ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1018年4月後編
 
 
瑠「ねえさくちゃん! 一緒にお風呂はいろーよ!」
咲「……いや、なんでだよ」
瑠「いいじゃない、いいじゃない! 減るもんじゃないし!」
咲「……ああ、もう……」
 
 咲也は抗弁を諦めるように首を振る。
 瑠璃の言い分はずっと「いいじゃない!」だ。
「母子なんだから!」と。
 
 息を荒げる瑠璃の眼の色が、なにやらおかしい。

瑠「ふうふふふ、さくちゃんはイケメンだねえ……おかーさん、鼻高々だなあ……ふうふふふ……!」
咲「あ、あんまり、近づくな……っ」
 
 手をワキワキとしながら近づいてくる。
 アブない顔だ。

瑠「おーふーろー、おーふーろー」
 
 妖怪・風呂入ろ娘の手をすり抜けて、咲也は自室へと向かう。
 といっても、同室のため、後ろから瑠璃は付いてくるわけだが。

瑠「なーんでー、なんでだめなのー? さくちゃんはー、おかーさん嫌いー? 嫌いなのー?」
 
 不安げな様子もなく、むしろ楽しそうな表情で後ろから腕を絡めてくる瑠璃に、咲也は小さなため息。
 
咲「嫌いとか好きとか、そういうのはまだないから……会ったばっかりだろ……」
瑠「えっ」

 瑠璃はびっくりして言い返す。

瑠「でもあたしは全然初めて会ったなんて気はしないよ」
咲「それは……」
瑠「いいじゃない、これから一緒に暮らすんだからさ。できることなら、好きにもなってよ」
咲「……いきなり、そんなことを言われても」
 
 あっけらかんと笑う。彼女はまるで柳のようだった。
 それが『生きる』という覚悟を決めたものの強さだと、今の咲也にはまだわからなかったのだ。
 
 

 
 
<初めての出陣>
 

瑠「ふうふふふ、というわけで……ついに、戦いに出ようと思います!」
咲「あんまりだらだらしているからって、イツ花さんに困り顔されたんだろ……」
瑠「シッ、さくちゃん、シッ!」
 
 ふたりは戦衣装に着替え、荒神橋家の門前に立ち並んでいた。
 神々から送られた、黒-金の華美な出で立ちである。
 
 剣士と薙刀士のふたりは、道の真ん中で地図を広げる。
 
瑠「じゃあ、どこにいこっかねー」
咲「……当主にお任せします」
瑠「わーお、さくちゃんがいきなり素直になっちゃった。かわいいんですけどー! うちの子かわいいんですけどー!」
咲「外で叫ぶな……頼むから……」
 
 投げやりな態度も通用しない。咲也は顔を手で覆う。
 
 
 行く場所の候補は、九重楼、相翼院、鳥居千万宮の三箇所だ。
 最初はどれを選んでも変わらないだろう、というのが瑠璃の意見だった。

瑠「じゃあ、九重楼!」
咲「へいへい……」
 
 薙刀を肩に担ぎ、咲也は嬉しそうに拳を突き上げて進む瑠璃の後を、くたびれた様子で追いかけてゆくのだった。 
 
 



<九重楼>
 
 
 雑草の茂った荒れ野を過ぎれば、そこには巨大な塔があった。
 九重楼。今では鬼の棲家となっている楼閣だ。
 
 そこに続く道、四年坂を母子が駆け上がる。
 
瑠「はぁ、はぁ、ちょっと忙しい、ピクニックだね!」
咲「……その例えは、のんきすぎるだろ」

 額の汗を吹きながら爽やかに笑う瑠璃の背後、不穏な影が現れる。
 
咲「お、おい、後ろ……!」
瑠「ふぇ?」
 
 その名も、首切り大将。
 巨大な鋏を持ち、武士という武士の首を刈って回る低級の鬼である。
 だが、荒神橋一族にとっては、初めて会う怪異だ。
 
 わずか8ヶ月才の娘に、鬼は猛然と斬りかかる。
 咲也の見ている前、首切り大将は音を鳴らしながら鋏を大きく開き――
 
 
 瑠璃は流れるような動作で刀を抜き放った。
 振り上げ、下ろす。淀みのない袈裟斬りである。
 
 
 首切り大将を分断した瑠璃は、チンッ、と刀を鞘にしまう。
 それは一瞬の出来事。

咲「え……・?」

 咲也は呆けた声を出す。
 どこか信じられないような表情をしていたのは、瑠璃もまた同じだった。
 
瑠「……わーお」
 
 手の中の感触を思い出し、瑠璃は感嘆の声をあげた。
 生まれて初めての戦いのはずだったのに、身体が勝手に動いたのだ。まるで戦の味を知っているかのごとき振る舞いであった。
 それこそが神の言う『血に秘められた力』の一端なのだろう。


瑠「ねえねえ、さくちゃん今見てた!? なんか、あたしすごくなかった!? かっこ良くなかった!?」
 
 興奮した面持ちで抱きついてこようとしてくる瑠璃に、咲也はそっぽを向く。
 
咲「別に、大したことはないだろ……」
瑠「えー、さくちゃんのいけずぅ」
咲「俺にだってできる」
瑠「かわいくないけど、そんなところがすごいかわいい!」
咲「なんなんだ、あんたは……」
 
 鬼を倒すための修行を天界で積んできた咲也の冷淡な言葉に、しかし瑠璃は身をくねらせて喜ぶ。
 剣士と薙刀士という、互いの弱点をかばい合う職業であるはずなのに、話はまったく噛み合っていないふたりである。

 



 首切り大将の首を狩り続けることしばらく。
 血の臭いに酔った瑠璃が休憩を申し出た頃だった。
 
瑠「うー……具合悪いー……」
 
 木陰にうずくまり、彼女は額を抑えていた。
 傍らに立つ咲也は平気そうな顔をしていたが、彼の場合はただのやせ我慢である。
 ふたり揃って、初陣の熱気に当てられていたのだ。

瑠「さくちゃんも、気持ち悪くなったらすぐ言うんだよー……すぐに帰るからねー……」
咲「……俺はそんなにヤワじゃねえって」
 
 なにせ、四方八方から鬼が襲ってくる。
 しかもやつらは、皆が皆、殺意を剥き出しにしているのだ。
 まともな神経を持っているものならば、狂人にもなってしまいかねないこの状況で。
 だが、荒神橋一族のふたりは、たかが具合を悪くした程度である。
 
瑠「でもなんだか、だんだんと上手に斬れるようになってきた気がするよ……」
咲「……大根かなんかじゃねえんだから」
瑠「柔らかい部分とかね、刀がスッと入る部位とかが、あるんだろうねー……」
咲「……知っているよ」
 
 休んでは斬り、休んでは薙ぎ払う。
 それが一族の宿命であり、これから何十回、何百回と繰り返す奔走だ。
 

 しかし、果たして初めて戦場に出た武士が、思う存分に相手を斬伐することができるだろうか。
 敵が人ではないとしても、獣にも劣る鬼だとしても。
 息の根を止めるというのは、それほどまでに容易い行ないだろうか。
 

 ほらまたそこに。
 憧も憬もなく、死体にこびりついた臭いのように、生者を追って鬼が現れる。
 鬼ワラ、手目坊主、ドーマン僧、天邪鬼、それらを引き連れて首切り大将どもが涌く。
 
 列をなして連なる悪鬼を、瑠璃がその刀で一蹴する。
 その瞬間、瑠璃には「上手にできた」という喜色が浮かんでいる。

 大将を失った雑魚は、我先にと林の中に逃げ込んでゆく。
 追わず、瑠璃は血に濡れた刀を払う。

瑠「……はぁ、はぁ……」
 
 齢0年8ヶ月才。
 これが荒神橋家の初代当主である。
 
 



 

 いつの間にか彼らは、巨大な門の前に立っていた。
 七天門。牛でもこじ開けることが難しそうなその扉は、しかし触れただけでゆっくりと開いていった。
 
 瑠璃はゆっくりと指を、自分の胸元に引き寄せる。

瑠「なんか、嫌な予感がするよね?」
咲「……知らん」
 
 息子は同意に応じず、瑠璃は腕を組んでうなる。

瑠「どうにもこうにも……うーん、これは、あれだね。あたしの大事な大事なさくちゃんが傷物になったら大変だもんね……じゃあやっぱり、さっきの道に戻って、弱いものいじめをするしかないよね」
咲「……」
 
 咲也は門に寄りかかって、小さくため息。
 体力も防御力もほとんど変わらないというのに。
 それに年ですら――たったの、たったの4ヶ月差なのだ。
“母親”という名称にも、違和感しか覚えることができない。


 
 咲也が元来た道をたどろうとしたそのときだ。
 瑠璃は弾かれたように顔をあげた。


  
瑠「……って、え……?」
 
 なにかが頭の中に流れ込んでくる。
 それは光景だ。景色だ。色彩だ。彩光だ。
 七色の輝きが、花火のように目の奥で弾けては消える。
 
 それはすなわち――
 光臨だ。
 
瑠「……」
 
 瑠璃の眼の色が変わってゆくことに、咲也は気づいて眉をひそめた。
 一体どうしたことか。
 咲也の観察する前、瑠璃はゆっくりと門の中に足を踏み入れる。
 
咲「お、おい……行くのか?」
瑠「……」
 
 あの瑠璃がなにも言わずに闊歩することに、咲也は正体不明の不安を感じた。
 思わず、肩を掴む。

咲「な、なあ」
瑠「咲也」
 
 振り返る瑠璃。
 その顔には、ある種の気品。
 
瑠「討つよ、咲也」
咲「そいつぁ……?」

 瑠璃は薄く微笑む。

瑠「無論、鬼をだよ」





 甲高い笑い声をあげて、現れる。
 七天斎八起。達磨のような剛鬼だ。
 
 今まで同程度の体格の首切り大将だけを相手にしてきた咲也は、さすがにおののく。
 巨躯と呼ぶべきにふさわしいその大きさには、まるで樹木のような威圧感があったのだ。
 
咲「マズイんじゃねえのか、これ……」
 
 溺れる者は藁をも掴むように、咲也は薙刀を握り締める。

 だが、瑠璃。
 笑む。
 
瑠「札ふたつに、指輪で仕留めるよ」
 
 まるで咲也とは違うものを見つめていた。



 瑠璃が札を掴み、顔の横に掲げる。
 それは都の陰陽師が使用する、術の力を込めた符だ。誰でも扱うことのできるものではなかったが、荒神橋一族にはその素養があるようだ。
 
 噴き出た炎が鬼を襲う。62のダメージ。
 効果を撒き散らした符は、瑠璃の手の中で燃え尽きる。
 
 
 続く、鬼の手番。
 火炎を浴びた七天斎八起は、一族の長を狙ってきた。
 振り上げた拳が、瑠璃の身体を強打した。
 大槌のような一撃が、少女を破壊する。

咲「お、おい!」
 
 最大体力の半分を奪う攻撃だ。骨が砕けるような音がした。
 眼前の惨劇に、咲也が悲鳴をあげる。
 瑠璃は膝をつき、脇腹を抑えていた。ひしゃげた鎧の隙間から、ぽたぽたと紅い雫が溢れている。
 常磐ノ秘薬を使おうとする咲也を、瑠璃が制す。
 
瑠「符を」
咲「おまえ……!」
 
 今にも死ぬかもしれないような顔色をして。
 だが、只者ならぬ迫力を秘めた声だった。
 
 七天斎八起を前に震え上がる咲也は、瑠璃の命に従う。
 半ばヤケクソだ。

咲「もう……どうなっても、しらねえぞ!」
 
 効果を発揮したナマズの符は、鬼に雨あられのごとく岩を降らせる。
 これで彼女の言う、札ふたつ。
 
 だが、もし次に鬼が動いたら。
 それが瑠璃を狙ったら。
 今度こそ、息の根を止める一撃に成り得るだろう。
 
 
 
 瑠璃が動く。
 同時に、鬼も動いた。
 
 
 瑠璃が指輪を掲げる。
 七天斎八起が拳を振り上げる。
 
 
 瑠璃の背後から荒神橋の英霊が浮かび上がる。
 鬼の鉄拳は、今まさに少女を砕こうと――
 ――その拳打は瑠璃に当たる直前、見えない壁に阻まれる。

 衝撃が空気を歪ませ、その拳圧が瑠璃の前髪を揺らすものの、彼女は無傷。

 
 笑む。

瑠「今はあたしの番だよ」

 
 彼女の呼び出した荒神橋一族の父――源太の魂は、七天斎八起を滅多切りする。
 光が瞬き、鬼は地鳴りとともに地の底へと沈んでゆく。
 
 
 札ふたつに、指輪。
 それで鬼を仕留めた瑠璃を、咲也はあっけに取られた顔で眺めていた。
 
 血を流しながらも余威を見せる瑠璃の目が、薄く光っていることに咲也は気づく。
 
 ただの騒がしいだけの少女だと思っていたのに。
 かと思えば、あれほど容易く鬼を手玉に取る。
 一体この女は、何者なのか。
 

 振り返る瑠璃は、我が意を得たりの表情。
  

瑠「ね? どうってことは、なかったでしょう?」
 
 
 
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by RuLushi | 2011-11-26 03:56 | 初代当主・瑠璃