ルル師のRPプレイ日記=俺の屍を越えてゆけ編(PSP版)=
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近代ゲームの語り部です。 PSソフト"俺屍"ブログ、リセット禁止でやってました。11/11/24より、PSP版俺屍プレイ日記始めました。今度は5年もかからなければいいな、と思います。
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終幕1(1026年 8月第10編)

 ついに戦いは終幕へと至る
 七年に及ぶ悲願が今ここに果たされるのであろうか
 それはまだわからない
 一族がこれまでに積み重ねてきた軌跡
 それにより、神と人と鬼を巡る物語は、新たな結末を産むのだから
  
 これより先は、壬生川一族の選び取った戦記
 すなわち、掴み取った結末である






<戦いの終わり>


 蕩然としていた広間に、灰が舞い散るように、朱点童子・黄川人の残骸が光を放ちながら消えてゆく
 それに伴って、朱点童子の霊力で動かされていたであろう八ツ髪もまた、地の底に沈んでゆくのだった
 それらの光景は、今までの鬼と化した神々たちと、同じ馴れの果てである
 着衣までも消滅してしまうと、胎の間から完全に朱点童子の気配が消え去ったことを、虚空は間違いなく嗅ぎ取る
 この世の悪が滅び絶えてしまったかのように、辺りへと静寂の帳が降りた
 
 今になって、じわりと汗が背筋を伝い落ちた

虚「(終わった、のか?」
 腰から力が抜けて、ようやく虚空はゆっくりと構えを解いた
左「……疲れたぜ……」
 左京が深いため息をつき、それがまるで一同の気持ちを表現しているようだった
 美月などは感動の面持ちで歓声をあげるのかと思いきや、彼女までも夢心地にいるかのような顔で、自分の肩をさすっていた
美「……あ、なんだか、すごかったね、烈くん……」
烈「ああ、うん」
 烈は己の刀が引き起こした天変地異のような一撃を思い起こす
 皆に支えられての奥義だ、あれほどの威力はこれからの人生で二度と出せないであろうと感じられた
 しかし、とにかくひとつだけわかっていることがある
烈「でも、良かった」
 烈は傷だらけの面々を眺める
 左京は術力が枯れて、まるでひなびた大根のような顔をしてその場にしゃがみ込んでいた
 美月は両腕をかばい、それらはまだ満足に動かないようで、時折苦しそうな顔を見せているようだった
 そして虚空もまた、朱点童子の剣を受け止めた奥義によって、常人ならざる精神力により平然を装ってはいるものの、健康度を著しく低下を招いていた
 それでも、良かった
烈「みんな、無事で」
 烈の素朴な一言に、美月もまた笑みを返す
美「……うんっ」
 その笑顔で、ようやく四人の間に流れる雰囲気が、緩和したような気がした

虚「そうか……終わったのじゃな……」
 虚空もまた、目の前の光景を実感することができるようになった
 壬生川一族の悲願が、今ここに果たされたのだと
 初代当主から続く、7年に及ぶ戦いが、終わったのだ
 胸に思わず熱い想いがこみ上げてくる
 指にはまった当主の指輪すら、熱を持っているようだった
虚「当主になるのだと決意し、地上に降りて以来、不断の覚悟で励んできた結果が、ようやく実を結んだというべきか……」
左「……それって、まるで父さんが大層な人みたいな言い草だけどさ……」
 左京の白眼に、烈が口を出す
烈「虚空さんは立派な人だよ」
左「おい……どうしたんだよ、烈、父さんの昔を描いた武録を、お前も見ただろ……」
虚「おかしなことを言うんじゃな、左京よ、俺にやましいことは何一つないぞ」
左「本人はそう思わなくても……」
 口内で言葉を濁す左京を横目に、虚空は表情を柔らかく崩す
虚「しかし、これで一人きりの帰路に付かず済む」
 そんな風に言い合う男たちを、美月が幸せそうに見つめていた

 
 やがて、胎の間に光が満ちる
 そう――
 囚われていた神の、解放である
 
 
 朱点童子に磔にされていた女神が、解放されるのだ
 彼女の手枷、足枷が外されると、女神は壬生川一族の前に跪くようにして、倒れた

 長い黒髪を持つ妙齢の女性は、烈に肩を貸してもらい、立ち上がる
 「ありがとう……やっと終わったんだね……」

 彼女の声は、岩に染み入るかのようなほどに、濡れていた 

 「朱点からふたつの呪いの話を聞かされてからは、毎日が地獄だった……朱点を倒すためにあの子を生んだこと、何度後悔したか、できるなら、代わってやりたかったよ……でもあたしたちは死ねないから……それにいつかこんな日が来るって、心のどこかで期待してた……」

 壬生川の一族は、そんな女神の述懐を、四者四様の表情で聞いていた

 「ああ……信じてよかった! よーく顔を見せとくれ!」

 雨の上がった空のような顔で微笑む女神は、なにかに気づいてハッと息を呑んだ

 「あッ………………そっか……そうだよね……」

 烈や美月が問いかけるが、女神は「ううん」と首を振る

 「あたしのあの子は、もうこの世にはいないんだね……あたしったらバカだね、頭ではわかってたつもりなのに……そっか……そうだよね、だから代わりにおまえたちが、ここにいるんだもんね」

 この女神こそが、初代壬生川当主――
 壬生川玄輝の母、お輪である
 
 太照天昼子の命を仕り、地上に下り、侍の男、源太と一児を設けた
 その後、鬼朱点に囚われ、息子には短命と種絶の呪いを、
 そして自身には永遠の闇と、鬼を産み出し続ける宿命を与えられた女神なのだ
 
お輪「そうだよね…………でもおかげで…………自分の血を分けた子孫の、こんなに立派な姿を見ることができた! いつか、うちのヒトやあの子に、あの世で会ったとき、胸を張って報告できる!」

 女神の顔が再び華やぐ
 そうして彼女は、ひとりひとりの壬生川の子たちの頭を撫でて、抱きしめてゆく
 母のぬくもりに包まれる彼らを、お輪は柔らかな声でねぎらった

お輪「本当にありがと……きょうまで、よく頑張ったね」










 フハハハ



 アハハハハ
 


 フハハハハッハハハ



 魂が凍りつかされる、そんな信じられぬ声だった
 弛緩していた筋肉が、岩と変わったかのように動かなくなる

  「いいねェ、生き別れた母親とその子孫の感動のご対面! あぁ……泣かせるねェ……ちょっとくさかったけど、幕間の寸劇としては悪くなかったよ

虚「ばかな」

 間違いなく、朱点童子・黄川人の気配はなかったはずだ
 一体どんな芸当か
 よもや、本物ではあるまい
 そう、思いたかった
 だが無理であった
 もう壬生川は災いから目を逸らすことができない

 例え、悪夢のような現実だとしても
 

朱点「さーてと、役者も揃ったところで……第二幕の始まり、始まりィ!






 災禍の皇子は嘲う







 こっちだよ!








 こーっちだよォ!








<転>


 そのとき、お輪の腹の中になにかが滑り込んだ
 それが一体何であるか、気づいたものはいなかった
 後ろに倒れた女神の胎が膨らむ、その瞬間まで――


お輪「あッ……」


 目を背けたくなるような光景とともに、お輪の面持ちが強張ってゆき、
 破裂するかのように、彼女の表情が崩れた


お輪「ギャあああああ……!!」

 
 身重の女神は絶叫と共に、しばらく指先まで痺れたかのように痙攣していたが、それも終わると、今度は不敵な笑みを見せたではないか

  「へへへへ……ここは、暖っかくていいや

 その声には、この世のものとは思えぬ血なまぐささが滲んでいた
 お輪は――いや、もはやお輪と呼んで良いのかすらもわからない
 女神の顔をしたものは、細くて白い指先で、自身の腹を愛おしそうに撫で回す
 そうして面をあげて、こちらを睨んでくる

朱点「さあ、どうだ!?

 朱点童子はあがく
 生き残るために、ではないだろう
 ひとりでも多く、一族を道連れにするために、だ
 
朱点「ボクを殺せば、この女も一緒にお陀仏だわよン

 壬生川たちは包囲の輪を広げざるをえない
 目の前のものがなんであるのか、まだそれを一同が完全に理解しえていないのだ
 いや、認めたくはないと言ったほうが正しいのかもしれない

朱点「あーら、どーしたの? かかってこないのかしら? じゃ、こっちは勝手に、戦闘準備をさせてもらうゼ、ハハハ……

 しまった、と思った者もいた
 ここで攻撃を仕掛ければ良かったというのに
 彼らは目の前の光景に目を奪われ、千載一遇の好機を逃してしまう

 お輪の身体はみるみるうちに変身してゆく
 柔らかな肌を突き破り、鋼鉄のような皮が全身を覆った
 白魚の指は龍の爪と化し、その体躯は数倍に肥大した
 まるで産卵を待つ女王蟻のような怪物が、そこに誕生した
 
 奇怪な化け物のその胸の中心に、お輪の首から上だけが生えているのだ
 苦悶に耐えるような表情で、女神は固く唇を結んでいた

朱点「弱点は、ここだわよ、さッ、遠慮なくグチャグチャにして~ン
 どこから声を出しているのか、わからなかった
 朱点童子の三本指が、生えたお輪の顎を撫でる
 お輪は目を見開いて叫ぶ
お輪「斬れッ! この鬼を殺してッ!!」
 その瞬間、まるでお輪を後ろから抱くような位置に、朱点童子の首が生える
 皇子のひどく安らいだ表情は、今こそが至福のときだと物語っているようであった
朱点「そんなひどいコト言うなよ、母さん……ふたりで力を、合わせてさあ! こいつらを、ぶち殺してさあ……!
 お輪の頬に顔を寄せて、朱点童子は愛を囁くように艶やかに目を閉じる
朱点「その後でまた、優しく抱いてくれよ、母さん……ボクのこと、愛してるって、言ってくれよォ……
お輪「は、早く!! 迷うな!! ヤれッ!!」
朱点「みんなで、地獄に堕ちようよ! ねッ、母さん……
 朱点童子は高々と跳ぶ
 みんなとは、一体誰を指すのか
 神か、人か、壬生川か、それとも、己か――

 否、
 その、全てだろう
 
 朱点童子・黄川人は、新たなる異名を持った




 阿朱羅―― 
 阿朱羅の眼が、一族を貫いた






<第二戦>
 
 
 一族は再び武器を構える
 だが、彼らは満身創痍だ
 虚空も烈も美月も、奥義による反動で満足に立ち回ることなどできそうになかった
 左京もまた、技力の枯渇が見えている

 対する変身後の朱点童子――阿朱羅は、動きこそ鈍重だが、その邪悪な気配はまったく衰えていない
 烈の両断殺は、阿朱羅の縁や怨念を断ち切ることはできなかった
 あれだけの技を放っても倒すことが不可能だったという事実が、壬生川の肩に重くのしかかる

 虚空ら四人はそれでも、阿朱羅を倒すより他ない
 お輪を犠牲にしてでも、だ

 そして、そんな壬生川一族にお輪も運命を賭けた
 
 





 お輪は、自らの命を託した!
 全員の体力技力を全回復!!

 しかし阿朱羅がそれを阻む!
 狂った光が、託した命を掻き消した!!







阿朱「君たちに教えてあげる、これが最期の言葉だ
 阿朱羅は傷ついた壬生川の面々に、下腹部の目を開く
阿朱「短命と、種絶の呪いについて――
 阿朱羅は語る
 
 
 
阿朱「最期に言おう……ボクを倒せば、呪いは解ける――と、君たちは思っていたのだろう! だが、それは間違いだ!
 阿朱羅が跳躍し、壬生川一族の陣形の中心に降り立つ
阿朱「ボクを倒し、そして、君たちの当主の命を生贄として捧げることにより、悲願は成就されるのだ! 神の連中がそれを黙っていたことは、ボクにとって好都合だった、なぜなら――!
 
 阿朱羅が右手で烈を、左手で左京を掴む
 虚空は槍を構え、気合を放つ

虚「貴様――」
 一族を高々と掲げ、阿朱羅は早口にまくし立てる
阿朱「なぜならば、それこそが君たちの気概を仕留めるのに足る呪いの言葉であったからサ
虚「ばかめが」
 虚空は呼気と共に、槍を前に突き出し、阿朱羅の足に刺す
虚「それしきのことで心を揺らがすものが、一族にいるはずがないであろう、元よりこの命、壬生川の御家のためには惜しくはない」
 思った通り、阿朱羅の動きは鈍い
 これならば、お輪の加護が失われ、さらに手傷を負った一族でも仕留めるのは不可能ではない――
 そう、虚空は思っていた
 しかし、烈や左京はただ苦しそうに呻き声を発し、必死にもがいているばかり
 あまつさえ美月など、弓を構えることをやめ、阿朱羅と虚空を交互に見比べているのだった
虚「どうしたのじゃ」
 阿朱羅は腕を振り回し、握ったふたりの少年たちを地面に叩きつけた
烈「ぐあっ」
左「く……」
 彼らは広間を転がり、止まったその後に、腕の力で状態を起こしてつぶやく
烈「だってさ……そんな、そんなのって……」
 烈はどうしようもなさそうな顔で刀を握り締めながら、もう一方の指で地面の砂を掴む
烈「アイツを倒したら、虚空さんが、死んじゃうってことでしょう……そんな……」
 まるで呪いで縛られたかのような形相である
虚「馬鹿者が、あやつの妄言に惑わされるな!」
 その叱咤も、烈たちにはさほど効果を持たなかった
左「父さんは……それでいいかもしれないけど……俺たちの気持ちは……」
虚「左京!」
 その間にも阿朱羅の暴虐は続く
阿朱「アハハハハ!
 阿朱羅は地面からいくつもの岩石を呼び出し、それらを次々と天に浮かべ、壬生川へと降り注がせた
 土の術法<魔王陣>をまともに浴びた面々は這いつくばったまま血を吐く
虚「なぜそうなるのじゃ……」
 片膝を突いた虚空は、やはり腕から血を流す美月に問いただす
虚「美月……おぬしは、このような争いを、終わらせるのではなかったのか!」
美「そうだけど!」
 美月が金切り声をあげる
美「でも、パパがいなくなるのは、イヤだよ!」
虚「甘いことを言うでない!」
 阿朱羅は再び呪を唱えていた
 大地を突き破って現れた水流はやがて大津波となり、術とは思えぬ迫力をかもし出す
 水の術法<真名姫>が四人を襲い、全身の骨をバラバラに砕こうと荒れ狂う
 痛みや、息苦しさ、高ぶった感情などが、壬生川一族の判断力を奪う
虚「ここで朱点童子を討ち取らねば、同じことの繰り返しではないか!」
 虚空は、目の端に涙を浮かべる美月の聖霊の衣の衿を強く掴み、引き寄せた
虚「一族の悲願を晴らすときは今じゃ! 私事に気を取られてどうする! 戦え、美月! 戦ってやつを打ち倒し、生き延びろ!」
美「パパの命と引き換えなんて、美月はイヤだよ!」
虚「美月!」
 薙刀を持ってはいるものの、攻撃する意思など残っていない左京が、立ち上がりながらつぶやく
左「でも……嘘かもしれないよな……アイツの言ったことが真実だって確証がどこに……」
 視点が揺らぐ、阿朱羅が笑う
阿朱「ボクは呪いをかけてやった本人だぜ? ボクより神連中を信じるってほどおめでたい頭を持っているンなら、どうぞやってくれよ!
 おおっぴらに胸を突き出す阿朱羅から、左京は見えない力を感じたように気圧される
 阿朱羅の発言を受けた左京は、できるのなら本当に虚空が犠牲になるとしても、阿朱羅の首を獲る、そのことで烈や美月に恨まれるとしても、構いやしない、そう考えていた
 だが、どうしてなのか――
 いざとなって、身体が動かないのは
 そうとしているうちに、阿朱羅は指に炎を点す
阿朱「きっと後悔するよ
 小さな火はやがて巨大な炎となり、ついには不死鳥へと化けて一同に迫る
 火の術法<凰招来>は力強く羽ばたくと、火炎の羽を撒き散らしながら、壬生川の身体を焼き焦がす
 阿朱羅が今までに使うことのなかったその強力な術の連打に、誰もが真っ赤な顔をして、辛そうに喘いでいた
 その中でも、奥義を放ったばかりの烈と、体力の上限の低い左京の傷は深い
虚「ならば、俺ひとりでも」
 虚空の槍が阿朱羅の爪と激突し、火花を散らす
 だが虚空といえど、たったひとりで阿朱羅に敵うはずがない
 それでも己の運命を知り、自らが死ぬとわかりながら槍を振るう父親の姿を、美月は滲む視界の中に納めていた
 ああ、どうして涙が出てくるのか、美月にはその理由がわからない
 もっと他に、なにか方法はなかったのか
 両手両膝をついてうずくまる美月はやがて、天に祈り出す
 空の見えない地獄の底で、今も呪を唱え続けているふたりの神に問う
美「教えて、昼子おばちゃん! 本当に、もう手段はないの!?」
 泣きながら叫ぶ
美「みんながみんな助かって、無事に帰れる方法はないの! 美月たち、そのためにがんばってきたんだよ! なのに、なのにさ――」
 美月をかばおうと走った烈が志半ばで倒れ、すぐに左京がその後を追った
美「おにいちゃん、烈くん……」
 虚空が死闘を繰り広げ、美月はその光景をただ眺めることしかできない
 もう、敵わない
 阿朱羅が腕を振るい、虚空に新たな傷を刻むたびに、お輪が自分もまた斬られているような顔で辛そうに目を瞑っていた
 これが、阿朱羅の望みなのか
美「どうして……」
 こんなことを、望んでいるのか
美「教えて……昼子おばちゃん……」
 みんなで、地獄に堕ちようよ――
 阿朱羅の声が耳に強く残って離れない
 やはり、もう、答えはひとつなのか
 美月は力の入らない腕で、背負った弓を構え、精一杯引き絞る
美「阿朱羅を、討つしか……ないのなら……」
 番えた矢を放つその瞬間に見えたのは、巨大な眼と、その不気味な瞳から放たれる魑魅魍魎を内包した光であった
 真っ向から浴びてしまっていたのだ

 そうして――
 美月の意識も潰える

虚「美月!」
 
 もはや半死半生の体となった虚空の叫び声が、虚しく響く
 
 
 






 
 
 

 なぜ、昼子は答えなかったのか
 一体、地獄巡りの入り口で、なにが起きていたのか



  
 茨城大将が取り囲むその中心
 真っ赤に塗りつぶされた光景がある

 高々と無数の槍に突き刺された太照天昼子の屍が掲げられている
 その脇に、太照天夕子の骸が打ち捨てられていた
 
 もはや門番の失せた地獄からは、雲霞のごとく鬼が涌き出ている
 葉月の終わりが近づき、以蔵は昼子と夕子の前で、力尽きたようにうずくまっていた
 


 
 地獄の蓋が開いたそのとき、密かに阿朱羅の手により、迷宮の鬼たちが解き放たれたことを虚空や以蔵は知らない
 その中には、番人としての役目を与えられた、元天界の神々も含まれていたのだ
 七迷宮の化け物たちは、一斉に進軍を始めた

 もはや神や人に対抗するだけの戦力は残っていない 
 京都炎上の報が届く時もまた、近づいていたのだ
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by RuLushi | 2009-09-09 06:43