみももう少し大人になればわかるよ」
真「そういう言い方きらいです」
 
 ムッとして言い返す。今度は我慢ができなかった。
 
真「子供だとか、若いとか、そんなの関係ないです。鬼を殺すのが、そんなに偉いんですか。上手に殺せる人なら、威張っていいんですか」
 
 牽はなにも言わずに「やれやれ」と首を振っていた。真琴は自分が甘えていることに気づいていた。こんなのは福助に対する八つ当たりだ。
 福助は晴海を見つめながら、答えた。

福「そうだよ。偉いんだ」
真「……えっ?」
 
 真琴は瞬きを繰り返す。福助はこちらを向く。
 その目は、まるでなにかを喪失してしまったようかのように、暗い。

福「いいかい、真琴さん。僕たちの寿命は短いんだよ。だから僕たちの生は“何を残すか”じゃない。“誰を殺すか”によってその価値が決まるんだ」
真「そんなの」
福「牽は違うことを言うだろう。晴海さんなら、もう少しまともなことを言うかもしれない。でも僕はそう思うんだ。朱点童子を倒せなければね、僕たちの命に意味なんてなくなっちゃうんだよ」
真「……それは」
 
 なにかを言おうとしたところで、牽が真琴の頭に手を置いた。そのまま、頭部を撫で回す。
 
牽「はっはっは、真琴。福助は難しいことばかり考えているからな。煙に巻かれるのもいつものことさ」
真「やっ、ちょっとやめてくださいよ、いくら父サンだからって女性の髪に着やすく触れないでください。っていうか父サンもですか。朱点童子を倒せなければ、生きることに意味がないって思うんですか?」
牽「ははは」
 
 牽は笑い声をあげた後、もったいぶってから告げた。

牽「それはな、大人になればわかるさ、真琴――」
 
 真琴は牽のスネを思い切り蹴飛ばした。
 
 


 

 荒神橋一族は、主人のいなくなった迷宮・奥の院にて、ひたすらに、ひたすらに、圧縮された時の中で悪羅大将を斬り続けた。
 あがき、もがく鬼を斬って捨てた。
 傷を無理矢理回復術で塞ぎ、一匹でも多く、一点でも戦勝点を多く、求め続けた。
 
 その集団とひとつになりながら、真琴は自分がどうしてこの行為に抵抗を覚えているのか気づいた。
 最終的に行き着く先がなんであろうと、今こうして鬼を殺している年長者の三人はまるで我欲の塊のようで、ひどく浅ましいものに見えてしまったのだ。 
 
真(生きたいか生きたくないかで言ったら、そりゃあ生きたいですけどね……)
 
 なにも疑うことなく、鬼の首をへし折る晴海。叩き斬ってゆく牽。血を撒き散らす福助。

真(正直、ドン引きですよ、これ。やばいですって。人の心持っているんですかね、あの人たち……)

 そこまでして、なりふり構わずに戦うことは真琴にはできなかった。
 もしかしたら、本当にそれこそが『大人になればわかる』ことなのかもしれない。今はどうしても認められなかったが。
 


 

 晴海と真琴。
 性格も生き様も正反対なふたりの少女に託された願いのひとつが、この二ヶ月で成就する。
 
 戦いを嫌う真琴は“連弾弓”を創作し、
 ――そして、一族の長たる晴海は<円子>を修得することはできなかった。
 

<雷電>の巻物を手に、一同は一ヶ月ぶりの屋敷へと帰還するのであった。
 
 
 
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by RuLushi | 2012-07-21 02:16 | 三代目当主・晴海