ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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1018年4月前編
 
 かつて父と母の住んでいたであろう広い屋敷に帰った瑠璃を待っていたのは、春の庭桜とひとりの女性だった。

イ「初めまして! 当主さま! きょうから身の回りのお世話をさせていただく“イツ花”です。よろしくお願いしまーす!!」
 
 とても元気の良い女性だった。

 あっ、こちらこそ、と瑠璃も頭を下げる。
 多分この人が、生まれて初めて顔を突き合わす人間の女性だ。そんなことを考えると、若干緊張してきた。

瑠「え、えーと、不束者ですが、よろしくお願いします!」
イ「あ、いえ、そんなこちらこそォ!」
瑠「そんなそんな、あたしのほうが年下ですし!」
イ「でもでも当主さまは当主さまですから!」
瑠「その“さま”付けとかなんか緊張するし!」
イ「でもでもでも、神様から言いつけられたのに『瑠璃ちゃ~ん♪』とか言ったら、わたしが神様に叱られちゃいますからァ! ひーん!」
瑠「う、うう、そっか、それは大変だ……それなら、ううん、しょ、しょうがないし!」

 互いに頭を下げ合うことしばらく。先に折れたのは瑠璃だった。
 
 イツ花は嬉しそうに、なにも考えていないような笑顔でにこぱっと笑う。

イ「というわけで、なんでもかんでもわたしに言いつけてくださいね! ご飯の用意から近所付き合いまで、お世話させていただきますね!」
瑠「わーお」

 なんて頼もしいんだ。
 瑠璃の尊敬するような視線に、イツ花はくすぐったさそうに首を竦めて笑う。

イ「エヘヘ……」

 まるで童女のような顔を見て、「かわいい人なのかもしれない」と瑠璃は少しだけホッとした。
 

 
 屋敷は好きなように使ってください、ということだったので、瑠璃はとりあえず自分の部屋を決めることにした。
 生前、両親が使っていた部屋の襖を開く。中は綺麗に整理整頓されていた。畳もまるで新品のようにピカピカだ。

瑠「イツ花さん、掃除がんばったんだなー」
 
 部屋を見回し、箪笥の引き出しを開けてみる。
 やはり中にはなにも入っていない。生活の残り香すらもなかった。

瑠「……掃除がんばったんだなー」
 
 ほんの少しだけ寂しく思えたのは、自分のワガママだろう、と瑠璃は思った。
 



 お風呂を上がってさっぱりとした浴衣姿の瑠璃が居間に入ると、座卓の上に桜餅があった。

瑠「わーお……これがウワサの甘味というものか……」

 手ぬぐいを引っ掛けたまま、瑠璃は慌てて駆け寄る。
 滑り込むように手を伸ばす。ふんわりとした感触。
 期待に胸をふくらませながらかじると、口の中いっぱいに芳醇な甘みが広がった。

瑠「こ、これは……」

 咀嚼する。鼻の奥から後頭部にかけて、桃色の衝撃が広がってゆく。
 こんなものがあるなんて、やっぱり生きることを選んで良かった。


 
 しばらく経って、やってきたイツ花が見たのは、口の周りをあんこだらけにした初代当主瑠璃の姿だった。

瑠「イツ花さん! こんなに素敵なものがあるなんて、あたし、あたし……生きてて良かったよ!」
イ「そ、それは良かったですねェ……」
 
 目を潤ませて両手に桜餅を掴み、夢中になって和菓子を頬張る瑠璃を見て、イツ花もまた「この人はかわいい人だなぁ……」と、ほっこりしていたという。
 
 

 
 翌朝、居間にて待つ瑠璃の元に、イツ花がやってくる。
 彼女は小さな男の子の手を引いていた。
 
 瑠璃は花見団子の串をかじりながら、首を傾げる。

瑠「イツ花さん、その子だーれ?」
 
 やや斜に構えたような顔をしているものの、素晴らしい美少年だった。
 瑠璃に似た夕焼けを紡いで束ねたような髪。切れ長の涼しげな目元に、やや焼けた肌が生意気そうな印象を人によっては与えるだろうが、それでも全体的な造形美が優っているため、若武者のようだった。
 
 イツ花は筆で描いたように、にっこりと笑う。

イ「もちろん、当主さまのお子様ですよォ!」
瑠「……」

 瑠璃は大きな目をぱちくり。

瑠「あたしの、子供?」
イ「はぁい!」
 
 イツ花が少年の背を押す。
 なまじ面影があるだけあって、並んで立つと姉弟か従兄弟のようである。
 
○「……よろしく」
 
 ぶっきらぼうにそう言う少年。
 次の瞬間、瑠璃は悲鳴をあげた。


瑠「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 ビクッ、と少年が身体を震わせる。
 正面から渾身の声量を叩きつけられて、彼は目を白黒とさせていた。

 一方瑠璃は、目に星を浮かべて少年に駆け寄る。
 
瑠「なにこれかわいい! かわいいんだけど! かわいいんだけどー!」
○「ちょ、ま、」
瑠「これあたしの!? ねえ、これあたしの!? あたしのもの!?」
○「ち、ちがう、し、」
 
 幼子をぎゅうぎゅうに抱きしめて頬ずりをする。
 そんな瑠璃はなんと、目の端から涙をこぼしていた。

瑠「お母さんだよ! これからよろしくね、よろしくね、よろしくねー!」
○「ぐ、ぐぅ」
 
 少年の顔色が土気色に染まってきても、瑠璃は抱擁を止めようとしなかった。
 自分が選んだ道を、幸せを、決して離さないように。
 

 
 少年に与えられた名は、咲也(さくや)。
 荒神橋咲也。薙刀士である。



 
 荒神橋瑠璃 8ヶ月才
 荒神橋咲也 4ヶ月才

 これから彼女と彼がどのような道を歩んでいくのか。
 艱難辛苦の往路か、あるいは慚愧に満ちた血塗られた旅か。

 願わくば、ひとりの死者も現れぬ幸運な旅であってほしいが、それは永久に叶わぬ夢幻なのだ。
 荒神橋一族は死ぬ。わずか二年も経たず死ぬ。それが朱点童子の呪いだ。
 


 
 だから今だけは――

瑠「よろしくねーーーーー、さくちゃぁーーーーーーんっ!!」
咲「……あがが……」



 
 瑠璃と咲也の戦いは、荒神橋一族の歴史は、
 
 ここから、始まる。
 
  
  
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by RuLushi | 2011-11-25 00:43 | 初代当主・瑠璃